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株式投資虎の穴の内容(10/25)を5分で振り返り

先日も株式投資虎の穴をご覧いただきましてありがとうございました。10月25日(月)の放送は、1. 株式投資セミナーのご質問について、2.東証の売買時間延長、3.日本郵政の第三次公募売出、4.銘柄研究(神戸物産)でお届けしました。

自身の振り返りもかねて、今回の放送の内容も書き残しておきます。放送をご覧になりたい方は、以下から全編をご覧いただけます。

1.株式投資セミナーのご紹介

株式投資セミナーへのご参加の申し込みありがとうございました。ご質問をいただいておりますので、いくつかご回答します。

セミナーの内容を見てみたい

今後メルマガでセミナーの様子を一部切り取ったダイジェスト版を流しますので、興味がある方は長田の無料メルマガに登録してください。さらに無料メルマガに登録していただけますと、90日間の株式投資講座無料メルマガ講座を配信します。毎日、読むだけで少しずつ役立つ投資コラムをお届けします。

米国株は取り扱っているの?

現在は日本株中心に取り上げていますが、今後も定期的に銘柄を紹介してまいります。

2.東証の取引時間延長

東証が取引時間の延長をおしすすめています。取引時間の終了時刻(15:00)はこれまで70年間変わることはありませんでした。取引をしている投資家からは見えない部分ですけれども、取引が終了した後には、その日の終値を用いて証券会社や投資信託の運用会社、信託銀行など投資家に最新の情報を提供する、決済のためのデータを作成するなどのポストトレード処理があります。

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幾度となく取引延長を打診してきた東証

実は、東証が取引時間の延長を証券会社や信託銀行に打診してきたのはこれが最初ではありません。かねてより取引時間の延長を証券会社や信託銀行の実務担当者との間で開催されるワーキンググループで検討したことがありましたが、いずれも取引時間が延長した場合にそのまま業務時間か後ずれしてしまうことを理由として猛烈な反対意見にあい実現しませんでした。

なぜ証券会社などが大反対してきたのかというと、証券会社、投資信託の運用会社、信託銀行などは取引が終了したあとの処理が残っているからです。投資家には見えない裏側の世界ですけれども、売買が成立しただけではなく、決済が終わって株式取引は初めて終了します。

車を購入するときのことを考えてみましょう。車のディーラーで契約書にサインしたとしてもそれだけで車の売買取引が終了したわけではないですよね。車の引き渡しを受けて、初めて取引が終了したと言えるでしょう。

株式投資の決裁でも同じことが言えるのです。決済関係の仕事が完了して、はじめて株式を購入した人は株主になることができますし、株式を売却した人は売却代金を受け取ることができるのです。

投資信託の運用会社も、証券取引所の終値を社内のデータベースに取り込んで、自社で運用している投資信託の基準価額を算出して投資家に提供します。投資信託の価格は毎日動いていますけれども、その基準となる価格は終値です。ですから、この終値価格が出ないと投資信託の価格を算出する時間が遅れてしまうのです。

信託銀行も同様に顧客から預かっている資産の価格などを算出する必要がありますので、後ずれするのを嫌がっていたのですが、交渉の末ようやくまとまりました。

今回は、このように実務担当者との十分な調整をしたうえで、金融庁とタッグを組んだ東証はワーキンググループでの合意を得ることができました。10/27には東証より正式に発表があり、売買時間が延長する方針が決定しました。

東証がここまで取引時間の延長にこだわるわけ

東証がここまで取引時間の延長にこだわっているのは海外の取引所との競争があります。2021年10月現在の東証の取引時間は9:00-15:00で、1時間の休憩をはさみますから5時間。

下図にあります通り、海外の証券取引所では取引時間を7時間程度確保しているところが多く、取引時間の面でやや遅れをとっています。

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取引時間を延長することにより、東証自身も売買高が増えますから積極的に推し進めたい案件でもあり、金融業の国際的地位を高めたい金融庁としても取引時間の延長は長年の課題だったのです。

ただ、ポストトレード処理がありますから、どの国も夕方以降は取引をしていません。なるべく日中の時間は取引することで売買の機会を増やすべく、今後は昼休みの短縮、廃止も検討されていくでしょう。

時間外取引の流動性にはまだ課題あり

次なる課題としては時間外取引の流動性向上が挙げられます。現在はPTS市場がその役割を担っていますけれども、まだ海外の投資家の売買注文をこなすだけの流動性が確保されているとは言えません。究極は24時間したいときに取引できる状態でしょう。この取引体制の実現に向けて今後も証券会社と協力しながら取り組みを進めていくはずです。

