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アトラクトはファンになってもらうことである。

少し久しぶりの投稿になりますが、キャスターさんから「採用 Advent Calendar 2019に寄稿いただけませんか?」との依頼を頂いて、ちょうど書こうと思っていた内容があったこともあり、引き受けさせていただきました。基本こう言った機会がないとサボってしまうので個人的にはちょうどよかったですねw


採用で注目される「アトラクト」

採用市場が活発化し、新卒・中途共に採用難だと言われていますが、そんな中で各社が色々なアクションを行い市場と向き合っています。グッドパッチも例に漏れず日々頑張っています。

ダイレクトリクルーティング、リファラルなどが代表的なアクションですが、それ以外で重要視されているアクションがアトラクトです。

「引きつける、魅了する」と言った言葉の意味通り、アトラクト次第では意欲を高め、内定辞退直前から内定承諾へと形勢逆転することも珍しくありません。アトラクトが採用の成否を分けると言っても過言ではないでしょう。

だからこそ各社が力を入れているわけです。

ただ、各社のアトラクトへの取り組みやスタンスを聞いていると、前述した「引きつける、魅了する」という言葉にとらわれるがあまり、実は応募者にとっては逆効果になっているのでは?と感じることがあります。

実際に、面接や面談を通して応募者からもそのような声(アトラクトが逆効果になっている)を聞きます。

つまり、応募者の意欲を高めるためにやっていることが逆に意欲を低くすることとなり、自社と企業の距離を遠ざけてしまうわけです。

そう、アトラクトは決して銀の弾丸ではない。

私も昔は銀の弾丸だと思い込んでいたのですが、多くの体験を通してそうではないことに気付き、その中で至った結論があります。

アトラクトは「ファンづくり」である

「!?」と思った方もいらっしゃるかと思いますが、これが現状至った結論です。

シチュエーションは関係ありません。
特に面談、面接中は会社のファンになってもらうことだけを考えます。
応募者が求めていること(期待すること)を引き出し、それに応える。

スポーツのクラブチームや歌手などのアーティストもファンがいなければ運営が成り立ちませんから、色々な草の根活動を通してファンを増やしているのと同じです(ノーサイドゲームをご覧になっていた方であればイメージしやすいかもです)。

「ファンになってもらうことが選考に関係があるのか?」
と思う方もいらっしゃるでしょうが、ファンになっていただいた延長線上に選考があります。

全てがそうとは言い切れませんが、興味の持てない会社に自分の時間を割こうとは通常思いません。これは前述したクラブチームやアーティストも同様で、試合やコンサートを観に行くのにはコストも時間も掛かりますが、それでも価値があるから赴くわけです。

応募が少ない、選考に進んでもらえない、選考の途中で辞退するなどは外的要因もあるでしょうが、応募者を自社のファンに出来なかったからであり、私は常にその意識で採用と向き合っています。

ファンになってもらうためには?

さて、ここからがこのnoteの本題なのですが、一方的なアトラクトは効果は薄いばかりか逆効果にもなり得ます。ちなみに一方的なアトラクトとは、相手にとってはメリットではないこと、もしくは重要視していないことを伝えてしまっている状態です。言い方を変えると、押し付けに近い状態かもしれません。

そこで今回はこれまで実際に応募者の方からのヒアリングを元にブラッシュアップをしてきた、ファンづくり(=アトラクト)のスタンスを書かせていただきます。

ただ、よりイメージをしていただくために逆効果になるケース(必ずしもそうとは言い切れないものもありますが)も交えながらお伝えします。

逆効果になる(もしくは可能性のある)アトラクトとは?


では、どう言ったアトラクトが逆効果になるのかを具体例を交えながらお話をします。なお、実際に応募者の方からヒアリングした内容でもありますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

よくあるパターン① 
自分たちが魅力と思っていることは相手にとっては必ずしも魅力ではない。

これについては既に前述していますが、自分たちの魅力を伝えることに終始し、意欲を高めるつもりでやっているつもりが逆効果になるケースです。一番大事なのは、応募者にとって必要な情報を伝えることであって、自分たちの魅力を伝えることではありません。

よくあるパターン②
定型説明


これは一概にマイナスとは言えない部分もあるのですが、私たちが思っている以上に代表の経歴(スタンスや想いなどは別)や、会社の沿革などに関心がある人は少なく、ここの説明に時間を使ってしまうのは少しもったいないです。また、定形の資料で会社説明をする場合も注意が必要です(これも内容によりますが)。会社のバックグラウンドを知ってもらうのは大事ですが、伝えるタイミングや、伝える内容を間違えると効果的ではありません。

よくあるパターン③
最終選考に近くなってから頑張る

最終選考に近いフェーズになると候補者のアトラクトにドライブがかかります。会食や、現場メンバーと会ってもらうなどが代表例ですが、既にその時点で他社に決めてしまっていることも珍しいことではありません。勝負はファーストコンタクトから決まっていると言っても過言ではなく、最初に抱いた印象をひっくり返すのはかなり困難を極めます。

事実、内定承諾率の高い企業の方の話を聞くと、最初から全力投球です。どのフェーズでも力の加減をしていないように思います。

後から頑張ってもやれることは限られます。逆に最初から全力でアトラクトをすれば選択肢も広がりますし、仮に残念な結果になっても後悔はしないでしょう。

また、応募者にとっても全力な姿勢は印象的なものになるはずです。

「面談・面接」フェーズのアトラクトのスタンス

ここからは自社のスタンスです。
ただ、全てのお伝えするのは難しいため、比較的イメージのしやすい「面談・面接」フェーズに絞って、時系列順に3つに分けてお伝えをしたいと思います。

スタンス①
引き出そう!

