見出し画像

融解点

目を瞑って暗いと言う 耳を塞いで静かだと言う
世界は救いがないと笑って 君は海に沈んでいった

ここに跡があることを 君は一生知らないだろう

潰れてしまったこの光は 君の上にあったんだよ
ひしゃげてしまったこの音は 君を呼んでいたんだよ
地面にぽっかり円を作って 君がいた跡があるんだよ

なぞればどれもあたたかいのに 君の手はそれを知らないんだろうね

ひとりぼっちの扉を閉じた その手が最後に触れたのは
凍てつく冷たさだっただろう

いつかいつか海の底で
鱗が波にさらわれて 身体が軽くなったなら
もう一度浮かんで来られるかい

そうしたらきっと君はすぐに 光と音に気づくだろう

願わくば安寧の暗闇を 君が静寂に抱かれていますように

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?