見出し画像

GIGAスクール構想が失敗するとしたら、この4つが原因となるだろう。

小中学校にPCやタブレットを1人1台配り、学校ICT化を推進する「GIGAスクール構想」。

今、各市町村で校内LANを整備して児童・生徒用の学習端末を導入しつつある状況かと思います。既に先行している学校は、校務や授業で効果を出していることでしょう。

ここでキーになるのは、クラウドシステムの活用です。大きく2つに分かれます。
1つは校務システムです。学校の事務や教務や連絡を支援するシステムです。一番わかりやすいのがお便りなどの連絡業務でしょう。先生同士の協働も進むので、教員の仕事の生産性をアップさせることができます。

もう1つは教務システムです。要は授業で使うシステムですね。単に動く教材を見せるだけといった一方方向のものではなく、アクティブラーニングに活用できる協働学習支援システムの活用が求められています。

今日は、2021年1月の今時点で、GIGAスクールが失敗するとしたらこの4つが原因か、と考える私見を投稿したいと思います。
(私は20年この分野に関わってきました。学校ICTによる教育変革を本当に願っている1人として書いています。)

1. 教員のマインドセットが変わらない

学校ICTの活用を阻む要因の1つに「教員のマインドセット」があります。
例えば校務。
今の仕事のやり方は非生産的でおかしい。と気づけるかどうかです。
また、平等という言葉で思考停止になっていないかということ。
どう見てもここで紙をやりとりはおかしいなど、ICTを使うことを前提に業務を考えられるかです。

そうすることで、教員の働き方改革が進みます。

このあたり保護者のマインド変化も欠かせません。保護者連絡など自らもICTを使うことで先生方の業務改善を応援したり、学校に協力するおおらかな態度が求められます。

私は現場で、最初はICTを使うのを極端に恐れていた先生が、どんどんイキイキと使っていく様子を何回も見てきました。
まずはICTの校務活用で先生の働き方改革をした上で、授業に活かすというステップでない限り、先生の仕事が増えてしまい頓挫すると危惧しています。

2. 既得権のある企業が無茶な利益を取ろうとする

GIGAスクールの成功には民間企業の協力も重要です。長年、現場で奮闘する企業の方々をたくさんみてきました。一緒に汗を流した仲間も多くいます。
一方で、既得権のある企業の弊害もたくさんみてきました。

例えば、PCのキッティング(ソフトウェアなどの各種設定)を受注している業者がセキュリティを盾にWIFIのパスワードを教員に知らせないため現場が困っていたり、仕入れ金額を抑えたためタブレットの品質が悪すぎて持ち帰りさせないという状況があったりと、本末転倒なことが起きているのです。

繰り返しですが、現場で企業の方々は本当にがんばっています。ほんと素晴らしいです。ただ、一部の既得権がある企業の担当者には「この仕事の仕方、この見積もりは正しいのか」と今一度考えてもらえたらと思います。
今のGIGAスクールは国の予算でやっていますが、次は各市町村の予算でやる必要がありそれに耐えられない自治体が出てきたらこの施策が頓挫してしまうからです。
電子黒板のときのように、配備したら終わり。ってなことにならないようににしなければなりません。先生たちのほとんどが積極的にICTを常用している状態を作るまでが仕事だと肝に命じて欲しいと思います。

3. 活用度の計測方法があやしい

国の予算ですので、GIGAスクールで配備されたPCタブレットやクラウドサービスの活用度が学校で計測されて教育委員会にレポートされると思います。それを国に上げることになるでしょう。こんなにGIGAスクール構想が進んだというデータが国から発表される日も近いでしょう。

その活用度の計測方法に問題はないでしょうか。
アンケート調査で行われるこの手の調査はバイアスがかかりやすく、少しでも使ったら「利用した、活用した」という報告ができてしまいます。
(電子黒板の本当の利用率の低さは現場は知っているかと思います。)

ここは一つ活用度の計測方法にイノベーションを期待します。
せっかくクラウドサービスを使うのですから、ログデータから利用率を報告させればいいのです。
そして、1週間に1回しか使っていないなど活用とは言えない状態を正しく把握するため、「常用度」を計測データに入れることを提案します
例えば、1日に何回書き込みを行ったかなど、クラウドシステムの実際のログデータを使えば簡単に計測できます。
そうすれば、個別の教員ごとに活用度が把握でき、常用している教員が学校全体で何%いるかを浸透度として数値化すれば、その学校のICT化が実際どれくらい進んでいいるか正確に把握できるようになります。

活用度の計測方法が今まで通りのバイアスがかかるような調査結果を、自治体や国が採用し続けるのであれば、GIGAスクール構想は事実上失敗する可能性も大きくなると思われます。

4. googleやMSが課金してくる

今、googleやマイクロソフト(MS)といったグローバル企業がclassroomやTeamsといったクラウドサービスを無償で提供しています。
おかげログインIDを一人ひとりに発行して授業で活用する学校も出てきています。オンライン授業だけでなく普段の授業でも効果的に活用している例もあるようです。
この1年で急激に学校教育に参入してきた両企業ですが、今は無料で提供している部分も多いことでしょうが、近い将来課金してくる可能性もあります。GAFAMの一角のグローバル企業ですので個人のログイン情報やログ情報を取れるメリットの方が多いのでそのまま無料が続くかもしれませんが、十分に波及させてからいろいろ仕掛けてくる方法はグローバル企業の戦略として常套手段です。

上記にも書きましたが、今後各自治体の予算で継続させなければならないGIGAスクール構想としては、無料が有料になったときのインパクトは大きいと考えられます。またいろんな抱き合わせで契約する場合、クラウドが無料に見えるだけで実は大きいアドバンテージをグローバル企業に握られるリスクはあるでしょう。(もちろん、そうならないことを祈りますが。)

無料のメリットを享受しつつ、相手はGAFAMであることを常に考えておく必要があります。


以上GIGAスクールが失敗するとしたら原因になるであろうと考える4つを上げました。
私はこれからも地道に学校ICT化を全力で支援していきます。そして上記4つのようなことにならないように、時代を前に進めることに全力を尽くしていきたいと思います。子供達の未来のために。

今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。