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たけだの「とびきり」紹介

みなさん、こんにちは。こんばんは。

たけだです。


高校生の頃、あんなにキラキラして見えた
大学生のお姉様。

いざ自分がその世界に飛び込んでみると、

電車の中の制服姿にポニーテールをした高校生が

とんでもなくキラキラ輝いて見えるという、

そんな、どこか寂しいような嬉しいような

何とも言えない矛盾を抱えて

蒸し暑い日々を過ごしています。


「そんな日々のキラキラを紹介できたらな」

「紹介するのであれば、キラキラの中でも特別大切な、私だけの『とびきり』を紹介したいな」と

そんな感じで、
いつも通りの見切り発車で、

たけだの「とびきり」紹介をしようと思います。

幾つになっても、
ときめきを忘れずに生きていきたい。

そんな脳内お花畑の大学生を今日もときめかす、
私の「とびきり」をご紹介します。

出逢い

確か、2年程前のことでした。
図書館でその背表紙の「色」に惹かれて手を伸ばした。

「星へ行く船」

SF小説?
今までに読んだことのないジャンルだなぁ。

パラパラとページをめくる手が止まったのは、
それから数時間経ってのことでした。

こんな素敵な本が、この世に、、、

カラフルな言葉で展開する目の前の物語が、
私にぶっ刺さる。痛いくらいに。コレ、致命傷。

抑えきれない胸の高鳴りに
言葉を失い、
息が詰まり、
とんでもなく目がチカチカして、
じんわりと汗ばんだ掌にも気付かず、
たまらなく優しい波に呑み込まれていきました。

圧巻の新井素子ワールド。

他の感情の追随を許さない圧倒的な放心状態。

その後胸に広がる幸福感、充実感。

お母さんのメイク道具をこっそりと使って、
初めてお化粧をした時のような、そんな高揚感。

お気に入りのお洋服に袖を通した時の
あの、ときめき。

甘い余韻を夜通し咀嚼しても、それでも残る。

ふわふわとした形のないときめき。

その時から私、この本の虜。

(星へ行く船シリーズ全5作写真)

ね、背表紙の色、素敵でしょ。


「とびきり」の理由

新井素子さん著作の「星へ行く船」シリーズは
全5巻で完結する「ロマンティックSF」と称される小説です。

私、単純なシンデレラ思考(?)なので
「ロマンティック」って言葉にめっぽう弱い。

この時点でたけだの心は鷲掴み。

1. 星へ行く船
2. 通りすがりのレイディ
3. カレンダー・ガール
4. 逆恨みのネメシス
5. そして、星へ行く船

タイトルのラインナップを見るだけで分かる。
素敵に決まっている(早い)。

この作品は、惑星間を宇宙船が飛び交い、
人類が宇宙で当たり前のように生活をする
未来の世界を舞台に、
本作の主人公である森村あゆみの一人称視点で
進んでいく物語です。

地球がどうしようもない人口増加に困り果て、
地球政府が人口増加防止と他惑星開発の
一石二鳥を狙い、
積極的に他惑星への移民を進め出した時代。

そんな地球政府の政策が功を奏し、
他の惑星に移民する人の数が増加。

地球は桁違いの大金持ちしか暮らしていけない
「行きは良い良い帰りは怖い」の惑星に
なってしまいます。

地球の特権階級出身の森村あゆみは19歳にして
家出ついでに、地球を捨てて、
幼い頃から憧れていた宇宙に行くために
星へ行く船へ乗り込みます。

だだっ広い宇宙に一人。
行くあても帰るあてもないあゆみちゃんを
拾ってくれたのは、命懸けの船旅を共にした
山崎太一郎でした。

水沢良行が火星で営んでいる水沢総合事務所、
通称「やっかいごとよろず引受け業事務所」。

少し前の私立探偵みたいなことを仕事にしている事務所です。
依頼があれば、人探しから、小さな厄介事から
宇宙の命運を賭けた大仕事だって引き受けます。


そこの所員として働いている太一郎が、
所長である水沢さんに話を着け、
あゆみちゃんは無事(?)、
やっかいごとよろず引受け業のプロを目指すことになります。

そんな日々の中で、
時にお隣さんのフィアンセを救出したり
時に命を狙われた素敵なレイディのSPをしたり
時に全宇宙を巻き込む大事件に首を突っ込んだり

あゆみちゃん、一人前になる為に、奮闘します。

一人の少女の成長物語としてはもちろん、
何より太一郎さんとの微妙な距離感の描写や、
たまらなく心に突き刺さる素敵なセリフ、
ロマンティックSFと称されるに相応しい恋模様に
一文一文、振り回されます。

