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総合的な学習の時間〜7年目の考察〜 2 探究的な見方・考え方編

1 はじめに

 総合的な学習の時間(以下総合と表記)も他の教科と同じように時間割に組み込まれてはいますが、他の教科と決定的に違うところがあります。
 その一つが「教科書がない」という点。
 それによって、授業の組み立てや単元デザインがイメージしにくい教科とも言えます。
 この記事では、総合的な学習の時間の捉え方、実践例を書いていこうと思います。
 今回は第二回「探究的な見方・考え方編」です。


2 そもそも「見方・考え方」って?

「見方・考え方」という言葉は学習指導要領の中でもよくよく使われる言葉です。

 国語では、「言葉のよる見方・考え方」が出てきますし、    
 理科では、「理科的な見方・考え方」が出てきます。

 「見方・考え方」を働かせて

よく目にしたり、耳にしたりすることがある「見方・考え方」です。

 「見方・考え方」を働かせるということは、ズバリどういうことなのか。

見方・考え方のイメージは「レンズ」です。

これも学習指導要領解説を参考に考えていきます。

 深い学びの鍵として「見方・考え方」を働かせることが重要になること。
 各教科等の「見方・考え方」は、「どのような視点で物事を捉え、どのよう な考え方で思考していくのか」というその教科等ならではの物事を捉える視点や考え方である。
 各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものであり、教科等の学習と社会をつなぐものであることから、児童生徒が学習や人生において「見方・考え方」を自在に働かせることができるようにすることにこそ、教師の専門性が発揮されることが求められること。

『小学校学習指導要領解説編 総合的な学習の時間』.2019.文部科学省

「教科ならではの物事を捉える視点」こそが「見方・考え方」であり、虫眼鏡のレンズ的な役割を果たしています。

 例えば、田植えを体験する活動をしたとしましょう。

 国語の「見方・考え方」レンズを通せば、どうやって今日の体験を日記にしようかなあ、と考えます。

 言葉のレンズをかけて、「言葉に焦点を当てた」からです。

 理科の「見方・考え方」レンズを通せば、田んぼに住む生き物は何がいるかなあ、と考えます。

 理科のレンズをかけて、「理科に焦点を当てたからです。」

 では総合では…?
 探究的な見方・考え方とは・・・?


3 探究的な見方・考え方

 学習指導要領解説には下のように書かれています。

探究のプロセスを支えるのが探究的な見方・考え方である。
探究的な見方・考え方には,二つの要素が含まれる。

『小学校学習指導要領解説編 総合的な学習の時間』.2019.文部科学省

どうやら二つ大切なことがあるらしい。
一つ目は、

 一つは,各教科等における見方・考え方を総合的に働かせるということである。
 各教科等の学習においては、その教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら、教科等の目標に示す資質・能力の育成を目指すが、総合的な学習の時間における学習では、各教科等の特質に応じた見方・考え方を、探究的な学習の過程において、適宜必要に応じて総合的に活用する。

「適宜必要に応じて」各教科等の「見方・考え方」を使うということに尽きます。

各教科では、1つの分野のレンズを手に持って学びに向かいます。

総合では、各教科のレンズを、時と場合によって使い分けます。

 なぜなら、総合で扱う課題は、実社会・実生活における問題を扱うからです。

 日常生活の中では、そもそもどの教科等の特質に応じた視点や捉え方で考えればよいか決まっていません。


 何なら日常的な問題に対しては、意識すらせずに使い分けているのかもしれません。 

 扱う対象や解決しようとする方向性などに応じて、意識的に各教科のレンズを活用できるようになることが大切です。

 教科横断型的なイメージですね。
 生活にある課題を設定して解決に向かうと、各教科の「見方・考え方」を自然と働かせることになります。
 大々的に教科を巻き込まなくても、教科の「見方・考え方」は取り入れているはずです。

一つ目はこんな感じ。
二つ目は、

 二つは、総合的な学習の時間に固有な見方・考え方を働かせることである。
 それは、特定の教科等の視点だけで捉えきれない広範な事象を、多様な角度から俯瞰して捉えることであり、また、課題の探究を通して自己の生き方を問い続けるという、総合的な学習の時間に特有の物事を捉える視点や考え方である。
 本解説第3章で説明するように、探究課題は、一つの決まった正しい答えがあるわけでなく、様々な教科等で学んだ見方・考え方を総合的に活用しながら,様々な角度から捉え、考えることができるものであることが求められる。
 そして、課題の解決により、また新たな課題を見付けるということを繰り返していく中で、自分の生き方も問い続けていくことになる。

むむ。
長い引用になってしまいました。

しかし、大切なところを抜き出すと
「総合的な学習の時間固有の見方・考え方」は、

①各教科の「見方・考え方」以外の領域もカバーするもの

助っ人外国人的な。

②自己の生き方を問い続けること

最終的には自分の生き方に返ってくる的な。

そんなレンズが「総合的な学習の時間固有の見方・考え方」であり、「探究的な見方・考え方」となります。

抽象的な話になってしまったので、少しだけ具体的に書いてみようと思います。


4 見方・考え方を総合で使うこと(例え)

「地元のブランド米の良さを広めたい。」という課題を立てて総合をスタートさせたとします。

計画を進めて行くと、
「地元のブランド米のことを地域の人はどう思っているのか」を調べるためにアンケート調査をします。

その際に、

プロジェクトの概要を伝えるとには、言葉のレンズをかけて、「自分たちの目的を伝えるためにどんな言葉を使おうか」と考える。

アンケートを集計するときには、数学のレンズをかけて、「どのグラフにしたら整理しやすいか」と考える。

さらに、出来上がったグラフをみたときには、社会のレンズをかけて「グラフから読み取れること読み取れないこと」を考える。

このように、子どもたちは無意識のうちに色々なレンズをかけて総合を進めていくだろうと思います。

さらに、こうした見方・考え方を働かせることで、「自分はアンケートを作ることが楽しい」か「自分はパンレットを作ることが楽しい」自分の楽しさ、強みがわかることがあります。

こうした気づきを教師が価値づけることで、自己についての認識が変わることもあると思います。

自分の得意、苦手がわかる。

つまり、「自分のかたち」がわかることにつながります。

さらに、総合は学校外にいる(ある)「本物」にも触れるチャンスが多くあります。

「本物」触れることによって、憧れをもつこともあります。
そこから、自己のキャリアに影響を与えることにもつながります。

こうしたことが「自己の生き方を問い続けること」にあたるとおもいます。

5 終わりに

「見方・考え方」は便利な言葉ですが、クッキリしない言葉です。
どの「レンズ」を子どもが使いながら活動してるのかな?と思いながら子どもの活動を見ると
「今、算数的な考え方ができてるなあ」
「今、社会的の見方を使っているぞ」
と教師の声かけも変わってくると思います。

さて、この「探究的な見方・考え方」は「探究のプロセス」を支えるものとして位置付けられています。

次回はこの「探究のプロセス」とは何かを書こうと思います。

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