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計画された偶発性理論を地域と人の関係性に活かす

みなさんこんにちは。まちづくり芸人こと、永山です。

今年の春から15年ぶりに母校(九州大学)の嶋田暁文先生の下でゼミに参加させていただき、学生時代の恩師から学んでおります。

アカデミズムから離れて現場に揉まれて15年、そろそろ改めて学びたいと思い、週1回の大学院ゼミに合流してはや2か月。さっそく強烈な学びの連続です。

今日は、今一緒に働いている仲間たちに共有したい学びがありましたので、そのおすそ分けを。

なお、こちらの記事は、嶋田暁文先生の講義資料をもとに、私の個人的見解も加えて書いたものです。

1.計画された偶発性理論

昨年5月4日に90歳で亡くなられたクランボルツ博士(スタンフォード大学名誉教授)の「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」について。ご存知の方や、聞いたことある!という方も少なくないと思います。これは、偶然の出来事が発生する確率を意図的に高めることを目指す理論。

この考え方はキャリア論として世に出ました。「キャリアは、自分が思い描いた通りに進むものではなく、むしろ様々な偶発的な出来事によって形成される。その一つ一つの偶発的な出来事を好ましいこととして受け入れ、いかに縁をつくり、活かしていくか」という考え方です。

この考え方を援用し、人間のキャリア(いかに職を得て、どう生きるか)のみならず、地域活動に応用できないかというのが今回のテーマ。特に域外の人と住民たちとの出会いを「偶発的な出会いに始まる縁」と考えることで、関係人口施策や各種ワークショップにおいて「偶然の出来事が生まれやすい環境をつくる」ことができるのではないかという仮説について、書いてみます。

2.偶発性をキャリア・チャンスとするための5つのスキル

計画された偶発性理論によると、偶発性をキャリア・チャンスとして認識し、創造し、活用するためには、以下の5つのスキルが必要だとされています。

①好奇心(Curiosity)
  ➡新しい学習機会の探求
②粘り強さ(Persistence)
 ➡挫折にもかかわらず努力すること
③柔軟性(Flexbility)
 ➡姿勢と環境を変えること
④楽観性(Optimism)
 ➡新しい機会を実現可能、達成可能なものとみなすこと
⑤勇気(Risk Taking)
 ➡不確実な結果に直面しても行動を起こすこと

要するに、新しいことに好奇心を持ち、結果を気にせず、楽観的に考えて、新しい機会を活かし、まずはチャレンジする。そして失敗してもあきらめないということ。

これは、従来のキャリア論が自己分析に始まる職業探しであるのに対して、学習に軸足を置き、自己の変容・適応を想定しながらキャリアを考える点が対象的です。

そしてこの点は、地域が移住者や地域外の第三者と出会う際にも同じ枠組みで整理することが可能なのではないかというのが、今回の記事のポイントです。

3.人と地域の出会いも同じように偶発性の中にある

移住ドラフト会議を4年間運用してきて感じるのは、人と地域の出会いも、その多くは偶発性によるものだということです。

そしてそれは、偶発的な出会いをしっかり自分の地域につなげるかどうかという地域側の姿勢に大部分がかかっているということです。

例えば、前述の5つの姿勢を参考に、地域側が域外の人との関係を作ろうとする場合の施策で重要なポイントは、下記のようになります。

①好奇心(Curiosity):域外の人の興味をそそるデザイン性
②粘り強さ(Persistence):域外の人の挑戦を粘り強く支える姿勢
③柔軟性(Flexbility):地域になじむような様々なフォローの体制
④楽観性(Optimism):やれることがありそう!と思わせる取組の情報提供
⑤勇気(Risk Taking):一歩踏み出すことを後押ししあえる仲間づくり

上記はいったん施策立案段階での重要なポイントを整理しましたが、そもそも地域側の在りかたという観点でも、この5つの切り口は重要であろうと感じます。

同様に、関係人口として地域に関わろうとする域外の人たちにとってもこれら5つの素養は重要でしょう。

4.これからいろんな場面で重要になるかもしれない

ここまで、計画された偶発性理論を、本来のキャリア論➡地域と人との関係性➡地域そのものの在り方という順に展開してきました。

この理論は、不確実性が高まり、予測の難しい現代社会で動くあらゆる主体にとって重要なことのように感じます。

たとえば、民間企業の採用のスタイルも、この5つのスキルをうまく組み合わせた導線をいかに設計するかが重要な時代になっているように思うのです。

考えてみると、私の経営するTen-Labという組織も、明確な採用募集記事から求人したことはほとんどなく、何かしらの偶然の出会いから採用に至る例の方が圧倒的に多く、そこから(自分でいうのもなんですが)最高の仲間がそろっていきました。

また、ここ20年ほど各地で盛況になっているまちづくり系のワークショップも、計画された偶発性をいかに高めるかという観点で設計されたものが多くあるように思います。

ということで、本日は「計画された偶発性理論」についてのご紹介でした。

このような形で、学びのおすそ分けも随時やっていきますね。

それでは皆様、良い週末を!!


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