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【まさかの優勝、自分が】奥三河パワートレイル2019

レッドブルのスタート・ゴールゲートで印象深いトレイルメジャーレースに初参戦。同行はランナーズの平阪氏と社外で交流のある世界的な女性マイルランナーの夏目氏。

前日の土曜日から出発し、日曜の早朝レースに備える。夏目氏は国内のトレイルロングレースで入賞歴が数多くあり、100キロ以上の山の専門家と呼べるかもしれない。国外のレースにも参戦しており、つい先日の香港でのレースでも見事入賞しているツワモノランナー。同じ社外ランニングチームに在籍している関係で同行する事になった。行きの車内で夏目語録で盛り上がる。「どこかに痛みがあった方が速く走れる」これを聞いて大笑い。さすが世界のマイルランナー。

受付を終え、前日は新城市の宿に宿泊。朝6時スタートで、宿からスタート地点が遠く、早朝バス移動があるので、1時に目覚める予定。9時に消灯したが、一睡も出来ず。バスに乗りこみ1時間半、バスではグッスリ眠る事ができた。そして、1,000人弱のランナーで賑わうスタート位置へ。

朝6時スタートの号砲。当レースコースは前半35キロは下り基調の走れるコースで、後半35キロはアップダウンの繰り返しで間に急登箇所が何回も現れるコース。70キロレースということもあり、当然ながら前半とばしてしまうと後半潰れる事が予想される。ゆっくりと走り出したいと思いながらもある程度自分が何番目くらいを走ってるかは把握しときたい。周りを伺いながら走り、20人くらいの集団の最後方に付ける。この集団に有名なトップランナーが全て集約されていた。最初の登りはそんなに急じゃなく、元気な内は走れる斜度。しかし、先頭ランナーが歩いているので、みんな倣って歩く。みんな自重しているなと思った。そのまま下りのアスファルト林道へ。下りであるが、そこまで速くない。トップを行く2人はしゃべりながら走っている。ここらへんで、周りは抑えすぎではなかろうかと思い出す。そろそろ我慢出来ず、一気に先頭へ出てみる。とりあえずこのビッグレースで先頭になったと一時的な満足感を得る。後ろをみると、1人抜け出したから、トップで喋っていた2人も喋るのをやめ、集団がばらけた。無名ランナーがトップランナー達に駆け引きを仕掛けた形。追ってくるランナーの顔色が変わったように思える。5キロほど進んで、レースが始まった気がした。

そのまま12キロ地点の第一エイド到達。1,000人弱いるランナーの1番のり。目立っていた。ここではキンキンに冷えたパイナップルを一口食べて通過。後ろを振り返ると等間隔でランナーが続く。林道の登りに入り、後ろを振り返ると去年の比叡山50マイルの優勝者の小寺さんが付いていた。その時30分ほどの差をつけられて負けたので、その内抜かれるんだろうなぁと思いながら進む。風車が設置された開けた高原に出る。ここで振り返ると小寺さんではなく、STY3位(僕16位)だった町田さんが後ろにいた。町田さんには伊豆トレイルでも25分ほど負けているので、またその内追い抜かれるんだろうなと思いながらも先を急ぐ。

21キロあたりの第二エイド到達。ここでもトップ通過。レッドブルを飲ませてもらう。後続の姿はパッと見えないが、すぐ迫っていそう。コースディレクターの石川弘樹さんが車で横付けされて声をかけた。ここからは下りの林道が10キロ弱続く。ここで飛ばしたら絶対バテると思いながら、トップをキープしたいと思ってキロ4を切って下っていく。後続と少し差はあるが、30秒差もないだろう。ずっと見える位置で追いかけられてる感じ。下りもそろそろ飽きてきて、ふっと考える。これは前を走らされているのではないだろうかと。現実、差を広げられそうで広がらない。不安なまま36キロの第3エイドに先頭をキープして到達。

いよいよ暑くなってきて、第3エイドで水分を補充。ここまでの36キロで持っていったスポーツドリンク500㎜も使い切らなかった。我ながら何て燃費の良い走り。ただここからはタフな山岳区間に入るため、多めに水分を補充する。後続は2人、ほぼ同時にエイドを出発。いよいよ追いつかれ、1人には抜かれた。抜かれたランナーは、黒河さんというランナー。こちらもスタートリストから注目していた人。最近大きな大会でも入賞しているし、強豪集う前回の大紀町シーサイドトレイルという大会でも優勝していた。SNSから奥三河パワートレイルに黒河さんが出場するのは事前から知っていた。トレイル登りに入っていくが、速い。ついていくのも割としんどいが、ここで離されたくなかった。もう1人迫っていた町田さんは少し僕らからはこの時離れた。黒河さんとある程度並走しながら、足つりそうなんで先行って下さいと話しかけられる。お!と思ったのもつかの間、全然そんな素振りはなく、急登に入ると逆に離されてしまう。くそー、嘘だったのか、駆け引きだったのかととても残念だった。コースは崖のような岩場のゴツゴツした登りも出てきて、トレイルランというよりかはスカイランニングに近い。何回繰り返されるのかと思うほどの急登アップダウンの連続。次のエイドに到達する頃にだいぶ消耗することに。

