見出し画像

夜の目玉焼き

日に焼けたきつね色の縁取りで
空気を食べた白身はいくつかの山と穴を生む

真ん中よりもずれた場所
光を集めた黄身はぷくりとふくらむ

てっぺんに箸先をくっつけると 膜の抵抗は一瞬
つぷりと空いた穴から とろりと黄身が流れてゆく

ああきっとこれは 私の心

薄っぺらな膜で包んで まあるくして
つやつやの上塗りを幾重にも施して
見目を整えてみてところで いつまでたっても中はどろどろ

せめて本当に卵だったら
こうして食べてもらうこともできるのに

ぱくりと大きく飲み込まれて
誰かのお腹で溶かされてしまえばいい

そうして何にもなくなって 真っ白なお皿だけ
美味しかった記憶と一緒に 少しだけ生きていたい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?