この本が「とびきり」の理由。

それは、読んでいるこちらが
うっとりしてしまうほど、
恥ずかしくなってしまうほど、
正直で真っ直ぐな言葉たちにあります。

ここで、もう少しその理由を
深堀りしてみることにしましょう。


レポートはちょっと苦手です

先日、大学の授業でお気に入りの小説を
紹介しようという授業があった。

さすが文学部。
感動しました、拍手喝采。

せっかく発表するのであれば、聞いてくれた人が、思わず手に取ってみたいと思うくらい、
この本の魅力をぎゅぎゅっと詰め込んだプレゼンにしよう、と誰よりもルンルン気分で準備をしていきました。

ですが、一応授業であり、
レポートであり、
プレゼンテーションなので

「あゆみちゃんと太一郎さんの微妙な関係性や
あゆみちゃんの人柄、新井さんの言葉選びが
ほんっっとに素敵で!」

と熱量だけで語るのはあまりよろしくないな。

そう思ったたけだは、
この本をどうして素敵と思うのか、
ちゃんと言葉にして考えてみた。

その結果、見えてきたのは
「新井素子さん独特の文章表現」という答えだ。


前述の通り、本作は主人公である森村あゆみ視点で描かれているのですが、彼女の一人称は
「私」ではなく、「あたし」で統一されています。

(正確に言うと、物語上の都合であゆみちゃん、最初は男の子、それも自分のお兄ちゃんのフリをしていたから、冒頭部分だけは自分のことを「俺」と言っています)

一般的な小説ではあまり用いられないと思うのですが、新井素子さんが描く「森村あゆみ」は
生粋のお嬢様でありながらも、
気が強く、放って置くと何をしでかすか分からない危なっかしさをはらんでいて、

どこか「私」ではなく「あたし」が似合う人物であるように思います。

また、新井さん独特な詩的な言葉選びや文章表現も魅力の一つと言えます。

第1巻の表題作「星へ行く船」のアフターストーリーとして描かれている「雨の降る星 遠い夢」での表現が特に垢抜けています。

ヒガ種きりん草火星亜種という黄色い花が物語の
要となるのですが、その色彩表現がとても素敵。

視神経がいかれてしまったみたい。
ドアがどこまでも大きくなる。
大きい、画面。
あらわれる映像。

幼稚園の友達の絵
大輪のひまわり
あざやかな黄と茶のコントラスト

ノブは? 鍵穴は?
必死の思いで探す。
もういい、どうせ人ん家の鍵だ。
壊してしまおう。

宇宙船が燃える
下から出る火
燃える
飛び立っていく

中心が青
そしてオレンジがかった黄

ドアを開ける。
中は黄色の、海。
およそ物心ついた時から、ずっと心の中にため込んでいた黄色のイメージが、やつぎばやに展開する。

このように、短文が連なった詩のような文体をしていて、読者に抗う余地も与えず、幻想的な風景を想像させます。

そして、とにもかくにも新井素子さんの描く

「女の子」が素敵過ぎるのです。

あゆみちゃんを初めとする、
女の子のキャラクターが、、、
女の子の描写が、、、

「尊!!!」

という言葉しか出てこない。

可愛いだけのヒロインじゃ、
たけだは納得しませんよ。

と大口を叩いていた私に、クリティカルヒットをかましてきたのが、木谷真樹子さんという女性です。

第2巻「通りすがりのレイディ」で初登場するキャラクターで、今後のお話にも関わってくる非常に重要なキャラクターです。

あゆみちゃんが、その女性にうっとりと
見惚れるシーンが多く存在するのですが、
その言葉選びがまあ素敵だこと!

同性であるあゆみちゃんが
惚れ惚れしてしまうほどの魅力を、
読んでいる私ですら感じてしまいます。

とにかく読んでいただきたい。切実です。



あゆみちゃんに憧れた大学生の話

ここまで散々語り散らかしてきた私ですが、
登場人物が素敵だということだけでも
伝わっていれば、私の作戦は及第点です。

そして、その素敵なキャラクターの中でも、
やはり森村あゆみの人柄について触れずにはいられません。

19歳で家出ついでに地球を捨てた。

その言葉だけで、白飯三杯はいけます(?)

このキャラクター、何と言っても命知らずです。

第2巻「通りすがりのレイディ」事件で、
火星の居住ドーム(地球以外の惑星には、巨大なドームが立てられており、人間はその居住区域内で人工酸素を生成しながら生活している)に穴を開けたり、
生放送中のTV番組を乗っ取ったり、
人を庇って左手の肘から先が義手になったり、
過激な一面を持っています。

そして、ここがまた良いのですが、
主人公である森村あゆみが決して「美人」として
描かれていない点。ここが、また素敵。

従来の「守られる可愛いヒロイン」のイメージから大きく逸脱している部分が、彼女の一番の魅力だったわけです。

こんなにも「守られるヒロイン」という看板が似合わないヒロインは、稀ですよ。

でも決して「雑把なキャラクター」なのではありません。

この先ネタバレ注意です。

物語を読み進めていくと、
あゆみちゃんは「同調力」という特殊な力を持っており、自身の喜怒哀楽や好悪の感情を周囲の人間と同調させることができる超能力者であることが発覚します。