47キロ地点第4エイド到着。第3エイドまでは楽々来れたが、第3エイドから第4までは相当疲弊した。先をいく黒河さんの姿なく、既に出発した模様。ここのエイドでは派手に選手の名前を呼んで盛り上げてくれる。しし汁をいただき、水分補給してすぐ出発するも、到着しました町田選手ーとすぐアナウンスがあった。エイドを出てすぐ仮設トイレに行き、その後靴紐を締め直す。この間で町田さんに抜かれ、3位に陥落。町田さんについていこうとするも、林道の登りで少し離されてしまう。やはり実績のあるランナーはここからが強いのかとガッカリする。ここからの区間もタフなアップダウンの繰り返し。急登は相変わらず息も絶え絶え登り続ける。気を抜いたらフラフラで倒れてしまいそうだ。しかし、前には町田さんの姿を見える位置で捉えられている。一歩一歩確実に登っていく、もはや順位がどうよりも完走出来ればいいと思えてくるほどキツかった。町田さんも疲れている。その証拠に追いつく事ができた。町田さんが足終わっているので、先行って下さいと言った。いやいや、さっきの黒河さんの件があるので、信じませんよと。とりあえず前を行かせてもらい、追いつかれないように頑張って進む。振り返ると町田さんの姿は見えないので一安心。急な登りがあれば、町田さんを離せることがこの時わかった。

55キロの第5エイド到着。ここで味噌汁とバナナをいただき、水分を補充。水だけは切らしてはいけない。水さえあれば、まだ残っている手持ちの食べ物・ジェルでエネルギー切れは防げる。ここで前をいく黒河さんとの差を聞いてみる事に。2分前くらいに通過したよと。2分!これは逆転できる!メンタルが復活した。足もまだまだ残せている。出し切るまで出し切ろうと思い、スパートする。スパートとはいえ、最初の力を抜いた走りより絶対遅い。ここからの区間もまだまだ急登アップダウンがあり、登りはもうヘロヘロ。しかし平地では十分走れている。これは追いつけるなと思いながらも、全然背中が見えない。いよいよ最後の頂上、鳳来寺山へも到達。前は見えないので、これは厳しいかもしれないと思い、再び目標を完走に切り替える。もう2位を守れるなら十分満足。このビッグレースで2位は嬉しい。あとはアクシデントなく、完走したい。しかし、町田さんから距離を離せていても、前回チャンピオンの伊藤さんという方は前半かなり抑えて、後半上げてくるため、油断は出来ない。飛ばせるだけ飛ばさないと。

最後のチェックポイント鳳来寺到着。ここまでくればもう登りはほぼない。完走は大丈夫そうである。あとは2位キープとどれくらいのゴールタイムか。ここで7時間を経過したくらいなので、ゴールタイムは7時間半か。去年の優勝タイムも上回れるかもなので、出来すぎである。さぁ、ゴールを目指すだけと思っていた先に黒河さんがパワーダウンした状態で、姿が見えた。歩いている。どうしたんですか?と聞くとハンガーノックと小声で一言。今回は駆け引きではなく、本当に苦しそうだった。遠慮なく抜かせてもらう。境内を出ると登りがあった。スタッフの人が最後の登りですと声を掛けてもらう。今再び先頭の位置を取り返せたと思うと、こんな登りも余裕である。むしろコースがキツい方が黒河さんや町田さんを離せると思うとやる気になる。そして登りもあっさり登りきり、後は3キロほど下るだけ。快適に下っていき、一部キロ4を切って下っていけた。後ろを振り返っても後続のランナーは来ない。ここではじめて優勝を意識する。こんなビッグレースで優勝は嬉しいし、信じられない。しかし、こんな無名のランナーが勝っていいのだろうかと気をつかう一面も。山を下り、川を渡り、ゴール地点の湯谷大駐車場へ。

レッドブルのゴールゲートが見えるとアナウンスが。先頭のランナーが来ましたゼッケン30番の板垣選手です。まだまだ足取りは軽いようです。とアナウンスしてもらい、先日の六甲縦走トレイルランの優勝の時と比べ物にならないスタッフや関係者の人たちとコースディレクターの石川弘樹さんに派手に迎えられた。大勢の有名ランナー達から逃げ切った、長く過酷な後半のコースだった。多くの人に注目されてゴールテープを切るのは本当やり切ったと今までの努力が報われた感じがした。石川弘樹さんに色々とレースを振り返ってのインタビューをしてもらった。とても貴重な経験。その6〜7分後、2位のランナーが近づいてきたとアナウンスがあり、2位は去年のチャンピオン伊藤さんが来た。すぐ後の3位に黒河さんだった。伊藤さんはやはり、後半だいぶ迫られていたようだ。あと5キロくらい距離が長いレースなら危なかった。少し開いて4位に町田さんがゴール。町田さんはだいぶ疲れてゴールだった。

ゴール後お風呂に入り、サッパリして男子表彰式があった。立派なステージに、立派な表彰台。こんな立派な表彰台の1番高い位置に立てるのは、有名ランナーを差し置いてこんな無名ランナーがいいのかなと気をつかう。今後は堂々としていられるようになりたい。なっていいのか分からないが…。優勝トロフィーとしてチェーンソー彫りのでっかいイノシシの木像をいただけた。最近割と賞状コレクターになってきたが、このイノシシは家宝にしたいくらい特別なものになった。その後同行の世界の夏目さんと平阪氏がゴール。世界の夏目さんは女子総合5位で入賞を果たした。最初から後半にかけて順位を上げたのだから凄い。ショートではランナーズの棚田さんが勝つだろうが、ロングではやはり夏目さんが異彩を放つ。平阪氏も予定ゴールタイムよりも早くゴールしていたので、この完走が相当難しいコースで走り切るのはやはり変態の部類。全体の完走率も60パーセント台。女子の表彰式も見守り、バスに乗って自車の置いた駐車場へ。

レース後その日のうちの帰りは、しんどいが奥三河は新東名が出来て割と気軽に行ける距離・時間になっている。

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