『25歳薫野穂のみ、仕事、やめます』
短大を卒業して、新卒で就職した職場を、今日やめた。
25歳、薫野穂のみ。
きっかけは、前から楽しみにしていた、大好きなバンドのライブの日に休みが取れなかったこと。
もちろんそんなのはきっかけ?引き金?に過ぎない。
就職して5年間、色々なことがあった。
例えば、お局ババアの新人イビリから始まる、職場内での孤立。
例えば、毎日のほんの少しのサービス残業。
例えば、お客からの理不尽なクレーム。
今思えば、5年もよく耐えたと思う。
けど、こんなことは世の中溢れていて、みーんなそれを耐えて日々働いているのだ。
そう思えばこそ、胃を痛めながらも毎朝出勤していたんだから。
でも、気がつけば口から出ていた言葉に、私は気付いてしまった。
『仕事、辞めます』
あー、私、辛かったんだな。
毎朝電車で音楽を聴く時、ライブの帰り道、ちょっといいディナーを食べる時、大好きな人にプレゼントを買う時、私はこの瞬間の為に頑張って働いてるんだと思った。
それなのに、その前に『仕事』が立ちはだかって、頭の中がぐちゃぐちゃになった。
私は、好きなことの為に働いていて、でも仕事をしないと好きなことが出来ない…でも、私はライブの為に最近は頑張ろうって思って、ほら、昨日挨拶をみんなに無視された時も、もうすぐライブがあるから頑張ろうって思ったのに、あれ?
私、何のために我慢してるんだろう。
『仕事、辞めます』
『は?何言ってるの?』
『その日休めないなら、私仕事辞めます。
私、働く為に生きてるんじゃないんです。
自分らしく生きる為に必要だから、働いてるんです。
なので…辞めます』
ぽかんとした顔をしたお局は、正直馬鹿っぽいなと思った。
その後、色々あって…もちろん散々なことをたくさん言われたけど、今日ようやく仕事を辞めた。
正直不安はすごくある。
でも、後悔はしてない。
『働く為に生きてるんじゃない』
あの日、自分が言ったことがダイレクトに自分の心に刺さって、やっと気付いた。
これまで考えないようにしていたけど、私は昨日まで、働く為に生きてた。
それが辛かった。
でも、違う。
他の人のことは知らないけど、私は生きる為に働くんだ。
好きなことを仕事にしなくてもいい。
ただ、自分らしく生きていく為に邪魔にならなければ、それで。
私にとって、働くってそういうことなんだ。
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