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手作りのバレンタインチョコを目の前で落として踏まれる気持ち

私は3歳7か月の息子と1歳5か月の娘の母である。※この記事を書いた当時


この2人、男と女の違いなのか、単なる人間性の違いなのか、育てやすさが全く異なる。


息子は産まれてから1歳になるまでは「寝るか泣くかの子」であり、初めての育児である私にとってはかなり神経を擦り減られる日々を過ごしていた。
第2子を妊娠して喜びも束の間、またあの毎日を過ごさなければならないのかと思うと不安で仕方なかった。
しかし、娘は息子と打って変わって「必要以上に泣かない子」であった。しょっちゅう鼻風邪を引いてはご機嫌ななめにはなるものの、それ以外は基本ご機嫌。6ヵ月を過ぎて保育園に預け始めた時も、先生たちから「古株のように当たり前のようにずっといる感じ」という言葉をいただくほど性格も落ち着いていた。


「食」の点でもそうである。息子は「離乳食」というものをほとんど食べてくれなかったが娘は毎食ほぼ完食だった。「娘は何でも食べてくれる!嬉しい!!これは作り応えがあるぞ!!!」
…なんて思っていたが、そうではなかった。
次第に好き嫌いがはっきりしてきて、今まで物凄い勢いで食べていたものがパッタリだめになった。そして麺類をあげれば手でこねこねし始めるし、小さいおにぎりをあげればホイッと投げられる。お茶をあげれば面白がってマーライオンの様に噴き出す。

「娘よ、お主もそうきたか…」

息子は今年度に転園してから突然変異が起きた。転園後の保育園の広い園庭でたくさん動いて遊ぶからなのか、周りのお友達の影響からか。「全部食べるよ!」と言って、本当に毎食完食するようになった。今まであまり食べなかったお肉も良く食べ、何より遊び食べが以前よりかなり減った。朝食も以前は小一時間かかって毎朝「早く食べなさい!!」と1億回くらい言っていたのに、今では20分もあれば食べてしまえる。ご飯の量も増えた。


まさに「成長」を感じる横で、娘は今日もおかずをひっくり返す。「これも成長の過程」と言えばそうであろう。確かに息子にもこんな時期はあった。しかし、母のメンタルはどうなる?


日々「子ども達が食べてくれそうなものはなんだろう?」と考えに考え、スーパーでも「これならいけるか?」と考えながら買い物をし、「これなら食べてくれるはず!」と毎日の献立を考え、朝はみんなの朝食、夫婦のお弁当、夜ご飯の仕込み、仕事から帰ればダッシュで夕飯を作る。
ご飯を一口あげるにしても、スプーンはこの角度がいいか?自分でスプーンで食べてみるか?ふりかけかけてみるか?ああ、このふりかけはイヤだったか?納豆はいかがか?海苔でも巻いてみるか?おにぎりにしてみるか?と一苦労なのである。


こっちが元気を振り絞って可愛らしく「はい、あーん」と言っても口をかたくなに開かないことなんて普通。あれだけ考えて、時間をかけて作ったおかずが宙を舞う、床に転がる、お茶をかけられる、勢いよく吐き戻される。母、しろめちゃん。


息子の離乳食時代もそうだった。あれだけ時間をかけて裏ごししてすりつぶしたおかずが口に入ることもない、もしくは入ってもバズーカのように口から吐き出され、あたり一面はすりつぶされた人参やら、ほうれん草やら。回収されなかったものたちは、数日後、乾燥野菜となって発見される事しばしば。こうやって、苦労は一瞬にして水の泡となる。母、しろめちゃん。


ここで「優しさであふれる素敵ママ」なら、「あらー、これは食べれなかったね。また今度食べてみようね」とか「お腹いっぱいになっちゃったかな?じゃあごちそうさましようね」とか言って「ご飯なかなか食べれなかったから、お野菜クッキーでも焼きましょうね」なんつって片付けられるんだろうけど、私みたいに気持ちの余裕が、シャープペンの消しゴムの蓋の容量くらいしかなくて、元々袋麺もろくに作れなかったくらい料理が苦手なのに、一生懸命作った結果がこれだと、「絶望」もしくは「怒り」しかない。


これも「成長の過程」だから「怒り」はダメだと分かっていても、それでも抑えきれなくなるときもある。そんなときはグッとグッとグーっと歯を食いしばって「これはお供え物」「息子もこんな時期はあった」と一点を見つめ自分に言い聞かせる。先ほどまで可愛らしく「あーん」と言っていた母はどこにもいないのだ。


これはまさに「大好きな彼氏のために彼氏を思って彼氏の好きそうなチョコを一生懸命作ったにも関わらず、目の前で笑いながら落として踏まれる気持ち」を毎日味わっている感。
そして「ま、また、ふ、振られた…」と泣きながら、それでも毎日歯を食いしばりながら「チョコ作れよー」という彼氏のためにチョコを作らなければならないという。チョコのバリエーションも、「今日はトリュフ」「今日は生チョコ」「今日はガトーショコラ」とか考えなければいけないのだ。母とチョコレート工場。


食事って、言うならば作り手からのプレゼントだと思う。そのプレゼントをしっかりと味わってもらえるだけで十分。「美味しかった!」と言って貰えるならもう言う事なし、な訳で。それを、プレゼントのリボンを取った瞬間にストーンと落とされてごらんなさいよ。母、しろめちゃん。


保育園の連絡帳に食べ物の悩みをつらつら書いても、「お母さん、頑張ってください!!」の一言しか返って来ず。これ以上何を頑張れば…(遠い目)何なら毎日うちに給食の先生をよこしてくださいな。
とは言う物の、子ども達にはたくさん食べて丈夫な体になって欲しいから、母は今日もあなたたちのために献立を考え、作るのである。一口でも多く食べてくれることを願うばかし。そして、いつの日か母からのプレゼントを「嬉しい!」「ありがとう!」と言ってくれる日がくるといいな。切実。

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