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のんびり、ゆっくり

何人かで集まってお喋りしているとき
私はどちらかというと聞き役に徹している方が多い。
立て板に水のごとく喋り通すことはできない。

じっと聞いているから、話の内容も結構覚えている。
傷付くことを言われると根に持ってしまうタイプ。

最近は人から酷いことを言われたら
それを言う側じゃなくてよかった、と思うと、少しだけ楽になれる。

私のゆっくりな喋り方は
確実に人を苛つかせてしまっている。

その証拠に、漫才のツッコミ担当のような
ちゃきちゃきした性格の人から苛めの標的にされることが多かった。

固まってしまい素早く言い返すことも出来ない。
頑張って反発したこともあったけれど、やっぱり勝てない。
ゆっくりのんびりな喋り方、いや、性格は損をする・・・

だから、のんびりの性格が得する日が来るなんて!想像もしていなかった。

「酒井さんにお願いしたいんだって」

「・・・私ですか?」

これがキャバクラや風俗だったら人気No.1になれるのに。
私がテーブルにつくのは、いや、訪問するのはお年寄りのお家。
訪問介護というお仕事。

訪問介護とは、利用者が在宅のまま自立した日常生活が出来るよう
ホームヘルパーなどが利用者宅を訪問して
介助面における身体介護や家事面における生活援助を行うサービスのこと。

営業事務の仕事とダブルワークで働き始めたのが約5年前。

お父さんは胃がんで5年前に亡くなったのだけど
入院していたときにあるボランティアをしていた
おばあちゃんに出会ったことが介護の仕事を始めたきっかけかな。

その75歳のおばあちゃんは
岐阜県から自分で運転して東北の田舎町の病院に来て
患者さんの足浴やマッサージをしたり
身の周りのお世話をするボランティアをしていた。
もちろん、お父さんもとてもお世話になった。
とても生半可な気持ちでできることじゃない。

そのおばあちゃんは「来月からインドに行くの」と
本当にインドに行ってしまって、それっきり会うことはなかった。

おばあちゃんに、恩返しは出来なかったけれど
もし、私が全く関係のない第三者に
恩を受け渡すことはできるんじゃないかな。
恩返しならぬ恩送り、恩のバトンリレー。
この世界を優しさで包む、スタート地点になれたら嬉しい。

そんな考えから始めた介護の仕事だったけれど
私ののんびりした喋り方がお年寄りに受けがいいのも初めて知った。

「置かれた場所で、咲かなくていい。花を咲かせられる場所に移りなさい」

いやいや違うでしょ?
置かれた場所で咲きなさい、だよと思っていたけれど
適材適所という言葉があるように
自分のコンプレックスを強みに変えられる環境で
働くのも悪いことではないなぁ。

あっ、もうそろそろ仕事に行く時間!
じゃぁ、またね!!













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