東証の改革はまだ続く

前回の放送(10/11)で東証プライム指数について取り上げましたが、これも東証が推し進める改革の一つといえます。すべては国際的に競争力のある取引所を作り上げるための取り組みの一つです。

東証プライム指数は、流動株という要素を取り入れることにより、緊張感をもって株式価値の向上に取り組むインセンティブを企業に与えていますし、売買時間の延長は投資家にとって利便性が高い市場になることを意味します。このほか、HFT(Hight Frequency-trading)の呼び込みのために執行価格の短縮化も目指しています。

HFTは超短期の取引(1/1000秒)の世界で、あらかじめ定められた取引パターンに沿って大量の取引をコンピュータで発注する取引形態のことです。短期で取引する個人投資家にとってはライバルかもしれませんが、長期的に売買する投資家にとっては、デイトレーダーと同じく常に流動性を提供してくれるありがたい存在です。

こうした取組は、直接投資家にとって役立つ改善ではないかもしれませんが長期的には株式価値を向上させる会社の株を、いつでも、すきなだけ売買することができる市場にへんかしていくことは投資家にとって望ましいですね。

3.日本郵政の公募売出し応募する?

日本郵政の第三次売出が発表になっています。今回の売出によって、日本郵政の政府保有分で放出義務がある分はすべて放出することになります。

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第一次、第二次の放出では、それぞれ6,930億円、1兆3,000億円の調達をすることができましたが、今回は株価が弱含んでいますので、その中での大量売出ということで需給の乱れが生じます。公募売出しはブックビルディングという形式で行われます。

ブックビルディング形式とは何か

ブックビルディングとはブック(予約)を積み上げるという方式です。価格決定の二週間前ぐらいから、投資家に対して終値価格から何パーセントくらい割引したら購入するかをヒアリングするのです。今回は10月11日から10月25日までがブックビルディング期間でした。

2%割引するなら買うという投資家が何人で何株、4%割引するという投資家が何人で何株という需要を積み上げていって、実際にどれくらいの割引価格ならば売り切ることができるかを慎重に判断します。

割引率が少ないほうが売出しをするほうからすると手取りが多くなりますのでうれしいのですが、その分買いたいという人が減ってしまう可能性があるからです。何パーセント割引で売出価格を決定する主幹事証券の腕の見せ所というわけです。

ブックビルディング期間中にしか売出は申し込めない

気を付けないといけないのは、価格が決まった後には申し込むことができないという点です。ただ、売り出し価格がいつ決まるかは突然当日になって決まります。今回は10月25日(月)に価格が決まったので、25日の締め切り時間までの申し込みが有効になったのですが、仮に10月26日(火)に価格が決まったとすると26日の締め切り時間までの申込みが有効になったのです。

ということで、売り出しに応募したい投資家は24日までに申し込みを済ませておくことが必要だったと言えます。

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また、ブックビルディング期間で3%や4%の割引価格での応募を希望していた投資家も今回は購入する機会がありませんでした。2%の割引価格でも買いたいという投資家が十分いたので、3%や4%の割引価格を希望する投資家にまでオファーを出さなくとも、希望する株数をさばくことができたからです。

売出応募期間中は価格が下がらない

さて、売り出しをした株は少々ディスカウント価格で購入できるわけですが、それでも価格が決定した売出価格よりも下がってしまった場合には売れ行きが悪くなります。

取引価格を決めた日の終値よりもいくらディスカウントしているといっても、市場価格でそれよりも安い価格で取引されていたら誰もわざわざこの売り出しに申し込みません。

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今回の放送直前で公募売り出し価格が決定されましたので実例を出しますと、価格が決定した10/25は837.4円で取引が引けた。そして2%のディスカウント(▲16.8円)で820.6円で、売出しをすることになった場合、取引所で価格が800円で成立していたら申し込みますか?申し込まないですよね。複雑な手続きをしなくとも、20円以上も安い値段で市場で購入できるのですから。

ただでさえ需給が緩くなる、売る人が多いので一時的に売り圧力が高まるのが売出です。ましてや、1兆円ちかい金額を市場から吸収しようというのですから相当なインパクトがあります。

