『ラジオ太平洋』観劇

時間と空間の旅。

都内唯一の路面電車、都電荒川線は早稲田〜三ノ輪までを1じかんで走る。その1じかんで、電車を貸し切って、なんと生放送のラジオと並行して、行われる演劇。

時刻は昼下がり、座席に着けるちょうどの人数しかいない1両編成の車両には、秋空があたたかくひだまりをつくっている。ちん、ちん、とベルを鳴らして、レールにしたがって走っていく感じがなんだかおもちゃみたい。
「ラジオ太平洋、5.4.3.2.1」
とカウントダウンが入って、始まる。

劇の世界観は弱い。窓の外に広がるのはまちの景色だから。通り過ぎる列車にホームから指をさす人、「なにやってるんだろ?」とその人の口が動いたり。だけど、うごくものの中に重ねられた、現実ベースだけれど少しフィルターがかかった世界と、電車のもつ、「ここではないどこか」へ運んでいくような感覚が混じって、ふしぎな感じ。

終点の駅もやっぱりおもちゃみたいな雰囲気で、繋がった商店街は、お惣菜を売っているお店がギリギリまで張り出すアーケード、看板の古めかしい字、何よりなんとも言えないバックグラウンドミュージック、迷い込んでしまった別世界のようで。時間も場所も少しねじれたなかを、ぶらり歩いた。
#日記 #観劇

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