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【感想】JOKER

映画『JOKER』、感想が人それぞれ違うので、観る前からかなりワクワクしていた。

「怖い」、「よく分からない」、「無敵の人」…などいろいろ目にしたが、私は「仕方なかった」と思ってしまった。

(初noteなので多目に見てほしい)

■関係性の断絶(以下ネタバレ注意)

この作品に惹き込まれたのは、間違いなく「関係性の断絶」の描写がうまいからだと思う。

初っ端からチンピラに絡まれて看板取られたり蹴られたりと、アーサーがなかなか理不尽な目に合うところからスタート。

でも際立った理不尽が彼を襲うことは、少なくとも序盤はなかった。

アーサーは稼ぎは少ないけど、母親を介護し、突然笑い出す障害持ちだけど「私は障害持ち、気にしないでね」カードを持っていたりと、うまく社会に溶け込んでいた。

TVショーの司会マレーとの思い出も彼の原動力の一つで、彼には希望があった。

だからこそ後半の、アーサーと社会との関係の断絶が引き立つ。

真っ当に生きようとしていた人間が、夢や社会から一つづつ切り離されていき、最後には捨てるものも無くなる。この過程にこそこの作品の醍醐味があると思う。

拳銃ポロリでクビになり、憧れのマレーからは馬鹿にされ(なんであんなダダ滑りのコントが取り上げられたのかは謎)、好意を寄せる相手からは出ていけと言われる。

どれもみんなアーサーがやらかしたことだが、彼からしたらたまったものではない。

余裕がなくなるアーサーにトドメを刺したのは、自分が養子と判明した時だろう。

自分がウェイン家の息子なら、一発逆転できるかもしれないという甘い目論見も崩れ去った。

どれもこれも、「仕方のない」事象であり、その結果が生み出した道が、たまたま最悪への道だったのだと思う。

■アーサーが唯一手にしたモノ

社会からどんどん切り離されていくアーサーだが、唯一満たされた感情は、自己承認欲求だ。

「自分が存在していないのかと思う」と、職安の面談でこぼしていたアーサー。

地下鉄でウェイン商会の社員を殺害したことで、殺人ピエロが話題になり、貧者のシンボルにさえなる。

彼は狙ってムーブメントを起こした訳ではない。しかし自分がきっかけだと自覚すると、人から必要とされてると思い込んでしまう。

彼には母親からの愛も足りていたけど、もし金や仕事が直接の救済になったとしても彼は本質では救われなかったのではないか。

しかし自分が象徴になってしまったことが、アーサーの承認欲求に対する渇望を目覚めさせてしまったのだ。

「ただハグして欲しい」とトーマス・ウェインに詰め寄るアーサー。自分が実の息子ならという期待は、金目当てもあったが、父親からの承認も目的にあったのではないだろうか?

ラスト、アーサーは群衆に囲まれながらパトカーの上に立つ。

群衆からの期待は、彼にとっては至福であったのかもしれない。

最後のパトカーで護送されるシーン、個人的には凄く好き。街が自分のせいで混沌に陥ったと、満足げに心から笑うアーサーがいい。パトカーの上で立ち上がる時はつい感情移入してしまった。自分の血で笑顔を作るというのが、心からの笑いであったという解釈もできるし…最高。

■ダークナイトジョーカー(ヒースジョーカー)との比較

とは書いたものの、単純比較できないよなあ…

というのも、『JOKER』は『バットマンビギンズ』や『ダークナイト』と食い違う部分もあり、正史ではない可能性が高い。

また性格面でもヒースジョーカーと今作のジョーカー(ホアキンジョーカー)とは同一人物とは思えない。

ヒースジョーカーは、圧倒的カリスマとしての存在だった。

狂気に染まっているように見えるが、混沌を重んじる彼なりの信念(?)がある。

『JOKER』は、あくまでアーサーがジョーカーになる過程であり、別に策を巡らせて敵と対峙するわけでもない。

ホアキンジョーカーに、ヒースジョーカーっぽい印象を抱いたのは、地下鉄で刑事を翻弄するシーン。のらりくらりと撹乱する姿は、ヒースジョーカーを思い出さずにはいられない。ボコボコにされる刑事を見ながら踊るホアキンジョーカーかわいい。

しかもホアキンジョーカーには、ヒースジョーカーにはなかった同情を誘う要素がある。

この上でもし、ホアキンジョーカーが、バットマンと戦うのであれば、どんな悪役になるのだろう。

「自分にはない物を持っているお前が憎いから殺してやる」というホアキンジョーカーが更に悪の美学を昇華させるのか?ifを考えるのはいいねやっぱり。

■まとめ

社会からブチブチ切り離されていくアーサーは、自己承認欲求を満たすことで最悪&救済への道を進んでいくし、その道は事象の結果が生み出したので仕方ないというのが総括。

非常に稚拙な文章だが、感情を文章化してみたく初のnoteとなった。

今後ともよろしくね。

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