英国式金管楽隊独自曲事始 -その4
ブリティッシュ・オープン(British Open Brass Band competition)は1853年に、全英選手権(National Championships of Great Britain)は1900年に始まるどちらも100年を越える長い歴史と権威あるブラスバンド・コンテストです。
それらのコンテストで演奏される課題曲は、1913年の全英選手権でブラスバンドのために書かれたパーシー・フレッチャーの「労働と愛」が選ばれるまで、サリバンやグノーなどクラシック作曲家の様々な曲の接続曲やオペラの抜粋曲などでした。
ブラスバンド・オリジナル課題曲
「労働と愛」が全英選手権課題曲となった翌年の1914年には、多数の合唱曲の作曲家としても知られるグランヴィル・バントックが独立労働党結成21周年のために「フェスティバル・マーチ」を作曲するなど、ブラスバンドのためのオリジナル曲をクラシックの作曲家が書く気運が醸成されていました。
全英選手権は翌1914年から1919年までの6年間、第一次世界大戦の影響で開催されませんでしたが1920年に再開された時には、 1914年用として用意されていたと思われるシリル・ジェンキンス(Cyril Jenkins)のコリオラヌス(Coriolanus)が課題曲となり、バンドマスター以外の作曲家が書いたオリジナル曲が課題曲となる流れができました。
特に1920年代以降には、イギリスの主要な作曲家たちに全英選手権の課題曲を書くように働きかけがなされました。その結果として1918年にはホルストの「ムーアサイド組曲」、1930年エルガーの「セヴァーン組曲」、バントックの「オリエンタル・ラプソディ」、 1932年アイアランド「ダウンランド組曲」、1936年ブリス「ケニルワース」などが課題曲となりました。なお、ブリティッシュ・オープンでは1924年までオリジナル曲が課題曲になることはありませんでした。
第一次・二次世界大戦が終わるまでの期間に課題曲となったオリジナル曲の作曲家
Wikipedia英国クラシック作曲家リスト を見る
Wikipediaイギリス版でクラシックの作曲家として記載されている9人が書いた、1913年から1945年の32年間でブラスバンド課題曲となった作品
ヒューバート・バース (Hubert Bath)
National 1922 フリーダム(Freedom)
National 1931 ホナー・アンド・グローリー(Honour and Glory)
グスタフ・ホルスト (Gustav Holst)
National 1928 ムーアサイド組曲(A Moorside Suite)
エドワード・エルガー (Edward Elgar)
National 1930 セバーン組曲(Severn Suite)
グランビル・バントック(Granville Bantock)
Open 1930 オリエンタル・ラプソディ(Oriental Rhapsody 音源はどこ)
National 1933 プロメテウス・アンバウンド(Prometheus Unbound)
ジョン・アイアランド (John Ireland)
ハーバート・ハウェルズ(Herbert Howells)
Open 1934, National 1937 ページェントリー(Pageantry)
ケニス・ライト(Kenneth Wright)
National 1935, Open 1945 プライド・オブ・レイス(Pride of Race 音源はどこ)
アーサー・ブリス(Arthur Bliss)
National 1936 ケニワース(Kenilworth)
ジョセフ・ホルブルック (Joseph Holbrooke)
Open 1940 クライブ・オブ・インディア(Clive of India 音源はどこ)
Wikipediaブラスバンド作曲家 を見る
Wikipediaイギリス版でブラスバンドの作曲家として記載されている(クラシック作曲リスト掲載者を除く)3人が書いた、1913年から1945年の32年間でブラスバンド課題曲となった作品
デニス・ライト (Denis Wright)
National 1925 ジャンヌ・ダルク (Joan of Arc 音源はどこ)
National 1927 ホワイトライダー (The White Rider 音源はどこ)
Open 1933 ナダ姫 (Princess Nada 音源はどこ)
National 1945 エピック・オケイジョン序曲(Overture for an Epic Occasion)
ヘンリー・ギール (Henry Geehl)
National 1923 オリバー・クロムウェル(Oliver Cromwell)
National 1924 コーニッシュ海岸(On the Cornish Coast)
Open 1936 ロビンフッド(Robin Hood 音源はどこ)
パーシー・フレッチャー(Percy Fletcher)
National 1913 労働と愛(Labour and Love)
National 1926, National 1938 エピック・シンフォニー(An Epic Symphony)
Wikipediaイギリス版では見つけられないブラスバンド課題曲(1913-1945)作曲家
なぜかWikipediaイギリス版には記載されていない5人の作曲家の、1913年から1945年の32年間のブラスバンド・コンテストで課題曲となった作品
シリル・ジェンキンス(Cyril Jenkins) *ノルウェー語版Wikipedia
National 1920 コリオラヌス(Coriolanus 1914)
National 1921 ライフ・ディヴィン(Life Divine)
National 1929 ビクトリー( Victory)
ハイドン・モリス(Haydn Morris) *オランダ語版Wikipedia
Open 1931 スプリングタイム (Springtime 音源はどこ)
マルドイン・プライス(Maldwyn Price) *オランダ語版Wikipedia
Open 1938 オウェイン・グリンドワー (Owain Glyndwr 編曲の音源)
モーリス・ジョンストン(Maurice Johnstone) *紹介記事
Open1 944 テンペスト (The Tempest 音源はどこ)
トーマス・キーリー(Thomas Keighley) *オランダ語版Wikipedia
Open 1925 マクベス (Macbeth 音源はどこ)
Open 1926 真夏の夜の夢 (A Midsummer Night's Dream 音源はどこ)
Open 1927 ウィンザーの陽気な妻 (Merry Wives of Windsor 音源はどこ)
Open 1928, Open 1942 ロレンツォ(Lorenzo)
Open 1932 十字軍(The Crusaders)
Open 1935 ノーザンラプソディ(A Northern Rhapsody 音源はどこ)
ブリティッシュ・オープンと全英選手権の課題曲ですが、100年近く前の課題曲だからでしょうか、音源が見つからない曲が多数あります。
英国式金管楽団独自曲事始 - その1
英国式金管楽団独自曲事始 - その2
英国式金管楽団独自曲事始 - その3
英国式金管楽団独自曲事始 - その4
英国式金管楽団独自曲事始 - その5
writer Hiraide Hisashi
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?