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「夏の土用」と「鰻」のお話

7月第3週の食とココロの処方箋。

雨が続いていますね。

梅雨明けは早かったですが、戻り梅雨となっています。

湿度が高いと、気温がそれほど高くなくても熱中症にかかりやすくなります。

室内で過ごす時にもどうぞお気をつけください。


《コーナー①》
最初のコーナーは、

「四季折々の食事と健康」

今週の暦です。

一年を24に分けた二十四節気と、さらに三分割して72に分けた「七十二候」をご紹介しています。

大暑


二十四節気は、7月23日から8月6日まで「大きい」に「暑い」と書いて「大暑(たいしょ)」、1年で最も暑さの厳しい頃。

暦便覧には、「暑気いたりつまりたるゆえんなれば也」と書かれています。

暑さが極限に達するという意味ですが、今年は、大暑を前にすでに暑さに参っている方も多いかもしれませんね。

桐始結花(きり はじめて はなをむすぶ)

七十二候は、7月23日から27日まで大暑の初候「桐始結花(きり はじめて はなをむすぶ)」、春から初夏に咲いた桐の花が実を結び始める頃です。

「実を結ぶ」ではなく「花を結ぶ」という表現はちょっと不思議ですが、この実を結ぶ時期に、来年の春に咲く花の蕾ができるからだとも言われています。
鳳凰がとまる高貴な木とされている桐。

一番暑い大暑の頃の七十二候にしては、涼し気な感じがしますね。

土潤溽暑(つちうるおうて むしあつし)


28日から8月1日までは次候「土潤溽暑(つちうるおうて むしあつし)」、土が湿って蒸し暑くなる時期。

強い日差しで温められた地面から、ムシムシとした熱気が伝わってくるようです。

大雨時行(たいう ときどきにふる)


そして8月2日から6日までは、大暑の末候「大雨時行(たいう ときどきにふる)」

近年では、夕立のように風情のあるものではなく、被害が出るほどの豪雨が多くなっています。

夏休みのシーズン、お出かけの際にはお天気も忘れずにチェックしたいですね。


「夏の土用」


今週は、7月20日から8月6日までの「夏の土用」の話題です。

春夏秋冬それぞれに土用がありますが、やはり夏が一番有名ですね。

中国から伝わった陰陽五行説をもとに、立春、立夏、立秋、立冬の前の約18日間、季節の変わり目が「土用」とされています。

「土用」とは「土旺用事」の略で、「土の気が旺盛な時期」を表しています。


暦の上では、夏の土用は一番暑い時期。

夏バテしないように体を気遣うことが大切とされていました。

現代では、梅雨明けの時期と重なって、本格的に暑くなってきますので、やはり体調を整えることが大切です。


夏バテの予防にはスタミナのつくもの、ということで鰻を食べる風習のある「土用丑の日」ですが、今では「土用丑の日」=「鰻を食べる日」というくらい、鰻のイメージが定着しています。

2022年の夏の土用丑の日は、7月23日と8月4日。

今年は土用の間に丑の日が2回あり、2回目は「二の丑」と呼ばれています。

鰻の栄養価

鰻が夏バテ予防にいいという理由は、その栄養価にあります。

EPAやDHAのようなオメガ3系不飽和脂肪酸といわれる良質な油、粘膜や皮膚を健康に保ち免疫にも関係するビタミンA、エネルギー代謝や疲労回復に関わるビタミンB、骨の代謝や免疫に関わるビタミンD、抗酸化作用のあるビタミンEなど、この時期に摂りたい栄養素が豊富に含まれているのです。

蒲焼やうな重だとタレ・ご飯のカロリーが気になる時や、さっぱり食べたい時には、わさび醤油で食べる白焼や、胡瓜と鰻の酢の物「うざく」もお勧めです。

鰻には欠かせない薬味「山椒」も、食欲増進や消化促進の作用がありますので、暑い夏にはぴったりですね。

暑さで食欲が落ちやすい方はぜひお試しください。

《コーナー②》
引き続き「土用」の話題です。

土用に食べると良いもの

夏の土用は丑の日に「う」のつくものを食べるとよいとされていますが、春・秋・冬の土用にもそれぞれ食べるとよいものがあるんです。

これも、五行説に由来しています。

全てのものを「木火土金水(もく・か・ど・ごん・すい)の五元素に分類する五行説では、春・夏・秋・冬はそれぞれ、木・火・金・水が当てられていて、色もそれぞれ、青・赤・白・黒となっています。

春は木で青、夏は火で赤、秋は金で白、冬は水で黒となります。

夏は火に属しているので、暑い夏を乗り切るためには夏・火の反対に当たる冬・水の力を利用するのがよいという考え方です。


夏の土用の期間は、旧暦の6月「未(ひつじ)の月」にあたりますので、反対になるのは12月「丑の月」。

ここから「丑」の「う」を字とって、「う」のつくものを食べると良いと言われるようになりました。

鰻以外では、梅干し、瓜、うどんなどがありますね。

色に注目してみると、夏の色は赤ですから、反対に当たるのは、冬の黒。

このことから、夏の土用には黒い物を食べるのもよいとされています。

黒い食べ物といえば、海苔、昆布、きくらげ、しいたけ、黒ゴマなどでしょうか。

鰻以外?


夏の土用には、丑の日の鰻以外にもいろいろな風習がありますよ。

食べ物では、「土用蜆(しじみ)」や「土用餅」。

蜆は、疲労回復や飲み過ぎた時の肝臓のサポートで現代ではサプリメントにもなっていますが、昔から「土用蜆は腹薬」と言われるほど、体に良いとされていました。

蜆の栄養成分には、アミノ酸、ビタミンB群、カルシウム、タウリンなどがありますので、夏バテで食欲がわかない時の栄養補給にも良さそうですね。

とにかく暑い時期ですから、暑気中りを防ぐための方法がいろいろあったようです。

土用灸


「土用灸」といって、夏の土用にお灸をすえると他の時期より効くとか、土用丑の日にお風呂に入ると病気をしないという「丑湯」なんていう習慣もあったそうですよ。

ドクダミや、ヨモギ、桃の葉などの薬草を入れて入る丑湯は、現代でも取り入れるとよさそうですよね。

冷房が強い場所にいると、夏でも冷えによる不調が起こりやすくなりますから、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるのがおすすめです。

暑いとシャワーだけで済ませてしまうことも増えますが、丑湯をまねて、ゆっくりお湯に浸かって疲れを癒す土用丑の日もいいのではないでしょうか。


先週お届けした「人間ドックの日」の話題では、船と同じように人間も点検やメンテナンスが大切であるということをお伝えしました。

昔ながらの習慣にも、毎日の健康維持のヒントがたくさんありそうですね。

鰻だけでなく、「季節の変わり目に体調を気遣ってメンテナンスする習慣」として、土用が現代にも定着するといいなぁと思います。

鰻を見たら、思い出してくださいね。


産業医 櫻庭千穂
「食とココロの処方箋」レインボータウンFM

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