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【卒研】研究室選びに必要なこと【前編:ブラックかホワイトか】

 初めまして。そうでない方はこんにちは。
 なごーやんと申します。
 大学で卒業研究に勤しんでいる、情報系大学生です。

 私が何故こんな記事を書いているかと言いますと、私が研究室選びに大失敗し、いろんな場所に泣きつき研究室を変えてもらったからです。
 後輩にはそんな辛い思いをしてもらいたくない、その一心で筆を執らせていただいております。

※なお、本記事に書かれていることは、弊大学の弊学科における特徴を元にした筆者の主観が中心となっています。


0.本稿の構成

 さて、卒業研究を目前に控えた、現大学3年生の皆さん。本記事は長くなることを想定し、2つの記事に分けています。
 構成としては、
  ・前編……みんな大嫌い、ブラック研究室編(本頁)
  ・後編……どうしたらいいの?自分に合う研究室選び編(リンク)
でお送りしたいと思います。

 本頁では、前編「ブラック研究室編」についてお送りしたいと思います。

1.はじめに

 まず、皆さんは、ブラックな研究室ホワイトな研究室、どちらに入りたいですか?
 前者!という人はまずいないでしょう。「先生!!僕をビシバシ指導してください!もっと貶してください!ブヒー!」というマゾくらいでしょう。

 え、入りたい研究室がブラック?自分のやりたいことがブラック研究室じゃないとできない?

「「「「「「「「「甘えたこと言ってんじゃねーよ!!!」」」」」」」

 実は筆者もそうでした。周囲が「やめておけ」「先輩があそこはヤバいって……」と止めている中、「俺はこの研究室でしかできないあの研究をやって、堂々と論文を書いて卒業するんだ!」などと熱い野望()を抱いて、ブラックと名高い研究室に入りました。
 するとどうでしょう。週に20分しかない発表時間で自分の研究に対するコメントまでを言ってもらわねばならず、ゼミを「先生が決めたルール通り的確にできない」(実際は資料の提出が遅れただけ)学生との相談は「無駄」と称し相談に乗らない。全員の前で大声での叱責は当たり前、ゼミ欠席などの連絡が遅いと「遅い」と言うくせに自分の場合は全く悪びれなく面談の予定を突然組み込む……

 まあ、クソでした。
 結果私は適応障害と診断されるまでに精神を病んでしまったので、心療内科や学生支援センターの力を借り、なんとか学科長を説得して研究室を変えてもらいました。
 今はウルトラスーパーピュアホワイトなところにいます。先生もそんな私を気遣ってか、簡単な研究をやるよう勧めてくださいました。
 ホワイト研究室、めっちゃ快適です。ゆっくり休むことができるので、精神状態も次第によくなってきました。

 興味ある分野がブラック研究室にしかなかったそこのあなた。「ブラック研究室」に入ってはならない理由が、少しでもわかりましたでしょうか。
 興味あるからといって、ブラックな研究室に足を踏み入れるのは絶対ダメです!!!

 以上、「ブラック研究室で地獄を見た私」の遺言です。
 入ろうとしている研究室がブラックだという皆様、もう一度よくお考え下さい。

 ええ、それでも行ってみないとわからないじゃん……と思う方は次の「2.」を読んでください。それ以外の方は「3.」からお読みください。

2.ブラック研究室に入るとどうなるの?

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 前章を聞いて「は?研究ってこんなもんじゃね?」と思われた貴方。
 貴方がもし、研究をなさっている方でしたら、申し訳ありません。
 ですが、もし研究をしたことがないのであれば、この話を最後までお読みください。

 以下、私の体験談になります。



 研究室に入る前、面談を必ず行うルールがありました。(ルールというよりマナーでしょうか)
 当時、私はメンタルケアの分野を取り扱っているらしい研究室に興味があり、面談を申し込みました。
 そして面談のとき、私は自身が発達系の障害を抱えていることを、支援センターで頂いた配慮依頼文書と共に見せました。すると、