そこで幹事会社はこの売り出し期間だけは株価が下がらないように、株式の買い支えをすることが認められているのです。下がりそうなのだけれども、価格は横ばいになるというのは、価格を調整するための買いが継続して下値で入っているからです。

証券会社はこうして購入した株式は、売り出し分と合わせて投資家に販売しまする売り出し分で利益を取ることができますから、多少安定価格操作で損失が出たとしてもトータルでは十分な利益が出ます。主幹事証券が下位座さえる効果のことを安定価格操作といいます。

証券会社の現場は大変

日本郵政の売出は証券会社にとっては、手元の割り当てられた株をさばくことさえできれば確実に儲かります。ボリュームが大きいですから、収益変貢献度合いも大きいです。

そこでそれぞれの証券会社では、主幹事証券から割り当てられた日本郵政株の割り当てをこなすため、各支店に販売目標が課せられていきます。それぞれの支店では、担当者ごとに販売目標が課せられます。テレビ広告を打っているぐらいですから、普段からよく取引をしてくれる投資家だけに電話をしていたのでは、販売目標を達成することができません。

毎月営業マンは販売目標を課せられておりますが、こうした重点項目で目標を達成することができないと、支店内で白い目で見られます。はっぱをかける支店長も、かりに販売目標を達成できないと支店長会議で立つ瀬がありませんから、もうみんな必死です。

そこで、普段はあまり取引のない投資家にも一通り電話をかけて、日本郵政の売出しに応募してもらえるよう声を掛けるのです。こうした必死のハメコミュニケーションの結果、日本郵政の株式は政府から証券会社を通じて、投資家に回っていくのです。

一度に同じ価格で取引した人が増えるとどうなるか

この価格で買う人が増えるのでその価格が抵抗価格帯になってしまいます。その価格以上になると売る人が出てきてしまいます。先々のことは株価に聞くしかありませんけれども、

これは2020年で売り出しを実施したソフトバンク株(携帯電話のほうで、グループ会社ではありません)でも同じことが言えました。1204.5円で一斉に買う人が出たので、その後株価が回復する局面では、損失がなくなったところで売却する人が多く、株主が一定度合い入れ替わるまで株価はずっと同じ水準で推移していたのです。

今回の日本郵政株についても同様の値動きが続くことが想定されます。すなわち大量の株式を820円前後で購入した投資家が増えるので、その水準よりも価格が上昇すると、投資家の売却に阻まれてしまうわけです。

業績が好調であれは、買い圧力が高まりますから価格抵抗帯を抜けて上昇していくことも十分に考えられるのですが、今の状態では日本郵政に業績が大きく改善するような期待感はもてません。

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その期待感のなさが、配当利回り5%という水準に表れています。もし、日本郵政株の業績見通しが明るければ株価は倍になっていて、配当利回りが半分の2.5%になっていてもおかしくはないのです。

こうしたことを踏まえますと、目先は株価は横ばいまたは下落基調で推移する可能性が高いと見ています。

売出価格候補日が複数ある理由

売出価格は通常複数の日が候補日として設定されます。今回の売出では、25日、26日、27日の3日が候補に挙がっていました。この売り出し価格決定日は当日まで決定されることはなく、当日の夕方に突然決定します。

事前に売出価格決定日がわかってしまうと、その終値に向かって投機的な動きが出てしまいます。価格が安く下げて安く購入するチャンスをうかがう投資家、その動きを先読みして空売りをする投資家の勢いが強くなって株価が下押しされることを主幹事証券は懸念するからです。

とはいえ、価格は初日に決定する傾向があります。今回もその傾向を見抜いた投資家が一斉に売りを出したので株価が下がりました。結果政府の手取りは当初の9,500億円から、8,400億円に減少してしまいました。

この仕掛け的な値動きの正体は何なのかわかりませんけれども、日本郵政の公募売出しに応募する投資家にとっては安く購入できるチャンスになったことは間違いありません。翌日(10/26)の株価は前日の反動からか大きく値上がりして推移しました。

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今回の売出では価格が随分安く決まり、翌日の申込期間では高く推移するという予想外の展開となりました。今後の価格推移はわかりませんが、しばらく高値では投資家の利益確定売り、安値では幹事証券会社の下支えの買いが入って大きく株価が動きそうです。

このような大型銘柄の価格変動が激しくなっている局面では、個人投資家は何が起こっているのか把握することが難しくなりますので、大きなポジションを取って勝負するのは控えておいたほうがよさそうです。

