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問いの持つ力を事業に活かす

Ten-Labはオフィスを持たないチームです。毎週1回、2時間の全体ミーティングが唯一全員が集まる場で、それ以外の時間は働き方も仕事の進め方も自由。そんな働き方で生じる様々な課題を乗り越えるために行っている月1回の全社合宿の話題からお届けする合宿レポート。

2020年9月の合宿で扱われた議論のうち、ここでは「問いの力を事業に活かす」という議論について、ご紹介します。

合宿では、事前課題として論文や書籍、ネット記事などを指定し、その感想を共有するところから議論が始まります。

お題:常に「必要な問い」を持ち続けるチームとは、どんなチームか。

課題記事:問う行為そのものを肯定し、問いを味わって楽しむ方法を伝えたい。京都大学総合博物館准教授・塩瀬隆之さん。【ミラツクジャーナル インタビューシリーズ「時代にとって大切な問いを問う」 20200816】


【議論】
Q事業の実施主体と参加者という関係性をいかに乗り越えるか。

⇒主催者が正解を持ち、参加者がそれを探しにいくという関係性では、対話は生まれにくい。その意味で、主催者も正解を持たない=問いを起点に事業を進めることが重要だが、問いとその探求それ自体に価値をもって対価を支払う企業や自治体はなかなか無い。

⇒鹿児島市広報戦略室の皆さんとご一緒しているKagoshima Lovers ProjectやPLAY CITY DAYSでは、「鹿児島ファンを増やすためには、どんな道があるか」という問いを起点にいろんな挑戦を市役所の皆さんにも一緒に楽しんでいただけている点が奇跡的だと思う。

【※鹿児島市広報戦略室と一緒に運営しているのは、こちらの2事業】

⇒課題となったインタビューでも紹介されている書籍『問いのデザイン』の中では、問いを「人々が創造的対話を通して認識と関係性を編み出さすための媒体」 と定義している。関係性の固定化(例えば、上司と部下のようにみえている関係性)を破らないと創造的な対話はできないといっている。
また、「現代社会では、『認識』と『関係性』が固定化するという病いにぶち当たることがある。」とあるが、ほとんどの組織の問題はここから始まるなあ、と思う。


Q問いを多くの人と共有するためには

⇒ワークショップの中でチーム内の関係性をつくるというのはイメージが湧くが、市役所の人とか参加者の人との関係性づくりは規模が大きくなればなるほど目が届かなくなるし、手も足りないというのを率直に感じている。例えばPLAY CITY DAYSだと、各まちに飛び出す時にちょっと顔を出すことぐらいしかできないのかな。100人との関係性づくりが難しい。

➡︎PCDでいくとまずチームがあるのか、まず問いがあるのかというところはあるように思う。チームをチームたらしめるために問いが必要なのか。最初に問いがあって、問いに共に向き合う人達が集う形でチームになっているのか。どっちと捉えるかによって見方が変わってくる。まず問いがあって共に向き合う人達が集まっていると考えると、チームは既にある。

➡そうなると、問いに対してどれだけまっすぐにいろんな施策をうてるかどうかの方が重要な気がする。川の流れのように問いの力が流れていて、その問いの力を活かすようなコミュニケーションはどういったものなのか。問いの力を阻害するか加速させるかで、コミュニケーション施策の作用が全然変わってくる。たとえば人数が多くて、個別でケアするのが大変な場では、問いの力を上手く引き出して、問いがもつうねりや空気感みたいなものを上手く使えるのではないか。

Q問いの源流とはなにか、問いの力とはなにか

➡︎やっぱり事業のネーミングはとても大事だと思う。Kagoshima Lovers Project、PLAY CITY DAYS、それぞれに大切な要素はほとんどネーミングで説明できる。

➡以前、甑島のヤマシタケンタさんと話をしていて、彼が「自分の仕事の中で一番大切なのは、各事業のコンセプトづくりと、ネーミング」と話をしていた。ケンタさんはネーミングに命をかけていると言っていた。Ten-Labにとっても、名前を決めるときが一番議論するし、企画の意図や問いを考えまくる。やはり、事業のあらゆる場面でネーミングに立ち返ることが大切なのかもしれない。

Q個人の問いと、チームの問いのバランスをどうとるか

➡︎参加者が複数いる場合、参加者ひとりひとりに目的があるという見方もできる。その場合、一人ひとりが自分なりの問いをもって参加しているともいえる。その場合、場全体の目的=場全体が提起している大きな問いと、個人個人の持つ問いがどのように融合していくか、を考える必要があるよね。

➡その時のよりどころは、参加者が参加している時点で、もともとある大きな問いのもと集まっているという事実。だからこそ、対話が成立するはずだと信じて、手放すところは手放していく勇気も必要なのではないか。

Q成果と、問い、どちらを優先すべきか

➡クライアントワークである場合、つねに依頼者が求める成果がある。それはわかりやすい評価(メディアでの露出であったり、参加者や参加率だったり、売上や利益だったり)だったりする。問いを起点に取り組みながらも、依頼者が求める成果を出すというのはかなり難しいのではないか?

➡成果や評価を求める姿勢は、結論ありきなプロセスを組みがちで、問いの力をうまくひきだせなくなる。だからこそ、できるだけ成果や評価を見ない姿勢で、問いに対してまっすぐ事業を組み立てていくプロセスが重要。

Q鹿児島市広報戦略室との2つの仕事は、どんな問いを起点にしているのか

➡PLAY CITY DAYS、Kagoshima Lovers Project、共通する問いは「鹿児島市のファンを増やすにはどうすればよいか」というもの。この問いを考えると、周辺にいくつかの新しい問いが生まれる。まず1つは、「ファンを生むことはまちに対してどんな意味をもつのか」という問いと、もうひとつが「人はどのようにファンになっていくのか」というもの。前者がファンという存在をマクロでみていて、後者はミクロでみている。

➡この2つの問いを行ったり来たりしながら、事業を組み立てていく必要がある。いずれにしても、我々の中には正解がなく、この2つの問いに向き合い続けて、挑戦していくしかない。瞬間瞬間で、事業に参加してくれる人の顔を見ながら、その時々でベストだと思える選択をし続ける。もちろん、目に見える成果を年度末に向けて出せればベストだし、それも大切にするけれども。

【あとがき】

Ten-Labの事業は、行政とのお仕事、民間企業とのお仕事、自分たちで運営する自主的な事業、の3種類がありますが、いずれも形のないものや概念を扱うことが多いです。

もちろん事業を始めるにあたっては、目的やゴールを設定しますが、この議論を経て、立ち返るべきは自分たちがその事業を始める際に起点となった問いであるということを確認することができました。

今回は鹿児島市広報戦略室の皆さんと進めている2事業をモチーフに考えていきましたが、当社が現在抱えている各事業においても、同様の姿勢で考えていくことは、どうやらかなり重要なようです。

以上、ここまでのレポートは理事長 永山がお届けしました!

【合宿の雰囲気はこんな感じ↓】

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