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ねこのような

こんにちは、こんばんは。
たけだです。

意図せず、お久しぶりです。

花粉の襲来を感じる今日この頃。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

わたし、春は心がぽかりと寂しくなるから、得意ではないのです。

今年も、どうやら沢山の人と、さよならしなくちゃいけないみたいです。

その中でも、特に、やっぱりバイト先の人とお別れするのは寂しいですね。
そう思えるくらい、素敵な人たちと働けたことはとっても嬉しいことなのですが。

わたし、大学1年の夏から近所の焼肉屋さんでアルバイトをしています。
もう2年半になるのかな。
長いようで、あっという間でした。

2年半、とってもお世話になったおふたりの先輩方がこの春、就職です。めでたい……。
1歳差ということで、大変仲良くさせていただきました。

なんだか、最近、ぼーっとそのことばかりを考えてしまって、その度に、何とも言えないぼんやりとした気持ちが押し寄せます。


だから、今日はわたしのために、わたしがちゃんと気持ちに整理をつけられるように、ここに書かせてください。

どうか、肩肘張らずに最後までお付き合いいただけますと、幸いです。


猫のようなふたり


先輩ふたり。
1つ歳上の大学4年生。

おふたり同士、異性ではありますが、とても素敵な関係性。

なんだかよく似ているのですよ。
一緒にいる時間が長いと、似てくるのですかね。
見ていてほっこりします。

このふたりと一緒にいると、なぜか不思議な安心感があるのです。
初代プリキュアみたいな、絶対的な安心感……
レジであたふたしていた時に、ふたりがすぐにわたしの両側についてくれて、あまりの安心感にシャイニールミナスになっちゃう〜〜!!と思ったこともあります(?)


