6月31日の雨

その日も雨だった。
しゃぁしゃぁと降る雨に身を打たれながら私は帰路に着く。

コンビニに行って傘を買う。給料日前の私には少し痛い金額だが、仕方ない。
珍しく、店員は1人。客も私だけで、妙な感があったのを覚えている。

何処かから聞こえる猫の声を聞き流しながら、流行りも切れた音楽を安物のイヤホンで聞く。
低音なんてまるで聞かない、カセットテープのような音質。

もう少しで家に着く、そんな時だった。

ぴー、ぴー、ぴー、ぴー、ぴー

無機質な音が響いた。
続けて、

どんっ

何かが背中を押した。
はっきりと感触がある何者かが、背中を強く押したのだ。

バランスを崩し前のめりになる私の視界には、
煌々とした白が2つ映った。

途端に暗くなる視界。

ああ、終わった。終わったのだ。
なんと呆気のない最期だったろうか。
あんなに弱々しい最期、生き恥である。

ぴー、ぴー、ぴー、ぴー、ぴー、

目を覚ます。
無機質だ。白い天井が見える。

私は我に返り、訊ねる。
どうやら私は地面に伏していた所を救急車に助けられたらしい。道理、背中が妙に痛いわけだ。
しかし骨は折っていないとの事だったので、今日中には帰れるらしい。

病院から出ると、黒猫が私を見てしゃぁしゃぁ威嚇している。

ああ、今日も雨か。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?