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『6月9日』はロックの日だったね

6月9日は『ロックの日』ということで
音楽に関するさまざまなイベントが各地で開催されていた。

もちろんラジオでも特集番組が組まれて
王道のBON JOVIのIt's My Lifeや
私よりちょっと上の世代のBOØWYのB・BLUEなど
みんな何処かで一度は耳にしたことがある
音楽が流れていて懐かしいと思った。


今から9か月前のこと。

「渡したいものがあるの」

バッグの中から青いリボンが付いた白い袋を取り出して
両手ではい、と陽ちゃんに差し出した。

「え?何?開けていい?」

「うん」

ベリーの香りのハンドクリームとパイナップルの香りのリップクリーム。
どちらもスヌーピーの絵が描かれている。

「この前、陽ちゃんと手を繫いだとき
手のひらがすごく硬くてカサカサしていたから」

「ありがとう。すごい可愛い」

陽ちゃんは嬉しそうにハンドクリームを手の甲に塗った。

「10月2日は誕生日なんだ。ちょっと早めのプレゼント。
ありがとう、すごく嬉しい」

「10月2日が誕生日なの?知ってる?その日はスヌーピーの日なの
スヌーピーの日が誕生日なんて、陽ちゃんにぴったりだね」

陽ちゃんは服やバッグ、ハンカチやスマホケースにも
スヌーピーを選ぶ程の大のスヌーピー好き。
良かった、喜んでもらえて。
微笑んでミルクティーのカップに口を付けた。

「なぎちゃんの誕生日はいつ?」

「6月9日なの」

「じゃぁ、ロックの日だね」

笑ってうんと頷いた。
初めて教室の外で会ったときのことを今でもはっきりと覚えている。

6月9日と日付が変わった途端に
「お誕生日おめでとう!」のLINEが来るなんて
期待していなかったけれど、事ある毎に思い出しLINEを開いた。
期待しない、、なのに、何も届いていない事にがっかりした。

今までLINEのプロフィールに誕生日を登録したことはなかったのに
誕生日の2週間前に公開した。

ほら、「今日6月9日は〇〇さんの誕生日です。
一緒にお祝いしましょう。」と表示されるでしょう?

陽ちゃんがそれを見て、おめでとう、と言ってくれるかもと思った。

一日中待った。
一日千秋という言葉がこんなにも似合う日を初めて知った。
日付が10日に変わってもLINEは無かった。

「ロックの日だね」

陽ちゃんは自分でそう言ったことも忘れてしまったのかな。。。
がっかり、、とういうより悲しかった。
陽ちゃんが私を思い出して、おめでとう、と言ってくれたら嬉しいのに、、

ふと、私は相手にこうして欲しい、こうしてちょうだい、と
自分の気持ちを押し付ける事しかしていないなぁと思った。

そして、相手から与えられないと、期待外れだとひとりでがっかりする。
がかっかりするのは自分自身にだ。
陽ちゃんは何も悪くない、悪いのは勝手に期待した自分自身。。。

それに、相手から優しい言葉が欲しいのなら
自分から優しい言葉をかけるべき。。。

だからね、10月2日の陽ちゃんの誕生日には既読無視でも構わないから
「お誕生日おめでとう」とメッセージを送ろうと思うんだ。
スヌーピーのスタンプと一緒にね。









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