価格が下がっているのは投資家に対する裏切りだ

日本郵政の株式は、長期チャートを見てお分かりの通り、右肩下がりで推移しています。第一次の公募で購入して、その後の高値で売却した投資家は利益を確定することができていますが、それ以外の投資家はさしたる利益も上げることができすに、損失が膨らんでいる状況です。

政府が売却するのは勝手ですが、これを大々的に宣伝した挙句に、株価がこの体たらくというのは、確信犯ではないかと疑ってしまいます。こうした有名株は、株式投資をしたことがない投資家にも日常生活でなじみがあるので購入する人も多くなります。

安心、安全のような雰囲気でマーケティングをしてきても、結論として株価が下落して巻き込んだ人を損させているのです。一般の銘柄ならともかく、こうした銘柄は初心者が購入しやすい。結論としては、目に触れさせなかったほうが投資家のためでした。日本郵政の経営陣には、後から私がこの記事を謝罪したくなるぐらい、業績をあげてもらいたいものです。

4.銘柄研究:神戸物産(3038)

さて、ここからは話題を変更して神戸物産の話題に移りましょう。神戸物産という名前よりも、業務スーパーといったほうが通りがいいかもしれません。格安価格で全国に次々と店舗を出店して一躍有名になった会社です。

考え抜かれたネーミング

神戸物産という会社名は、神戸の港町、古くからの貿易港というイメージをうまく使った、ブランドイメージのいい商社という印象を与えます。実際の神戸物産は兵庫県の加古川市にあって、神戸市とは全くちがうのですが、神戸以外の人にとってはいい印象があるだけですから、これはネーミングの妙ですね。

業務スーパーという名前も、消費者のイメージをうまく利用した名前です。買い物をする消費者には、飲食店を営むプロ御用達の店舗というのは大容量で安く購入することができるというイメージがあります。このイメージをうまく使って商売をしてみようと考えたのが業務スーパーの創始者、沼田昭二氏です。

実際にどうかはともかくとして消費者のイメージをうまく形にしたのです。業務用の店舗だから、場所が悪くてもいい、店内の装飾がしょぼくてもいい、とにかく大容量で安い商品をうっているのだ、というイメージをさかてにとってそうした店舗を作り上げていったのです。

神戸物産の沿革

では、神戸物産の沿革を見ていきましょう。もともとは食品スーパーとして40年前にフレッシュスーパー石守としてスタート。その頃は普通の生鮮食品もとりあつかうスーパーでした。その後は地域の競合店舗との競争が激しく業績は次第に右肩下がりに。オリジナル商品を安い値段で提供するために、中国に食品工場を建設し、独自路線を切り開きます。

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中国で大量に安い商品を作って売る。デフレが続いた1990年代後半(2021年現在もデフレから抜けきってはおりませんが)に必勝パターンだったこの戦略で、店舗網を拡大して、さらに商品を大量に販売していくことで継続的な成長を狙っていくことを考えた沼田社長は、社名を神戸物産とし、フランチャイズ形式で加盟店スーパーを募集していきます。

その後業績拡大とともに大証二部に上場、2013年には東証一部に上場しています。2019年はタピオカが一躍ブームとなりましたが、タピオカの原料を販売していたこともあり一躍知名度が向上しました。

2021年には、未出店だった宮崎県に出店して、47都道府県の出店を制覇。店舗数も900を超えています。

進出も早いが、撤退も早いのが特徴

神戸物産は、業務スーパー以外にも、レストラン事業、海外事業を次々と立ち上げていますが、失敗すると即座に撤退しています。見切りが早いのです。現在では、業務スーパーの購買力を活かした食べ放題の店舗を数点出店していますが、私が行くまでには店舗が続いていてほしいです。早くいかなきゃ。

破天荒社長を継いだ二代目社長

初代社長である沼田昭二氏は、何もないところからビジネスを立ち上げた人物です。このビジネスモデルは一般的ではなく、スーパーで特化すべき分野の選定、大量生産とローコストオペレーション、フランチャイズの活用という組み合わせで、これまでにない業態を立ち上げました。

二代目を引き継いだ息子である沼田社長は、これまでの成功モデルの基礎は踏襲しながら積極的に新しいビジネスに取り組んでいます。現場の声を聴きながら、現実的な成長を目指しています。初代と二代目はおかれている環境が違います。なんでもありで、時にはコンプライアンスも無視して買ったもの勝ちという勝負に勝ち抜かなければならない初代と、ある程度企業が成長した段階で就任する二代目社長は求められる能力も違うのです。

