「すし屋の隣が思い出せない」



自由律俳句とは、

五七五の定型俳句に対し、定型に縛られずに作られる俳句を言う。季題にとらわれず、感情の自由な律動を表現することに重きが置かれる。



最近「自由律俳句」とやらにはまっている。

きっかけは、かが屋というお笑いコンビの加賀さんと放送作家の白武ときおさんが、エロと自由律俳句を掛け合わせた「エロ自由律俳句」なるものを詠み、講評しあっている連載記事を見たこと。

それが以下の記事である。

「自由律俳句」がよく分からないという方、この記事を読んでいただければ多少どういうものなのかが分かると思うのでぜひ。


そもそもの「自由律俳句」とやらをよく知らない私からしたら「エロ自由律俳句」なんぞ奇妙な語呂の塊でしかなく、なんだその一昔前に流行った一発屋芸人のネタのような安っぽさはと思った。ただここでのエロ要素が、素人が足を踏み入れる理由として十分だった。


記事を読んでみると分かる通り、二人は実体験を交えとても生々しく詠んでいる。さらに「自由律俳句」という定型に縛られない故の言葉の並び方がよりリアリティを増幅させ、官能小説を読んでいるように思えた。

短文であるのに、これほどまでに状況や風景、人物の心情などを鮮明に想像出来るなんて。

新しい遊びを覚えた子供のようにワクワクした。


画像1


そして気付けば買ってしまっていた。

妄想文学の鬼才 せきしろ × お笑いの鬼才 又吉直樹 による『カキフライが無いなら来なかった』

こちらはエロ要素のない一般的な自由律俳句で、ただただ二人が詠んだ俳句を交互に並べているものである。時折、知らない街や物のモノクロ写真が出てきたり文の解説、それぞれのエッセイのようなものが書いてあったりと読みやすく面白い構成で作られていた。

毎晩の就寝前に少しずつ噛みしめながら読んでいる。


そんな自由律俳句に魅了された日から少しずつではあるものの、自分なりの自由律俳句をメモしてきました。

自由律俳句として成り立っているのかはさて置き、今日はそれらを詠んでみたいと思います。

温かい眼をご用意ください。


ーーーーーーーーーー

・挟まっているものだと思って読んでいた

・言ったよね言ってないって

・絶対に交差点ではなかった

・好感が持てないほうの白がきた

・丸くない物の丸いときを知っている


画像2

ーーーーーーーーーー

「行ったことない薬局に闘技場の風格」

生活をする上で必須とも言える薬局。住んでいる場所に一番近い薬局をよく利用することは必然的だが、時々、出先で寄らなくてはいけなかったりここでついでに寄っておいたほうが楽だ、という状況が訪れる。品数の多い薬局、よく利用するところであればどこに何があるかを把握しているので買い物はスムーズ。しかし行ったことない薬局となるとそれを把握できておらず、さらに会社や地域よっては置いてあるものが異なるので無駄にウロウロしてしまう。終いには嫌気がさし、買いたいものをいくつか買えずに店を出る。そんなことを想像するだけでも、行ったことのない薬局に足を踏み入れるというのは勇気と覚悟がいる。まさに、ジム決闘を挑む前のトレーナーのような面持ちになってしまう風格を備えている。

ーーーーーーーーーー

・明日やればいいと明日の自分

・誰もいないと喜んで入った店気付けば5人

・怖い顔して怒るあいつは字が汚いから

・コンビニ前の段差アイス片手にここは波打ち際

ーーーーーーーーーー

画像3

「すし屋の隣が思い出せない」

たまに行く回転寿司屋の隣の建物が取り壊され工事中になっていた。しかしなんの建物だったかが思い出せない。よく使う道沿いではあるものの、大半はその隣の回転寿司屋に気を取られ通り過ぎる。アパレル小売店、個人営業の古物屋、コンビニ、スーパー。どれも違う気がする。特に後者二つは。賑わう回転寿司屋を横目にぼんやりと佇んでいたところを想像すると、選挙事務所かなんかだろう。思い出せない建物の隣で美味しいお寿司を頬張りながら勝手に納得していた。

ーーーーーーーーーー

= 接客シリーズ =

「大きい袋を持った客には問う」

レジ袋が有料化され、客側としても店員側としても面倒だなと思う。私が働くところでは一人一枚までは無料として提供しているため基本は袋の有無を問わずに袋詰めをするのだが、分かりやすく大きい袋(レジ袋・エコバック)を持ったお客さんが来たときにはわざとレジ袋の有無を問うようにしている。ほとんどがそれを断りこちらの袋詰めの手間が省けるからだ。


「無言で掲げるICカードはデジタル紋所」

愛想のないサラリーマン、ツバの広いハットを深々と被ったマダム。我はあの水戸黄門ぞ、と言わんばかりの圧で掲げるICカードは誰もが平伏す現代版紋所のようだね。


画像4

ーーーーーーーーーー


以上、13個の句を詠んでみました。

やってみると案外難しいということもなく、日常に潜む皮肉や疑問を素直に切り取ってみるといいのかなと思いました。

一言ほどの短文だから足し算引き算を上手く使うと文の印象が変わって面白い。読み手に委ねる書き方が出来るのも楽しい。

解説がないものは読んでくれたあなたの想像力で背景を広げてみてください。


今回はテーマなく詠んでみましたが、次は「エロ自由律俳句」のように大まかな枠組みを決め詠んでみたいです。

たまにこうして「自由律俳句」を詠む記事をあげていきたいと思っているので、興味のある方はまた遊びに来てください。

それでは。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?