見出し画像

「ツバキ文具店」

タイトルにひかれて買いました。「ツバキ文具店」(幻冬舎文庫)。

主人公の鳩子は文具店を営んでいますが、物語には鳩子の本業(?)の代書屋としてのエピソードが綴られています。

代書屋ってご存知ですか?「字が汚い」「文章が上手く書けない」などの事情を持つ本人に代わって、手紙(やハガキ)などの代筆を行う職業。

古くは高貴な方の代筆を行う「右筆(ゆうひつ)」という職業があった、とこの本には書いてあります。

ご本人に目的や送り先の方とのエピソードを聞いて、文面を考えるだけでなく、文字を書く紙や筆記用具にいたるまで厳選して代書を行う鳩子。

さらにすごいのは、目的や送り主に合わせて、口調や文字の書きぶりまで変えてしまうところです。

これは一例。「満寿屋(ますや)」の原稿用紙にモンブランの万年筆でイッキに書き上げました。鳩子は女性ですけれど、いわゆる「男文字」も書けます。

実際の文字は萱谷恵子さんという方が書かれています。

ガラスペンで手紙を書くエピソードもありました。依頼したのは、若いころ大好きだった女性に手紙を出したい、という男性。

結婚の約束までしていたけれど結ばれず、今はそれぞれ伴侶を得て幸せに暮らしている。今さら”より”を戻したいわけでもなく、彼女の今の生活を壊すようなこともしたくない。

ただ「僕も幸せに暮らしています。遠くからあなたの幸せを祈っています」という気持ちだけを伝えるための手紙を鳩子に依頼しました。届いたときに彼女の夫に無駄な詮索をさせぬよう「女文字」がよいだろう、というのも代書を頼んだ理由です。

そんな手紙を書くのに鳩子がガラスペンを選んだ気持ちがわかるような気がします。

#ツバキ文具店 #代書屋 #ガラスペン

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?