面談、面接は相互理解や見極めの場(面接の場合)でもありますが、「企業を決める際の軸になりそうな重要な情報を引き出す場」でもあります。ここで言う引き出すとは、相手が言っていることを深掘りをすることで、そこで得た情報が効果的なアトラクトへと繋げるヒントになります。

ちなみにここが出来ていないことが、効果的なアトラクトが出来ない原因の大部分を占めます。

少しだけ実例を紹介すると「現職には不満もなく、転職は考えていない」と言う方が面談にいらっしゃったケース(皆さんもご経験があるかと思います)で、話が盛り上がる中で現職での話を深掘りして聞いていくと「組織が大きくなってきた」「キャリアが」と言ったワードが出て来たので、「それは現職への不満なのでは?」 と聞いたところ「むむ、確かに・・・」と雲行きが変わり、その後更に不満に感じたところを深掘りした結果、双方の期待値が一致し入社にまで繋がったケースがあります(今ではマネージャーとして活躍されています)。深掘りをしていなければただの面談で終わっていたわけですが、重要な情報を引き出せたことが、その後の入社に繋がったことは間違いありません。


なお、グッドパッチでは面談・面接を担当するメンバーへは必ず面接官トレーニングを実施していますが、「重要な情報を引き出すこと」については重要視している項目の一つです。

小ネタではありますが、私は会社説明の際は「今日の期待値」「質問したいこと」を冒頭でヒアリングし、それに沿ってその人に合った会社説明をしています。本人が必要な情報に対してのインプットが出来るメリットがありますし、本人の会社選びのポイントも理解できます。その反面、説明のパートが長くなりがちなデメリットも・・・。

スタンス②
パズルのピースを埋めるイメージで

①で得た情報は原石でしかなく、それを光り輝かせ、効果的にするためにはこちら側での工夫が必要になります。ちなみにここにも落とし穴があり、自分たちの魅力を伝えることで頭が一杯になり、せっかくの原石を活かせず、応募者にとって必要な情報を伝えられていないことが多いようです。

なお、ここで意識するべきことは、「応募者が自社に興味を持ってもらうために欠けているものは何か?」です。

応募者をパズルのフレームに例えると、フレームに足りていないピースが何かを引き出すのがスタンス①であり、スタンス②がスタンス①に基づいてそのピースを埋めるフェーズと考えてください。

自分たちの会社の強みや魅力、特徴の中から、欠けているピースになり得るものは何かを考え、それを面談や面接を通して埋めていく。そんなイメージでしょうか。その精度が高ければ高いほど、効果的です。

ただ、ここでのもう一つのポイントは、埋められるピースがなければ無理をして埋める必要はないと言うことです。アトラクトはポジティブなイメージがありますが必ずしもそうではありません。ネガティブなこと(例えばこれは実現が難しい、など)も伝える必要もあります。なぜなら最も重要なのは入社後であり、入社に至るプロセスの補助ツールとしてアトラクトが存在しているので、無理にピースを埋めてしまうことはミスマッチに繋がります。

もっと興味を持って欲しい、と言う気持ちはもちろん理解出来ますが、応募者の全ての期待に応えられないことを意識することも重要です。

スタンス③
ファンづくりの延長戦に選考があり、入社がある。

私個人は採用フェーズでの「口説く」と言う言葉があまり好きではありません(もちろん手段として口説くことはありますよ)

と言うのも、よくあるパターン③にも書きましたが、出会った時点から(もっと言えばメッセのやり取り、スカウトの送信時も)全力で応募者と向き合い、コンタクト前よりも会社のファンになってもらうことが大事であり、口説く前にやれることがたくさんあるからです。

そもそもファンになったことの延長線上に選考があるわけで、選考が苦戦している原因の大半はファンづくりが滞っているからだと思います。

ですので私は面談から選考の希望をいただけなかった時は「自分のアトラクト(引き出せず、欠けたピースも埋められず)が不十分で、ファンになってもらえなかった」と内省し、次回のアクションに繋げるようにしています。

グッドパッチは体験をデザインする会社と言うこともあってか、同じようなスタンスでいる選考官ばかりで、いかにしてファンをつくるかと言う点に腐心しています。

そう言ったこともあってか、グッドパッチは一部の経路を除いて一度選考フェーズにのると選考前に辞退が発生するケースはほとんどなく、スカウト後の返信が止まる、当日来ないなどのケースもほとんどありません。

内定承諾率もこの2年の平均で82.5%と高い水準をキープしています。

特別なことは特に行っていないので、純粋にメンバーが全力で応募者に向き合っている成果だと思っています。

アトラクトに王道はない

今回はポイントを絞って書かせていただきましたが、アトラクトは王道的なものはなく、地道にコツコツとファンづくりに向き合えるかに掛かっています。ここで紹介したスタンスや事例もあくまで一つの例であり、これをご覧になっている企業で活かせるかどうかはわかりません。

それはそれぞれの会社に個性があるように、ファンづくりのやり方も様々だからです。

ただせっかくの機会なので、ぜひ一度自社のアトラクトを振り返ってみてはいかがでしょうか?

何かが変わるきっかけを掴めるかもしれませんよ。

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