ブラスバンドコンテスト 其2
ブラスバンドの発展はブラスバンド・コンテストが興行としての成功を重ねていたこととも深く関わっています。コンテストは観客を多数集めるイベントの一つだったのです。今に続く「ブリティッシュ・オープン」は、イギリスのマンチェスターの動物園・庭園・遊園地・複合ホールとして知られた「ベル・ビュー動物園(Belle Vue)」での第1回大会で、マンチェスター・バーミンガム鉄道に乗った1万6000人の観客を集めたとも言われます。
ブリティッシュ・オープン以前に開催されたコンテスト
江戸時代、嘉永6年黒船来航の年、1853年にベルビューで開催された大会に参加したバンドは、大会規定により打楽器を除く管楽器のみで編成されていましたがオール・ブラスの編成に限定されたものではありませんでした。
その編成にはフルートやピッコロ、そしてクラリネットなどの木管楽器が混在していたと思われます。ちなみに、優勝したモスリー(Mossley Temperance)は、サクソルンのみの10名編成のオール・ブラスバンドだったと言われます。
合 唱
セントポール大聖堂を会場に1655年に始まった合唱祭(Clergy Support Trust choral festival)が、今年2023年5月9日に第368回大会を迎えました。これはコンテストではありませんが、複数の団体が一堂に会して聴き比べることもできるイベントであるという意味では、ある種コンテストでもあると言えます。今年もイギリス各地の大聖堂の合唱団が集まりパリー(Hubert Parry)やエルガー(Edward Elgar)が歌われたとのことです。
また、1790年にはアメリカ初の合唱コンテストがマサチューセッツ州ストートンで開催されたとあるように、バンドのコンテストよりも以前にコンテストの開催がなされたようです。
ハンドべル
1745年にはコンテストが開催されたとの記述もあり、ブラスバンドに先立つこと半世紀、1700年代にはハンドベルの人気は高まりました*1。実際のコンテスト継続開催記録には、ベラビューでの1855年から1925年までハンドベル・コンテストがあります。
19 世紀後半から 20 世紀初頭にかけて、ヨークシャーとランカシャーの工業都市でハンドベルの人気が高まるなど、ブラスバンドの隆盛と重なる要素が多数ありました。ただし、第一次世界大戦後、多くのハンドベル・チームは解散し、 1 チームあたり 150 ベルを超える大きなベル・セットが保管されたままのパブがあるということです。
バンドコンテスト
1818年にヨークシャー州シェフィールドでコンテストが開催されたとの回想がありますが、これは1858年との記憶違いではないかとされます。
1821年にベセス・オ・ス・バーン(Besses o' th' Barn)等がジョージ4世の戴冠式の行列に参加した時にコンテスト行われたとの言い伝えもあります。
1828年のスコットランドのスターリング・ジャーナル・アンド・アドバタイザー(Stirling Journal and Advertiser)紙には、バノックバーンとディーンストン・バンドがコンペティションを実施したとあります。
1837年にはヴィクトリア女王の戴冠式の行列参加に続いて演奏順を決める抽選も行われるコンテストが実施され、ベセス・オ・ス・バーンが「Hail！smiling morn」を演奏して優勝し「王冠の形をした」賞品が贈られたとの記録があります。
1845年にはヨークシャー州ハル近郊のバートン・コンスタブルでコンテスト開催され*2、バンドの楽器編成や演奏曲の記録の一部がわかっています。
ヴォルド(Wold Brass) セビリアの理髪師(ロッシーニ)、ハレルヤ・コーラス(ヘンデル) 優勝賞金12ポンド(現在日本円で16万7千円程度)
ホルムズ(Holms Hull Tannery)第12ミサ曲(モーツァルト)、フライシュッツ(ウェーバー) 賞金8 ポンド(現在日本円で11万1千円程度)
他のバンドは賞金3ポンド(現在日本円で4万円程度)
1840年代後半には、ヨークシャー州ハルの動植物園で開催されたフラワーショーでわずかな賞金のコンペティションが実施されました。
1847年、1848年、1849年にはヨークシャーのスカボローでのコンテストで、リーズ・テンペランス・バンドが優勝しました。
*1 クリフォード・ビーヴァン(Clifford Bevan) 「ブラスバンドコンテストは、芸術かスポーツか？」の記述による
*2 エンダービー・ジャクソン(ブリテッシュ・オープンの創始者・興行師)の記述による
参考文献
ロイ・ニューサム(Roy Newsome 1930-2011)の博士論文
THE 19th CENTURY BRASS BAND IN NORTHERN ENGLAND
ブラスバンド・コンテスト 其１
ブラスバンド・コンテスト 其２
ブラスバンド・コンテスト其２-２
ブラスバンド・コンテスト 其３
ブラスバンド・コンテスト 其４
ブラスバンド・コンテスト 其５
writer Hiraide Hisashi
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