「そんなことは知っています。で、それは自助努力で何とかできないものなんですか?」

 当時、私は「まあこういう偏見を持つ人だっているよな」とだけ軽く考えておりました。この時点でやめておくべきでした。本当に後悔しています。
 今になって考えてみれば、この発言そのものが、障害を持つ私のために配慮してくださる支援センター、また私と同じ障害を持つ方への侮辱ではないかと考えてしまいます。障害を「そんなこと」、また折角配慮をお願いするために、支援センターの方々が考えてくださった配慮内容を「自助努力で何とかできるもの」としてみなしていたこと自体が、メンタルケアの分野を取り扱う先生としてはあり得ない発言です。

 また、私は、研究というものにそれまで触れたことがありませんでした。自由研究やその類の所謂「課題」のようなものでなく、本格的な研究です。そのため、研究に対して、いくらか不安がありました。
 先生は、最初のミーティングでルール表を渡してきました。ゼミではこのようにスライドを作りなさい、研究の心構えはこうです、などです。すべて文章で、具体例もありませんでした。これではちょっと情報不足だ、とは思いましたが、当時はそれでも「まあ最初やしええやろ」我慢してしまいました。


 やがて、ゼミが始まりました。ゼミは進捗報告形式、毎週授業2時限分だけで、全員発表必須でした。そのため1グループ(グループによっては1人)当たりに割かれる時間(グループの進捗報告から先生や院生のコメントまで)が週20分と大変ごくわずかでした。
 これでは、研究を円滑に進めることはできません。院の先輩がどうやら個人面談の機会をもらっているようでしたので、こちらからも連絡をとり面談の機会を頂こうと考えていました。
 しかし、返信はこうでした。

「ゼミの時間に言えばいいじゃないですか。それを含めて、スライド纏めて発表してください」

 一言だけの返信に、私は憤りを覚えました。なんで院の先輩には面談をするのに、我々は「ゼミですませ」で終わらせようとするのか、と。
 他の卒研生も、テーマを詳細に決めるためにまた先生に面談を頼んでいました。このときも、

「ゼミの時間に言ってください」

の1点張り。その学生は、院生1人卒研生2人のみで構成されるグループに所属していました。しかし、院生のみの主導で研究を行うのはまず、(相当慣れていなければ)学生である以上難しいと考えられます。またそれが卒研生の詳細なテーマ決めとなれば、どう考えても先生のコメントが不可欠です。しかし、先生は必要性のある面談にも関わらず、自分たちで解決させなさい、と突っぱねるのです。
 それでも、個人で研究を行う院生や、院生のみのグループには面談を行います。これって、学年で対応を差別しているため、アカハラ(アカデミックハラスメント)では?とうすうす、感じるようになりました。

 そして、上記のグループが面談を申し込んで断られた次のゼミ。冒頭で、先生が口を開きました。

ゼミでやったことを、個人面談で改めて決めるのは2度手間3度手間です。このような個人面談は受け付けません。

 私は耳を疑いました。なぜなら、ゼミでやっているのは進捗報告のみで、研究テーマを決める議論など微塵も行っていないから。20分しかない相談時間で、研究テーマどうしたらいいなんて話ができるわけないから。
 ゼミ中、過去の研究室Slack履歴を覗いてみると、卒業研究テーマを8月になっても決められていない、留年している先輩を責めている先生の発言がありました。ああ、明日は我が身だ。と。

 加えて、私は、シャーペンが落ちた音ですら肩が跳ね上がってしまうくらいの聴覚過敏がありました。そのため、先生がいつも張り上げるような声で指導をなさるのを聞いて、誰も彼もが叱責を受けているような感覚がありました。
 当時私は、自助努力でなんとか、と言われていたため、誰にも相談できず1人で我慢していました。しかし、いざ自分が指導を受けると、先生の声に恐怖を覚え、どうしても内容が頭に入ってきません。先輩が取ってくれた議事録を見ても、内容を理解するよりも先に先生の発言を思い出し、激しい動悸と息切れに襲われ、研究を進めることができなくなってしまいました