このふたり、何がそんなに似ているのかと考えてみると、そうだ、ふたりとも猫みたいな人なのだ、と。


たぶん、人に心を許すまでにかなりの時間が必要な人たちなのです。
でも、その分、一度心を許した人にはとことんなのだと思います。

だから、人たらしなのですよ、全く。

そりゃあ、時間をかけて仲良くなって、懐いてもらえたら嬉しいものです。気付いた時には、こちらから……になりかねません。

なるほど。なんだか、腑に落ちました。


わたしの人生において、きっとこれからも登場人物であり続けるのだろうなあ。
それくらい、わたしに忘れられない影を落としたふたりです。

思い出しただけで、少しうるうるしちゃいます。


そんな猫っけ満載なおふたりの話、もう少しだけさせてください。


ある先輩

ほんとうに、猫のような人──


目を離したら、ふ、と消えてしまいそうな危うさがありました。

寝起きの機嫌がさいあくで、出会った当初は、なんて無愛想な人……と、衝撃パンチ。ガードが固くて、いつもの淡白な返事の後に、沈黙を引き連れてくるような人でした。


けれど、それでいて、不思議と居心地の良い人です。

沢山たくさん時間をかけて、その人の心の紐を解いてった。……と、わたしは思っています。


あの人ね、笑うと目が無くなっちゃうんです。


一度仲良くなったら、少しだけ、一緒にふざけてくれる人。
仕事が早くて、サバサバしていて、辛党で、気持ちの良いほど真っ直ぐな人。

わたし、この人と一緒に働けて、仲良くなれて、出会えて、心の底から良かったなあ。嬉しかったなあ。


そして何より、わたしのことを、わたしの本質を、初めて見破ってくれた人です。
人見知りで、計算的で、可愛げのないわたしの本質。その壁を、越えてきてくれた人。


日付をまたぐ居酒屋、真夏のユニバ、初めての高級焼肉店、足を引っ張りまくったスポッチャ、深夜のカラオケ、バイト終わりの自転車置き場、明け方の高速道路──


その人、居酒屋さんではキュウリか枝豆しか食べません。普段無気力なのにお酒が強くて、飲みに行ったら梅酒のロックばっかり。

絶叫系は苦手で、フライングダイナソーの列で半泣きになっていました。怒られるから、内緒ね。

わたしがどうしても!ってわがまま言って買ったユニコーンのぬいぐるみ。真夏なのに暑くないの?って何度も聞かれました。

大阪の高級焼肉店。正直、緊張し過ぎて味は何も思い出せません。お酒をみんなで沢山飲んで、その後タクシーで爆睡したことだけは覚えています。

バイト終わりにみんなでスポッチャに行って、わたしが足を引っ張りまくったのも覚えています。カラオケでコオロギを食べたような気もします。

カラオケはよく行きました。よく考えたら、うちのバイトって結構仲良かったのかな。バイト先の誰かに連れ出してもらった記憶が多いです。カラオケは3時が限界だね、って話したことも覚えてます。

どこかへ行く時はいつも迎えに来てくれて、その人の黄色い車はよく目立つから、わたしはいつもの待ち合わせ場所で大人しく待っているだけで良かった。大抵助手席には誰かが乗っていて、だからわたしは運転席の後ろから、ぼーっと窓の外を見ていました。
車、いつもありがとうございました。

車の免許を取るまでは、その人、自転車で通勤していたから、歩きのわたしにスピードを合わせてくれて、でも結局は駐車場の出口で1時間くらい他愛もないお喋りをしていました。
あそこ、ほんとうに蚊にくわれるんだよね。


忘れたくない思い出が増えました。
これから先を生きていくための糧でもあるし、足枷でもあるのだと思います。


でも、これだけは胸を張って言える。言いたい。

ねむそうな顔も、たのしそうな顔も、隣で沢山見れて、良かった。
みんなのフォルダの中のわたし、結構たのしそうでした。


昨日、一緒に働くのが最後でした。
あとは、3月に送別会があるだけ。変な感じ。

わたし、その人の後ろ姿が好きなの。
身長が高いからなのかな、不思議と安心感があります。
本人は身長を気にしてたけど、背の高い女の子なんて最高じゃないか、といつも思っていました。
そうか、もう見ることもなくなるんだな。


そうだ。
あの人、昨日の別れ際も "またね” って言ったの。


ああ、そうかあ。
"またね” かあ。 "またね” なのか。あの人のなかで、ちゃんと "次” があるんだ。


だからわたし、駐車場に響きわたるくらいの大声で言ったの  " ぜったい、また!”


いつも、わたしを外の世界へ連れ出してくれてありがとうございます。
沢山新しいことを教えてくれて、新しい感情を教えてくれて、外に出るのを躊躇ってしまうわたしの手を引っ張ってくれて、ほんとうにありがとうございました。


そうやって、本人に伝えられたことはあったのかな。


ある先輩


ほんとうに、猫のような人──

"またね”先輩とは、また違うタイプです。
人当たりがよくて、どんな人にも──勿論わたしにも、積極的に話を振ってくれる。面白い返しとかしてくれる。ほんとうに感謝です。


でもなぜか、心の芯から日向で生きている人ではないのだろう、とも思う。


誰にでも話しかけるのは、沈黙が苦手だからなのか、それとも相手に気を遣っているからなのか。


とにかく、"たぶん、これは本心じゃないな” と勘づいちゃうんですよ、不思議だけど。
それがわたしの厄介なところでもあります。
貰った親切は、貰ったままの形で受け取っていれば良いものを。 "あれ。これ、めちゃくちゃ気を遣わせているのかも” と変な勘ぐりをしちゃいます。


