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医療大麻について、厚生労働省大臣官房長との対話

はじめに

令和3年1月13日
厚生労働省は大麻取締法に使用罪を導入する検討を始めると発表した。
個人的には使用罪の導入による事実上の厳罰化には反対である。
しかし、戦後73年間にわたり、国がこの法律について一度も科学的検証を行わず向き合ってこなかったことを考えると、一歩前進したとも捉えることができる。
闇雲に使用罪反対だけを叫ぶのではなく、今後、この法律をどのように改正していけばいいのか、どうすれば、大麻の有効性を取り入れた豊かな人生をおくることができるのかについて正々堂々と議論することが大切だと思う。
そんなことから、大麻の問題について平成25年に厚生労働省大臣官房長の二川一男氏(当時)をはじめとする関係者の皆さんに医療大麻についてご説明をしたレジュメを掲載する。
今回の議論の何かの参考になればと思う。
尚、役職は当時のものであり、敬称は略させて頂いた。

医療大麻説明会合についての内容報告
    平成25年12月25日  文責:長吉秀夫

経緯:
平成25年12月10日に、有志一同が民主党国会対策委員長・松原仁衆議院議員にお会いし、医療大麻の有用性と大麻取締法の問題点についてお伝えしたところ、管轄官庁である厚生労働省への説明が必要であろうという判断により、今回の会合が行なわれた。

日時:平成25年12月25日 午前10時30分

場所:衆議院第二議員会館 709号 松原仁事務所

出席者(敬称略):
厚生労働省大臣官房長 二川一男
厚生労働省 医薬食品局 監視指導・麻薬対策課 監視指導室長 稻川武宣
厚生労働省 医薬食品局 監視指導・麻薬対策課 課長補佐 渕岡学
大麻草検証委員会 根岸浩和
作家 長吉秀夫
松原仁事務所 関根秘書

内容概略:
事前にお渡ししていた書籍「大麻入門」(長吉秀夫著・幻冬舎新書)及び、今回持参した「NPO法人医療大麻を考える会 会報4号」を参考資料として、「医療大麻とは何か?」「世界の現状」「日本における現状と課題」を中心に説明し、意見交換を行なった。


先ず、長吉が以下の説明を行なった。
1)大麻とは麻のことであり、日本では繊維や食料として古くから使用されていた。
2)神社のお札は「神宮大麻」と呼び、以前は麻の穂を配布していた。その他、日本の風習に根付いていた。
3)第二次大戦の敗戦による新法によって、大麻は厳しく取締まられるようになった。
4)医療大麻とは、嗜好用として使われる「マリファナ」と同一のものである。
5)日本では嗜好用として使用されてきた記述は殆ど見受けられないが、民間薬・和漢薬として使われてきた。
6)現在、WHOをはじめとする世界の公的機関の研究により、医療大麻は60種以上の疾病・疾患に有効であることがわかっている。

ここまで説明したところで、二川大臣官房長は口を開いた。
二川大臣官房長;
「なるほど、大麻が麻であることは知りませんでした。また、戦前には資料写真にあるように多くの麻が栽培されていたのですね。そして、大麻取締法第4条によって臨床研究ができないということが問題なのですね」

そこで、長吉が欧米の現状について説明した。
1)現在アメリカでは20州が大麻の医療利用を合法としており、2州が医療・嗜好ともに合法になっている。
2)アメリカ連邦政府も、オバマ政権によって、医療大麻については積極的に取締まらない旨を宣言しており、事実上、現在のアメリカでは医療大麻は合法に近い状態である。
3)来年以降、過半数の州法で医療大麻の使用が合法になると連邦法も見直す可能性が高い。
4)一方、欧州では、オランダをはじめとして多くの国で医療大麻が使用されている。

二川大臣官房長;
「アメリカの連邦法が変わっていくと、日本でも大きな変化が起きてくるでしょう。その時にわたしたち官僚が何も知らないということはいえない。いろいろと勉強しておく必要があります」
「しかし、すぐに法改正とはならない。日本とはそういう国です。先ずはその前に研究をし、知る必要があります」

稻川監視指導室長;
「医療としての有用性があるとしても、一般社会では様々な問題が起こる可能性もあります」

長吉;
「社会的な混乱は、当然懸念されるところです。ですから、先ずは国で研究・検証していただき、大麻の本当の姿を知ってもらいたいと考えます」
「その一方で、我が国の大学や研究機関では、大麻草にふくまれる成分である『カンナビノイド』を合成的につくり、それを使用して研究が行なわれています。その研究は世界トップクラスです」