 研究ができなくなっては、卒業ができません。徹底的にネット上を調べ上げ、友人の協力(サーベイ)も得ながら、脱出することに決めました。学校に併設されている精神科では絶句され、別の相談室では同情され、支援センターでは「決めるのは貴方」と背中を押されました。様々な場所に働きかけ、どうにかこうにか脱出することができました。(これについては、いつかまた別記事で纏めたいと思います。)

 皆さん、これを読んでどう感じたでしょう?
 「暴言吐かれてないからいいじゃん」「うちは雑用一杯させられる」「所詮は感じ取り方の問題でしょ」という学生さんも多いことでしょう。しかし、学生の教育に興味のない先生、それも研究生として未熟な学生を蔑ろにする先生が指導教官であることもまた、おすわりすらできないのに「立て」とぶたれているような理不尽さがあり、とても研究ができる環境ではありませんでした。

 此処に書いてあることは全て事実(発言などは一部改変)とはいえ私の主観が混ざっているので何とも言えませんが、少なくとも私の1つ前の卒研生全員が卒業論文を出さなかった以上、元いた研究室が「普通でない」ことは確かです。(気になる人はTwitterなどでDM飛ばしてくださるとうれしいです。)

 ちなみに、その後移ったスーパーピュアホワイト研究室では、

・先生が障害特性を理解し、なるべく具体的な指示や柔らかな口調での指導を心掛けてくれる
・ゼミも1週間に2時限×2、一回のゼミで発表する人は2人程度と決められているため、発表もゆっくりできるし、コメントもたくさんもらえる
・先生の方から「わからないことはない?」と積極的に声掛けをしてくれる
・質問しても嫌な顔一つせず、わかるまで教えてくれる
・研究生が、ときおり雑談をしながら、楽しく研究をしている
・先生が「決められた時間だけ研究し決まった時間に帰る、休日祝日は学校に来ない」ということを徹底しているためか、まとまった休みをとるのにまったく抵抗がなくなった(以前はプレッシャーがあり「やらなきゃ、やらなきゃ」と焦ってしまい、休むことができなくなっていた)

という具合で、楽しく研究を行うことができています。

 ブラック研究室に行くと、ただ忙しくなるだけではなく、精神も侵されていき、しまいには研究ができなくなり留年、ということになりかねません。実際私も、心療内科に通院する羽目になりました。そういうわけで、ブラック研究室に自ら進むことは、百害あって一利なし、です。
 では、紹介したようなブラック研究室は、どのように見分けたらよいでしょう?ブラック研究室の「外見からでもわかる、よくある特徴」を並べていきます。


3.ブラック研究室の特徴……説明会や資料から読み解く

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 この辺は「ブラック研究室 見分け方」でググればまあよく出てきます。

 よく言われる特徴は以下。

・先輩たちが「あそこはヤバい」と噂している
・業績が有名な論文誌ばかり(ただ研究員全員が力のある所ならよいが、先生が見栄を張りたいだけの場合、よい結果が出るまで卒業させてくれないかも?)
・夜遅くまで灯りがついている(意識高い学生がいるならまだしも、先生がそうさせている可能性も……)
・鬱など精神疾患患者がいる
・留年者が毎年出ているor留年者の割合が高い
・行方不明者がいる
・就職実績が悪い(就活をさせてもらえないかも?)

(参考サイト様 : http://postdoc-tensyoku.link/kenkyu-013 、 https://www.recomtank.com/entry/lab-selection 等)

 私が前にいた研究室は、

・先輩たちが「あそこはヤバい」と噂している
・業績が有名な論文誌のみ(博士後期の先輩が「この論文誌ではなくあの論文誌に投稿することを目指しなさい」と叱られていたことから)
・精神疾患患者がいる(私。「いる」というより「出た」)
・留年者が毎年出ている
・行方不明者がいる(私が入ったとき、本当にいました。)

といった具合でした。まあ、ここまではテンプレの極みです。(ですが、興味だけで研究室を選び、まったく情報収集していなかった私は酷い目に遭うことに……)

