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ガラスマオの滝 上からみるか裏からみるか 【旅日記】


オフロード車に乗車して、五分も経たない内に理解した。なぜ、この車のフロントガラス上部に、クモの巣状のヒビ割れが入っているのか?

 「うわあっ!」

思わず声が出る。
痛! 舌を軽く噛んだ。

うおぉ!  さらに大きく車がゆれる。

声が出そうになるが、舌を噛みそうで声を押しとどめるのに必死だ。横を見る、妻と息子も必死にシートにしがみついている。

「グウォー!!」 ひときわ大きなエンジン音を鳴り響かせながら、赤土の林道、乾ききらない窪地を走り抜けようとした時であった、

・・・・

スタックした  動かない

そもそも定員オーバなんだよねぇ・・・と言葉にならない独りごとをつぶやく。すると、運転手が身振り手振りで、車から降りてくれ、とジェスチャーする。 「・・・・」 ゾロゾロと降りる。

車外に出ると
土の匂いと、南国特有のムワっとした空気が体にまとわりつく。頭上からは、日本では聞いたことのない鳥類の声が聞こえてくる。気分は藤岡弘探検隊である。いや、わしらの年代なら、川口浩探検隊!

ツアー参加者の男性が、車押しを手伝い始めた。私は、ぼーっと彼らの脱出作業を見つめながら、昨日のやりとりを思い出していた。
やっぱり息子(3歳児)では、このツアーはしんどいのかなぁ、弱気が顔を出す。

◇ なめんなよ ◇


今回、我々が訪れているのは、パラオ。
「ガラスマオの滝」ツアーなのだ、前日ホテルのツアーデスクで申し込む際
息子の年齢を聞かれた。

「さんさい!」

3本指を立て、元気よく答える息子にではなく、わたしに向かって

「お父さま、頑張れますか?」

険しい道があります、との説明を受けたが、これでも学生時代山登りをしていた。一般客相手の「けわしい」なんてたかが知れてる。

「ええ」 

と、短く低い声とともに、「グィ」と相手を見つめる。舐めんなよ
男性は、受付を終了するや否や、振向き様に電話をかけはじめた「ええ、3名お願いします、はい、三歳の男の子がいます、はい、説明したんですが、はい、そうなんですよ、、」


◇ なめてました ◇


ようやく登山口(いや滝降口)に到着したサビサビの日産サファリ。

運転手とツアーガイドを前席に乗せ、後部座席には我々2.5人、そして荷台には、若い男女ペア、女性2人組と、年配女性1名を乗せた、計9.5名の一行である。 夜逃げ、いや密入国状態なのだ。ワイルドだろー

運転手をクルマに残し、8.5名で滝への道に分け入る。
クルマの道があれだもの、歩く道が平坦なわけが無い、鬱蒼としたジャングルの中を息子の手を引き、歩き始め

3歳児では無理や

他の方に迷惑にならないように最後尾で歩き始めたが、一分も経たないうちに列から離れてしまう。
「ふぁいとー! いっぱーっつ!」
体重16キロを気合一発、抱きかかえ、ヨロヨロと歩き始める。

不安な顔をする息子に「にっ」と笑いかける。「大丈夫だ~」
(セリフが昭和だ、、くっ~)

お! 小さく見えた! 上から滝を臨む (まだまだ遠いなぁ・・・)

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◇ 裏からも ◇


ふう~ 

やっと着いた。

途中、腰まで浸かるような川を横切り、日本軍が敷設した線路も横切り、ようやく到着。腕がパンパンプルプルなのだ。

手荷物状態の息子も大開放!
早速、滝つぼへ! そのために水着姿できたのだ。

滝つぼを渡り、滝のカーテンをくぐり抜け裏側に回る。昭和のアニメだと裏側に財宝があるんだけどなぁ。。もしくは世捨人が隠れ住んでいる。

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ワイワイ、キャッキャと遊んでいると

あっという間に 「はらへったぁ~」
お弁当の時間なのだ。ガイドが運んでくれた弁当をほうばる。家族で、ワイワイしゃべっていると、我々を見ている視線に気づく。

ひとりで参加していた、年配の女性だ。
微笑を浮かべながら、やさしい表情をしている。

視線を合わせると、

「いまだけだからね」

「せいいっぱい遊んであげなさい、いまだけだからね」

我々に話しかけているのか、自分自身に問いかけているのか、視線はこちらを向いているが、遠いどこかを見つめているような目つきであった。


ホテルに戻ると、素敵な夕焼け、
いやいやここは「サンセット」と呼ぼう ビールもうまい!

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◇ あれから~ ぼくたちは~ ◇


ジャングル探索から20年。

この旅行記当時(2000年)のパラオは、まったく観光化されておらず、名古屋ーパラオ直行便は、慰問(らしき)年配の方々で占められていた。遺影らしきパネルを持たれた乗客もいた。
浮かれた我々は文字通り浮いていたのだ。

パラオは激戦地、「南洋庁」が置かれた島である。「委任統治領」、行く前はそんな言葉も知らなかった。


ジャングル道からの帰り道、ずっとあの先輩女性のセリフが頭を離れなかった。なぜだろう。

「いまだけ」

旅行から帰ってきてもずっと頭の片隅にある言葉、
私の行動に影響を与えた言葉。

そして、「たび」を通して「出会い」が重要だと教えて頂いた
まさに、その方との出会いに感謝している。
「これからも~ぼくたちは~」
色んな所に行って、上から見たり裏から見たり、楽しもう。


1に「たび」、2に「ほん」 3、4が無くて 5に「さけ」


人との「出会い」が根底にある、大事にしている3つ(酒も?)

そして「note」での出会いにも感謝。。



(おしまい)





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