見出し画像

フィードバックとは何か。僕なりの考え

みなさんこんばんは。

まちづくり芸人の永山(nagayaaan)です。

この時期は、いろんなイベントにアドバイザーとして呼ばれることが多くなります。わたくし、自分でいうのもなんですが、最近は自分のことを「フィードバック芸人」なのではないかと思うほどに、良い感じのフィードバックのコツをつかめてきました。

そんな調子に乗っているわたくしのもとに、奄美大島でのプレゼンイベントで同じくアドバイザーとして招聘されていた先輩(医師のH先生)から下記のようなメールを頂戴しまして。

個別にお返しするのも良いのですが、これはちょっと広く共有しても良い知見かもしれない、と思い。公開でお返事を書かせていただくことにします。(先輩には許可いただきました。H先生、ありがとうございます!)

以下、いただいたメッセージです(一部永山にて伏字にしています)

永山さん
ご無沙汰です。
先日はイベントにご一緒できて嬉しかったです。

あの日の永山さんの抜群なコメント力に感動して、その日のうちに●●●●氏の『●●●●』という本をAmazonで買いました。諸々の事情で読むのが遅くなりましたが、一冊読んだ結果、あまり有用な情報はありませんでした。

さて、私が永山さんのコメントの仕方を見ていて感じたのは少なくとも3つの別の技術を合わせて行っているような気がしました。それは以下の3つの技術です。

1)話を吟味できるような形に頭を整理しながら話を聞く。

2)整理した話の中からどこを抽出して膨らましていくかを検討する

3)相手が良い気持ちになるようにポジティブにフィードバックすると同時にただ気持ち良いだけで終わらないお土産を持たせてあげる一言を用意する。

1)では、おそらく話を聴きながらメモを取りながら聞いていたのではないかと思いました。その中でも話を系統的に内容ごとにグルーピングして、表や図のような形に(実際に目に見える形でなくて、頭のなかだけかもしれませんが)して整理しているような気がしてならなかったのですが、一体どんな形で頭の中に整理して入れているのかは結局あの後、二週間くらいずっと考えていましたが、自分ではすっきりしたものが見当たりませんでした。

2)については、人の話を聞く時に、その話の『前』と『後』を想像しながら、もしくは『一度テーブルに乗せて削った結果話に出て来なかかったところ』と『まだ入り口だけが話に出てきて十分に吟味されていないところ』を見極めながら、そのような部分に該当する話の部分をとっかかりにコメントやフィードバックとして内容を膨らませているように感じました。前者の、前後を想像することはトレーニングしたらできるようになるようなきもしますが、後者の、削ぎ落としたところと、まだ十分削り出せていない部分というところについては永山さんが長年かけて経験した『数』がなければ、感じ取ることができないものなのかもしれないと思いましたが、そこを想像するコツがあれば、もしくはそういう話の聞き方のお作法のような物があればヒントを教えていただきたいです。

3)については、ポジティブなフィードバックの大枠の型のようなバリエーションをいくつかお持ちなのではないかと感じました。もちろん、それは今までの経験の中でネタ帳のように少しづつ積み重ねていった部分だと思いますが。しかし、これもそのような工夫や経験の基礎となる『技術』はあるかと感じました。何か、具体的なスキルやテクニックとして勉強するとしたらおすすめなものがあれば教えていただきたいです。
お土産部分については2)で書いた話に見えていない部分から、話し手がまだその重要性や価値に気がついていない部分をうまく伝えているのではないかというように感じました。

もちろん、自分なりの工夫や、乗り越えてきた修羅場の数が今の永山さんの神コメント力に繋がっていることとは思いますが、その入り口となる、技術や方法論があれば是非、紹介していただきたいと思って、あれからしばらくたち、頭の中を整理した上で、メッセージさせていただきました。

私たちの業界【永山注:H先生は医師です。ここでいう「業界」とは、医療業界を指すと思われます】はあまり顧客(私たちにとっては患者さんやそのご家族)の話を聞き、その後で私たちがフィードバックする内容を経て、顧客自らがやる気を出し積極的にそれに取り組みたくなるような形での提案をするということが極端に下手くそなような気がしているからです。その証拠が、前回の私のコメント力のなさそのものだったと思います。そこに介入しないといけない課題があることは専門家としてわかっているのに、専門家として自分が関わることができる時間は月に1回しかない。その他の時間は患者が自分でそれに能動的に取り組むしかないという状況が続きます。その中で、月一回の診察での会話の中で、最も効果を出すということにもっと貪欲になるべきだと、前回の永山さんの語りっぷりを見て心底痛感したのでした。

こんな口下手な私に、何かアドバイスできることがあったら、ご教示頂けましたら幸いです。ご検討よろしくお願いします

質問文、ながっ!!!