 また、前述した以外にも、

・全然提携していない先生と合同説明会を開いている

ということが実際ありました。
 例えば、研究分野が似た研究室だから、という理由で、合同ゼミを行っている研究室同士が合同で研究説明会を行うことがあります。TwitterなどSNSでの情報分析を行う研究室Aが、情報分析のための技術を研究する研究室Bと合同ゼミを定期的に行う、といった具合です。

 初めに所属していた研究室もまた、CGを作る研究室Cと、ロボットを作る研究室Dと合同説明会を開いていました。しかし、蓋を開けてみれば、実際連携して合同ゼミを行っているのは研究室Cと研究室Dだけでした。当初の研究室は、まったく研究室として提携していないのです。

 のちに聞いた話では、研究室Dの先輩が他の学生に、「どうしてうちと合同で研究室説明会を開いているのかわからない」とこぼしていたというのです。そりゃあそうでしょう、全然提携していない先生がひょっこり現れ、説明会で説明をして帰っていったのですから。
 ……恐らく、単独で説明会を開くと誰も来ないから、でしょうけど。

 というわけで、「連携していない研究室との合同説明会をしている先生」には要注意です。 マジで。
 中には先生同士が仲がよくて一緒に開いている、なんてこともあるでしょうが、学生側が事情をよく把握していないのに合同で説明会を行う先生の研究室99.9999999999%ブラックです!!

 この時点で「あの研究室こわ……研究室もう一度考え直そう……」となっていたら、と現在少し後悔しています。

 上記のようなブラック研究室には、近寄らないのが吉です。では、そうでない「隠れブラック研究室」はどうしたらいいのでしょうか。次は、これを避けられる方法というのを紹介します。


4.見た目からではわからない「隠れ」ブラック研究室を回避する方法

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 よく言われる話ですが、

「研究室内部の人間に先生の人格を訊け」
「研究室外部の人間に研究室の評判を訊け」

 マジでこれに尽きます。
 なんなら同級生にもいろいろ尋ねてみるのもいいかもしれません。もしかしたら、自分の知らない事情も話してくれるかもしれませんよ。

 当時私は前者を怠り、後者は耳を傾けずにいました。こんなことをすれば、待っているのは地獄です。実際そうでしたし。
 まあ、たまたま入ったところがホワイトだった、という人はいると思いますが……

 前者については、研究生はだいたい先生の人格を理解していると思うので、いろんな研究生に話を訊きましょう。ただし、「研究生が屈強なメンタルを持っており、ちょっとやそっとでは倒れない」場合、「先生厳しいけどちゃんと指導してくれる好き」「前よりは言葉が柔らかくなった」とか言っている可能性があるので注意が必要です。
 また、こういう系のお話は先生がいないときにしましょう。先生の目の前でそんな話をする人はいないと思いますが、先生についての本音が聞けるのは先生がいないときだと思います。

 後者は、前者とは違う視点が得られるので、これも参考にしましょう。
 「悪い評判は聞かない」「卒業はさせてもらえるよ」と言われたらまあ安心してよいかと思います。「先生めちゃめちゃ優しいらしい」という言葉を得られたら安泰。
 問題は「あそこはヤバい」と言われた場合。速攻で希望の研究室を変えましょう。そう言われてしまう研究室は、だいたい前章のような要件を満たしております。

 また、そういう研究室ほど、「こんなすごい研究ができる!」「皆なかよし!」などとやっています。騙されないように。
 安心して研究ができる、安全な研究室を選びましょう。


5.おわりに

 筆者は考えなしに研究室を選んでしまったために、地獄を見ました。

 皆さんがご存知の通り、卒業研究は大学4年間の集大成でもあり、多くの時間を捧げるものです。
 また、研究は1人ではできません。先生、研究室の先輩方とよく相談し、アドバイスを頂きながら進めるものです。どうか、気兼ねなく相談ができる研究室をお選びください。そうしたら、きっとよい研究生ライフを送れることでしょう。

 ここまでの長文・乱文にお付き合いくださりありがとうございました。どうか、皆様が、素敵な研究ライフを送ることができますように。

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