子供時代から「嫌われた」記憶がない彼女。

周囲の人間との関係は常に良好で、
周囲の人達からそれなりに好かれている、と

それくらいにしか思っていなかった彼女ですが、
この能力の存在に気付いてしまった以上
事情が変わってきます。

自分が周囲の人から好かれるのは
この能力のせいではないか。

事務所の人だって、
もしかしたら太一郎さんだって、、

と人間不信に陥ります。

森村あゆみという人間は
非常に、非常に繊細な女の子なのです。


ここまでご説明した通り、
魅力がダダ漏れな彼女ですが、正直

こんな女の子、憧れる。

だって、守られるヒロインじゃなくても、
守ろうとしてくれる人がいる。

だって、帰る場所がなくても、
迎え入れてくれる非日常がある。

だって、可愛いヒロインじゃなくても、
自らの道を自らで切り開く強さと行動力がある。

だって、美人じゃなくても、
たまらなく可愛くて、愛おしい。

決して「美人」として描かれない彼女が
周囲の人に好かれる理由。
そんなの言うまでもなく、「中身」でしょ。


「あゆみちゃん」という人間が心の底から
「可愛い」人間であるからでしょ。

外見を磨くことには、限界がある。
しんどいけど、それは事実。

でも中身はどこまでも磨ける。無限。夢幻。

そんなあゆみちゃんに今日も憧れて
私はせっせと地に足をつける。


宇宙一の自信過剰男

ここまで触れずにきた山崎太一郎という男。

彼は事務所一の腕利き(と、本人が言っている)で
凄まじいハンサム(と、本人が言っている)で、
とっても頼りになり(と、本人が言っている)、
銀河系一のいい男(と、本人が言っている)である。

と、やたら「と、本人が言っている」という言葉がくっついていたことでお判りのように、
もの凄い自信過剰の人。
(とは言え、この事務所一の腕利きと言うのと、とっても頼りになると言うのは、本人が言わなくても、まわりの人達が全員認めていることであったりする)

ただ、彼は銀河系一の自信過剰男ではあっても、
決して銀河系一の自惚れ男ではない。

というのは、彼が「できる」と言えば、
例えどんなに無理に見えることであっても
彼は本当に「できる」のだし、
彼が「する」と言えば、
例えどんなに無理なことであっても
彼は本当に「する」のだから。

銀河系一の自信を決して自信だけに留めない。
それだけの実力を持った男なのだ。

まずこんな人物、好きになってしまうだろう(?)

どれだけ、

クシャクシャなワイシャツに、ネクタイをぶら下げるように絞めている(もはや絞まっていない)
だらしない男でも、

ファッションセンスが壊滅的な男でも、

終始ヘラヘラ冗談を言っているような男でも、

行くあてもないところを
星空の下で拾われたりしたら
好きにならない女の子はいないのではないか。

ましてそれが19歳で地球を捨てて、
家出してきた女の子なら尚のこと。

何と言えばいいのだろう。

そう、人間くさい人間なのだ。

あゆみちゃんを雇うように、
所長に話を着けたのも
「昔の自分を見ているようで、放って置けなかった」という理由で、彼は宇宙一世話焼きな男でもあると思う。

ただ面倒見の良い人間というだけではなく
あゆみちゃんを「拾ってきた」という保護者であり、先輩である立場を深く理解しているところも、この人物のずるい(?)面である。

そうだ、とにかくずるい男なのだ。

責任を持ってあゆみちゃんを宇宙一幸せにして欲しい(?)



素敵な素敵な、私のお守り

如何でしたでしょうか?

何だかとんでもない量の文章を
一気に書いてしまったような気がします。

怖くてスクロール、できない。

感情が抑えきれていない部分も多々ありますが、荒ぶってしまうほどに
この作品は素敵な素敵な作品です。

初めて読んでから、
何度も何度も繰り返し読みました。

それでも、読む度読む度、
ドキドキして、ワクワクして
目の前のキラキラにときめいて参りました。

私にとってこの物語は、
いつも手元に置いておきたい、
お守りのような存在です。

いつまでもときめく心を
忘れたくはありませんから。

こんなにも素敵な本を書いてくれてありがとう。
あの日、目に止まってくれてありがとう。
無意識に伸びた私の右手、ありがとう。

いつまでも、キラキラと、私の中に居てね。

「とびきり」紹介、終わり。


こんな超大作、読んでくれた貴方。
ありがとう。

今日も独り言にお付き合い頂き、ありがとうございます。
素敵な一日をお過ごしください。

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