H先生、ありがとうございます。

これはもう、超長文になりますが、お返事していきますね。

永山がいろんな場でアドバイスやコメントを求められているときに意識していることと、そのためのトレーニング。

①そもそもアドバイスは求められていない

まず最初にお伝えしたいのは、人ってそもそも他人のアドバイスをそんなに求めていないということです。一つの事柄には無数の可能性があって、当人がどのような方向性で事態を変えよう・動かそうとしているかは当人以外にはわかりません。場合によっては、当人にもその先の方向性が定まっていない場合があります。

ときにアドバイスを求められる場面もありますが、そのようなときにも「誰のアドバイスでもよい。どんな人の、どんなアドバイスでも参考になる!」という状況は少ないです。自分が真剣に向き合っていることであればあるほど、無責任に上から語られることを素直に受け取れる状況にないことも多いですよね。

そんな時に、見当違いな方向からアドバイスをもらっても、まったくもって参考にならないものです。そこで、僕は基本的にはアドバイスをしないように意識しています。

②やっている当人はその事柄の価値を把握できていないことが多い

アドバイスが求められていないのにもかかわらず、アドバイザーとしてイベントやブースに招かれたときには、どうするか。

僕は、その当人の事態や取り組みに対して、当人がまだ気づいていないかもしれない側面から光を当てる努力をします。

基本的な型としては、「●●さんの取り組みは、表面的には『A』のように見えるかもしれないが、私は『B』の価値もあると思う。だから、『A➡A´』という進化系だけでなく、『B➡B´』という進化系もあるのではないかな」という形です。これは多用しますし、言われた側にも喜んでいただけている気がします。

医師であるH先生のお立場にたつと、患者さんに対して改善すべき事象Aを断罪する目線だけでなく、事象AにはメリットBも存在していて、一概に問題であると言い切れない部分がある。みたいなことをお伝えするということでしょうか。そうすることで、フィードバックをもらう側にとっては「自身を取り巻く状況を2方向から見ることができる=この先生は自分には無い目線からのフィードバックを期待できる」、という信頼関係を築きやすくなるかもしれません。

【そのために、物事を多面的にみるというトレーニングは日常的に行っています。具体的には一つの事象について、可能な限りいろんな立場の人とディスカッションしてみるということです。僕の場合は、ラジオ番組を複数持っていることもあり、仕事柄そういう場面が多いというのは前向きに作用しているような気がします。】

③お土産はひとつに絞る

取組に対して、別な目線からの価値をあぶりだしたうえで、最後には何か持ち帰ってもらう知見をお渡しできれば最高ですよね。

その場合、僕が意識しているのは「お土産は一つに絞る」ということです。

これが実はめちゃくちゃ難しくて、お土産を一つに絞るために、相手の事象の構造をいったん整理したうえで、課題となりえる点をまとめ、その中で最もクリティカルなポイントを絞り込みます。そのために、手元のメモでは企画やプレゼンの中身を整理分解していきます。そして、どこを押すことでこの取り組みがより輝くかを考え抜きます。

そのうえで、それをお土産と認識してもらうためには、具体的なアクションとしてお渡しする必要があります。抽象的な解説はいらないので、「例えばこういうこと、やってみるとよいかもしれませんねー」というテイストでお伝えする。②で異なる視点を提示したうえで、③具体的な解決策を一つに絞って提示することで、「ああ、なるほど、やってみよう」と思ってもらえる(はず)。

【このためのトレーニングは、自分自身の取り組みを常に分解して認識するようにするということですね。自分が何かのアクションを起こしたときに、その起点になったのは、どんな人のどんな一言だったかを思い出してみると、自分に影響を与えた人がどんな言い回しでどのように自分の背中を押してくれたかが見えてきます。それを繰り返すうちに、自分の中で語彙が増えてくるように感じます。】

④あとは、フィードバックそれ自体を一つのエンタメに

上記①②③が、僕が普段、アドバイスを求められる役職に就く際に意識していることです。

が、①②③だけでは単なる真面目な人なので、下記のようなポイントにツッコミどころを探して、適度にいじりながら全体をコーディネートします。

・プレゼン資料の内容に対するツッコミ
・つかみの話題に対するツッコミ
・プレゼン時間に対するツッコミ
・当人の服装やテンションに対するツッコミ

…これらはいずれも本筋とは関係ない部分なので、つっこまれた側も「ああ、この人は本質以外の部分にゆるく触ってくれているなあ」とわかっていただけることが多く、外すことが少ないです。あとは、アドバイス対象者以外にもギャラリーが多くいる場合には、「確かにwww 資料のイラストが雑だったwww」みたいに共感の笑いが多く生まれて、おいしいです。笑

【この「どうでもいいことに突っ込む技術」は、お笑いの方から学べることが多いです。M-1グランプリは、初年度からすべての回を定期的に見返すようにしています。ツッコミ力というのは、コミュニケーションのオプションを膨らませる最強の技術です。僕もまだまだ修行中ですが。】

以上。

僕が普段、アドバイザーとして招聘される場合に意識していることと、そのためのトレーニングについて、でした。

H先生、お役にたてましたでしょうか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?