僕が「周回遅れのグリーンラッシュはいらない」と書いた意味

先日、厚労省が大麻取締法改正に関するパブリックコメントの受付けを開始した。その中で、カンナビノイド製品に含まれるTHC濃度の閾値案も示された。低い濃度であろうことは予想していたが、その案をみて、あまりの低さに唖然とした。その後、やや感情的にではあるが、感じることをXに投稿した。
その文末に書いたことばが、「周回遅れのグリーンラッシュなんていらない」という一文だった。
これに対して、「どのような意味で書いたのか、真意を知りたい」という問いかけがあったので、ここに簡単にではあるが書いてみたいと思う。

ご存じの通り、「グリーンラッシュ」とは、アメリカの大麻規制緩和運動によって起こった、大きな経済効果のことだ。
当時のアメリカ連邦法では大麻は厳しく規制されていたが、CBDがてんかんに効くということから、規制緩和を求める運動家たちが中心となって、これを梃子に運動を展開していった。そしてこの流れが、大きな経済効果を生み、税収が増え、教育や福祉に対しての予算にも充てられることで、多くのアメリカ国民が、大麻が社会的に役立つものだという認識をもった。その結果、国際社会をも動かし、こんにちの大麻を巡る状況になっている。
これが「グリーンラッシュ」とよばれる経済効果と社会変革だ。
小児てんかんのシャーロットちゃんの痙攣発作がCBDによって治まった様子が、CNNの番組が全米で放映されたのが2013年。あれから11年が経過している。
その間、世界各地で起きる「グリーンラッシュ」が、少しずつ変わってきているように見える。

例えばタイは、伝統医療の復活を掲げて大麻の規制緩和を始めたが、その本質的な目的は、観光による経済効果だろう。既にグリーンラッシュを経験した欧米各国が入り込んでいることも、アメリカで起きたグリーンラッシュとは様子が異なる。
しかしタイ政府は、国民と国益を守るために大麻に関する政策を進めており、試行錯誤を繰り返しているが、タイらしく遂行しているようだ。タイ社会は、大麻のことをよく知っている。

では、日本はどうなのだろう。
本当のグリーンラッシュは起きるのだろうか?
法改正のタイミングで、爆発的に市場が拡大し社会変革がおきるほどの、それによる税収が増えて、目的税のように福祉や教育に充てることができるのだろうか?

残念ながら現実的には、それは難しいのではないかと僕は思う。
なぜならば、日本の社会はあまりにも大麻に対する経験が少ないからだ。
それが、アメリカやカナダやタイとの決定的な違いだ。

僕が、日本の大麻に対する価値観に縛られてしまっているのではなく、日本社会が大麻にたいして無知ゆえにこのような状況になっているということだ。

僕は、麻の活動をしている誰かを邪魔するつもりもなく、現実をみて発言しているつもりだ。

日本が法的に非犯罪化を達成するのには、10年はかかると僕は考えている。
人権的にも、一刻も早く、非犯罪化を法的に実現させる必要があるのは当然である。
しかし、日本全体が大麻を理解して、大麻に寛容になっていくことのほうが大切なことだし、非犯罪化などの法改正以前に、それを現実化することは可能だと思っている。
そんなことから、日本の実質的な非犯罪化は、徐々に静かに達成していくのではないかと僕は思う。

まだ先は長い。だから、アメリカのようなグリーンラッシュじゃなくても、日本らしい落ち着いて持続できるような経済効果の方が現実的ではないのかと今は考えている。

そんなことから僕は、周回遅れのグリーンラッシュなどはいらないと思っているのである。


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