二川大臣官房長;
「合成であれば合法ですね」
「それであれば、医療にも合成カンナビノイドを使用すればいいのではないですか」

長吉;
「医療大麻は『全草利用』が基本といわれています。これは、単体の成分ではなく、大麻草全体を利用するという意味です。その理由には主に二つあります。」
1)大麻に含まれる薬用成分『カンナビノイド』は200種類を越えるといわれており、複数のカンナビノイドが相互作用することによって効果がある。しかし、その組み合わせについては、未だ解明されていない。単体のカンナビノイドの医療利用は不完全である。
2)大麻草からカンナビノイドを抽出して使用するよりも、患者自らが栽培し利用したほうが、遥かに低コストであり、患者が直ぐに使用できる
「日本でも古くから、大麻草を漢方薬として全草利用してきたという歴史があります」

二川大臣官房長;
「なるほど、漢方薬とは日本の医薬品であり、『和漢』といわれてきましたね」

長吉:
「そうですね。中国でも政府は大麻を禁止していますが、一方で、北京大学を始めとする研究機関では、大麻草の医療利用の研究は続けられています。食料や産業の研究も進んでいます。そして、現在では数多くの世界的なパテントも取られています。ちなみに、中国ではそのような形で利用する際は『漢麻(かんま)』と呼んでいます」

 さらに二川大臣官房長は、資料を見ながら言った。
「我が国では1985年の最高裁判決において、大麻に有害性があることを理由に、取締法が合憲となったが、その後、30年近い研究によって、世界ではこのような状況になったのですね」
「その間の研究によって、状況が大きく変わっていった。これは、我が国におけるハンセン病の問題と同じということですね

長吉:
「その通りです。ですから、一刻も早く研究を可能にして、多くの患者に届ける必要があります」
二川大臣官房長;
「大塚製薬が大麻から医薬品を作っていると書いているが、これは何ですか?」

根岸;
「イギリスのGW製薬が開発したもので、大塚製薬がパテントを取得し、日本以外の様々は場所で生産して販売もしています。大塚製薬は、大麻を栽培して、その中から成分を抽出しています」

二川大臣官房長;
「では、日本には輸入できないということですね。
輸入したら、すぐにこの人が捕まえに来るということですね」
 二川大臣官房長は笑いながらそういうと、隣に座る稻川監視指導室長を指差した。そして、稻川監視指導室長に言った。
「これは、大塚製薬を呼んで、話を聞かないといかんな」

根岸;
「私の妻はリウマチを患っています。身体障害者二級の手帳も持っています。以前に海外で治療のために医療大麻を妻に使用させたことがあります。その時、妻は泣きながらいいました。『腕が痛くない。そして曲がる!』その妻の姿を見て、これは真実であると確信しました。妻は国内では一日に何十錠というリウマチの薬を飲まなくてはいけません。しかし、それらの薬ではリウマチは治らず、現状を維持するに留まります。また、それを使用している間は、妊娠・出産することも危険です。私たちは子供が欲しい。しかし、もう年齢が迫っています。一刻も早く、医療大麻が利用できるようになって欲しいのです」
「大麻を医療用に使用すると、5年以下の懲役です。これは、殺人罪にも相当する重罰です。そんなことがあっていいのでしょうか。これは人権問題なのだとおもいます」

二川大臣官房長;「日本という国は、なかなかすぐには法律を変えません。しかし、世界が変わってきている現状では、それは変わってくると思います。直ぐにとはいいませんが。時間のかかるものです」

長吉;
「法律を変えるには時間が掛かることについては理解しています。しかし、先ずは一刻も早く、研究・臨床実験が出来るようにしていただきたい。そのための勉強会などをもっていただきたい。必要とあらば、僕たちの仲間たちは多くのデータを持っていますので、人材や材料を用意します。よろしくお願いします」

根岸;
「(資料;「NPO法人医療大麻を考える会 会報4号」を指差して)今後、この会報も新しいものが出ますので、お届けします。世界はもう変わっています。是非、よろしくお願いします」


二川大臣官房長;
「大麻といわれると、触るのも見るのも恐ろしいものという認識が一般であり、まさか、麻が大麻だとは思わなかった。そこから認識する必要があると思います」
「恥ずかしながら、今日のお話をお聞きして、我々の知らないことも二つ三つありました。医療大麻について知ることは大切だと思いました。ありがとうございました」

長吉・根岸;
「本日はありがとうございました」


以下余白。

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