『肺へと続く』

世界中には様々な飛沫物質が飛び交ってる中、

わたしはあなたに恋しくなる。

背は高く年上で、

よく図書館で届かない高さの本を取ってくれた。

図書館職員ののあなたは、

「この本が好きなの?」

と、優しく微笑んでくれた。

今でも、その干したての毛布のような暖かさは忘れない。

そして通り過ぎる時のあなたの匂いを

思いっきり吸い込み、肺に溜めていたのを覚えている。


わたし自身もよくわからなくなるが、

いつからか、図書館にはいかなくなったような気がしている。

はっきり覚えているのは、小学校も初めの頃

よく友達と通っていた。

漫画は置いていなかったが、

子供用のそれなりに読みやすい本があった。

ある時から、友達はゲームというのに夢中になった。

わたしはどうしていいのかわからなかった。

友達との付き合いを大切にした方がいいのか、

こののま行かなかったらお姉さんが悲しむのではないだろうか、

しばらくの間は通っていたと思う。

だけど、いつも友達を連れてきていたせいもあり、

わたしには友達がいないんじゃないかという印象をもたれやしないか、

それはそれで嫌だった。恥ずかしかったのだろう。

それからわたしは行かなくなった。

最初は気になって仕方なかった。

”友達にも図書館に行こう”とは

言うにも言えなかった。

しばらく行かなくなるとほんとに図書館のことなど忘れて

友達付き合いをしていた。


今、このような時期になって

家にいるようになった。

テレビをつけるとニュースでは

『口からの感染予防のため、マスクを着用ください』

と言っている。

暗い時期になった。

誰かに会いたくても会いに行けない。

肌に触れたくても触れられない。

そんな時代になった。

この波長はじき収束するのかもしれない。

その時になったら君に会いに行こう。

少し小さくなっているのかもしれない。

少し老けているかもしれない。

時の経過と自分の成長を噛みしめながら

マスクをとった笑顔で、言葉で

人から人へ病気がうつる時代。

わたしがあなたと会う時は、その優しさを吸い込み

肺へと続く。。。



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