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#今週読んだマンガ 2024/7/1~14

はじめましての方ははじめまして。
「バーチャル書店員」という肩書きで、1巻が発売されたばかりのマンガの紹介動画を投稿している紙屋凪と申します。

毎週月~金に作品ごとの紹介動画を計5本、土曜にはその週に発売された1巻を10作品分まとめて紹介する動画を投稿しているのですが、動画だと新作の紹介ばっかりでそれ以外のマンガの話が全然できてないじゃん!と思ったので、この1週間で読んで面白かったマンガをこのnoteで紹介できればと思います。
その週に発売された単行本の話が中心なので、本屋で新刊コーナーに立ち寄る感覚で読んで頂けると嬉しいです。


『あくまでクジャクの話です。』2巻

「男らしさがない」という理由でフラレた高校教師が出会った、"生物学部"の部長を名乗る女子生徒。彼女が持ち出す生物学の知識で恋愛のアレコレを読み解く”生物学ラブコメ”。

1巻の展開からなんやかんやあって問題のある生徒の指導を請け負うことになった先生、ということで2巻の前半は恋愛とは少し離れてシンプルに勉強になる内容だなぁと思っていたら、後半で先生の同僚の話になった途端にしっかりネタをぶっ込んでくる(笑)。本当ならだいぶ暴走気味な女子生徒の言動も、生物学の知識がもっともらしく聞こえるから自然な流れに見えてしまうのがズルい。
そして3巻では早くも先生のある"勘違い"が解消される様子。ここからラブコメ方向にガンガン進んでゆくのか、それともまだ焦らされるのか、正直かなり楽しみにしてます。

『チェルノブイリの祈り』2巻

ノーベル文学賞を受賞した著者が、1986年に発生した未曾有の原発事故に遭遇した人々へのインタビューを元に綴ったノンフィクション小説のコミカライズ作品。

この作品、というかおそらく著者のノンフィクションの特徴だと思われるのが、インタビューをして聞き取った当事者の声を可能な限りそのままの形で記していること。それは端的に現れているのが9話~10話で描かれた人々、そしてその最後に語られた言葉。彼らは決して何かを語りたかったわけではない、それでも彼らの声を著者が残し、そして現代の私たちがその声に触れることには意味があるはず。どうにか自分の中に感情として落とし込みながら、この作品を大切に読み進めていこうと思います。

『冷たくて 柔らか』3巻

同棲して2年の彼氏にフラれた直後、中学の頃の親友に20年振りに再開した女性。その再会が、自分の中で蓋をされていたはずの感情を呼び起こす。

かけがえのない存在だった親友との再会で、中学生だった当時の感情が再び湧き上がり、大人になった現在の感情と合わさって溢れてゆく、その揺れ動きがとても繊細に描かれていて心を揺さぶられます。しかし、そんな親友には20年の間に既婚者に。自分ではない"大切な人"が相手にいることを思い知らされ、その上で自分の感情と向き合わされる、読んでいて胸が締め付けられるような3巻でした。
正直、この2人が心の引っ掛かりを残すことなく幸せになる未来がまだ想像できていないのですが、3巻の引きから新たな波乱が生まれそうで、まだまだこの物語で心を乱されることになりそうです。

『大正忌憚魔女』3巻

大正時代の日本にたった1人やってきた小さな魔女。無知ゆえの偏見の目に晒されながらも、彼女は少しずつ周囲の人々と打ち解けてゆく。

魔女としては未熟ながらも、その一生懸命さと相手を思いやる心のおかげで少しずつ理解者を増やしてきた主人公。1巻の序盤は周囲の偏見から来る辛い描写も多かったですが、ようやく穏やかな、そして温かな日常が続いて、彼女の努力が報われるストーリーに癒やされます。
と思いきや、今巻の最後でまさに風雲急を告げる新キャラの登場。主人公自身の出自にも秘密が隠されていそうな新展開は少し辛い流れが舞い戻ってきそうだけど、それでもまた明るい日常が戻ってきてくれると信じています。

『ギャル弁 ー歌舞伎町の幽霊ー』3巻

昼間は法律事務所に勤めながら、夜になると歌舞伎町に繰り出して"無償で"声なき声を拾い上げる活動をする、そんなギャル弁護士・久語れいなの物語。

序盤からハードな描写はありつつも主人公のれいなのキャラクターで作品の雰囲気が明るくなるので、彼女が歌舞伎町で苦しむ人々を救ってゆく痛快な物語が続いてゆくのだと思っていました。しかし、今巻ではっきりと示されてしまいました、これは彼女が想像を絶する深い闇と立ち向かう姿を描くリーガルサスペンスなのだと。
今巻で描かれた彼女の”失敗”はそれぞれが自分の信じる正義を貫いた結果で、もはや避けることができなかったのかもしれない。それでもおそらく彼女は進むことを止めないし、ここまでの物語に触れてしまったからには彼女の行く末を見届けなければならないとも感じる。今思うと、タイトルに反してシリアス調で少し違和感のあった1巻の表紙にも納得がいく。是非この3巻までは騙されたと思って読んでみてほしい作品。

『東の森の魔女の庭』4巻

不思議な森の中に住む魔女、彼女の家には孫のような年齢の拾い子が2人とちょっと変わった3匹の獣が住んでいる。そんな彼女たちが織りなすハートフルファンタジー。

ちょっと気難しそうだけど拾い子である2人の面倒はちゃんと見る魔女、学問は優秀だけどだいぶ変わった性格に育った兄、学校で多くの友達を作って賑やかな日々を送る妹、そして彼らを取り巻く人たちがみんな個性的で、ほのぼのとした中にクスッとくる場面もあればそれぞれの人生のドラマも垣間見えたりして、まさに上質という言葉がピッタリなファンタジー作品です。
作者の越田うめさんは今作のような日常系のファンタジーや、過去作の『夢の直路を恋惑ふ』や現在連載中のもう1つの作品『龍神の娘』のようにドラマ性の高い作品など、多彩な作品を描きつつもどこか物語の芯のようなものは一貫しているように思える、唯一無二の作家性を持たれている方だと思うので、是非多くの方に注目して頂きたいマンガ家です。


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