心の底を見せないところ。
そういう人に限って、ほんとうに、ふ、と居なくなってしまうのではないかという漠然とした不安。


気になる。目で追う。たまに、くしゃりと笑う。
"あ、これは本心なのだ” と思う。嬉しい。
そんなこんなの繰り返し。
ああ、健気なわたし。


覚えてる。忘れられない。


初めての注文で、"頑張れ” と言ってくれたこと。

仕事が早くて、丁寧で、何でもそつなくこなしてしまうところ。

髪を切った時に、すぐに気付いてくれたこと。

初めての飲み会で、こっちのテーブルまで来て気遣ってくれたこと。そのくせ自分も、お酒を飲んだらすぐに顔が赤くなるところ。

"大丈夫?” と肩に触れてくれたこと。その手が、あまりにも清廉で、なんだか悔しくなったこと。

ごみ袋を背負うわたしに、"サンタさん”と言ったこと。その日が、確かクリスマスイブだったこと。

宴席を片付けながら、ふたりで愚痴ったこと。

収拾がつかなくなった飲み会で、一人、食べ終わったお皿を机の端に寄せていたこと。

ピアスを開けていない綺麗な耳に、飲み会の時だけイヤーカフが見えたこと。それは誰からの贈り物ですか、って聞けなかったこと。

ショートカットが好きなところ。わたしはすぐに振り回されて、一年でコロコロ髪型が変わります。

一度だけ、"可愛い” と言ってくれたこと。

地元に彼女ができた、と報告されたある秋の日のこと。深夜2時に泣きながら歩いて帰ったこと。その途中でさえ、その人がカラオケで歌っていた曲を聴いてしまっていたこと。

わたしに合わせて、少し背を屈めて話してくれるところ。たまに、距離が──


わたしも、どうしてなのか分からない。
わたし、どうしたらいいのか分からない。


うまくいった試しなどない。
いつも悲しくなって、でもこの悲しみを拭ってくれるのもあなたで、ああ、また健気なわたし。


長い時間をかけて、大丈夫になりました。
その人にも、真っ直ぐな笑顔を向けられるようになりました。うん、もう大丈夫。


猫は気まぐれです。


みんなで行った旅行の帰り道。
あの深夜の高速道路、実はわたし起きていました。渾身のたぬき寝入り。
助手席に座るその人は、運転席の先輩と話していて、その掠れた声とか、綺麗な首筋とか、そんな夢を何度も見ました。


サービスエリアに寄ったとき、運転席の先輩が電話のために車を出てって、その人だけが車に残りました。
わたしの隣では、"またね” 先輩と、もうひとりのお友達がすやすや寝ていて、わたし、何だかもう心臓のおとが、空気を伝ってその人にバレちゃいそうで、ユニコーンのぬいぐるみを必死に握りしめていました。


車の中はあまりに静かで、もう、わたし、言ってしまおうか、と思って、寝言ってことにすればいいって、そう思って。


でも、浅く息をするだけで、言えなくて。
どうしても、言えなくて。
漂う空気の中に、文脈を見つけられなくて。


わたし、肌で弾ける優しい雨がすき。
温くなったミルクがすき。
紫陽花が雨粒に揺られる姿がすき。


そして私はきっと貴方が──


その瞬間のわたし、たぶん相当可愛かった。


そうしている間に、運転席の先輩が戻ってきた。
車はゆっくりと動き出して、遠くに見える都会の光があまりに綺麗で、これは夢だ、夢だって、何度も。


あれ、わたしもう大丈夫なんだよね。ね?


春の匂い、ふわり


もう春ですね。
── そうですね。


窓を開けると、スイセンの甘い匂い。
またこの季節がやってきます。


また長くなってしまいましたね。
宴もたけなはです。



あのね、わたし。

わたしの好きなタイプは、男女問わず、猫みたいな人なんだよ。

ここ数年で、そうなったの。

全くほんとうに、人たらしだよ。




ご卒業おめでとうございます。
おふたりの行先が、光溢れんばかりの未来でありますように。



送別会は、結婚式のお父さんくらい泣く予定です。


それじゃあ、またね。


今日も独り言にお付き合いいただき、ありがとうございました。
素敵な一日をお過ごしください。
良き春の日を。

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