中国毒餃子事件の対応で株を上げる

業務スーパーといえば、2007年の中国猛毒冷凍餃子事件を忘れるわけにはいきません。当時中国からの輸入品で安い価格で商品を提供するというイメージの強かった業務スーパーにとってこの事件は大打撃となりました。

日本中で中国の食の安全性が疑問視されて、業務スーパーの客足型ぱたりと途絶えたのです。このままでは店がつぶれてしまうという悲痛な声が加盟店から寄せられる中、神戸物産の経営陣は、中国の冷凍餃子の全量検査にふみきったのです。

品質検査は輸入されるコンテナの一部をあけて、内容をサンプル調査する手法が一般的ですが、神戸物産は当時輸入していた餃子について、すべてのコンテナをあけて、内容を調べたのです。当然物流コストがかかりますし、倉庫代もかかるのですが、食の安全を確保することが最優先と判断したためてじた。神戸物産だけでなく日本中の食品メーカーが対応したこと、中国側でも再発防止措置が取られたことから次第に自体は鎮静化。

結果として神戸物産は翌年過去最高益を上げることができたのです。

フランチャイズスーパーという独自形態

さきほども述べましたように神戸物産はスーパーなのにフランチャイズ形式という独自のスタイルをとっています。少数の直営店舗をのぞいて、業務スーパーはほぼフランチャイズ店舗なのです。各加盟店が経営する業務スーパーに卸す段階で商品に1%のロイヤリティを取るのが神戸物産の売上になります。

基本的には本部が開発した商品、PB商品などを仕入れることになるのですが、それ以外の商品を取り扱うことを認めている点でコンビニのフランチャイズ店舗とは違います。コンビニではセブンならセブンといった形で仕入れられる商品の種類が決まっており、それ以外の仕入れ先から仕入れることは原則としてできません。

一方業務スーパーでは、それまでの生業によって精肉を取り扱うことや、雑貨店舗を併設することも認めているというゆるい形態なのです。それだけ、業務スーパーでしか買えない商品の競争力が高く、自陣があるということの裏返しです。

地域をそのままフランチャイズ化

さらに特徴的なのが、特定の地域のフランチャイズ権を特定の企業にエリアごと任せてしまう場合もあるのです。その地域では、フランチャイズ加盟店が、さらに加盟店舗を募集するという孫フランチャイズという形式がなりたっています。地域を有力な事業者に運営してもらうことで、神戸物産としてはより早く地域に店舗展開をすることができます。これが20年間で900店舗以上をスピード出店した秘密なのです。

やらないことを決めているスーパー

業務スーパーではやらない分野を決めています。それは、少量への対応と生鮮食品の取り扱いです。少量パックを取り扱うことで、顧客の絶対数は増えますが、大容量パックによる安い値段の提供ができなくなります。

例えば業務スーパーでは、冷凍の鶏肉が2kg単位で販売されていますが、これをさらに小さい単位、我々がスーパーで普段見るような、200グラム、300グラムという単位には小分けしません。この小分けを省くことによって業務スーパーでは国産の鶏肉もも肉2kgが1,500円という価格、100グラムで言えば75円という安値で提供できているのであって、小分けにしてしまうとどうしても100グラム100円程度になってしまうのです。

他にも生鮮食品、野菜や魚などを取り扱わないという特徴があります。生産食品は仕入れ値段が安定していないのですが、品ぞろえを確保するために一定数量仕入れなければなりませんし、売れ残った場合には廃棄しなければなりませんから、廃棄分だけ販売する商品の原価が上がってしまうのです。

野菜も店頭についてから販売するまでの間に野菜によって細かい取り扱いの違いが出てきますので、経験・知識がない従業員が取り扱うと商品の状態を劣化させてしまう恐れがあります。したがってこうした商品を取り扱うためには、従業員のスキル向上を図らなければならず、従業員コストが上昇してしまいます。

常温保存商品、冷凍商品は取り扱いに気を使わなくていいので、加盟店側が従業員のレベルを気にすることなく加盟できるというわけです。

激安プライスを支える専用工場の秘密

さて、業務スーパーを訪れますと、異様に安い商品にでくわします。番組でも和田さんがコーヒーゼリーについて熱く語っていましたけれども、この牛乳パックデザートが代表例でしょう。

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この激安プライスは業務スーパーの独自ブランド商品、いわゆるPB商品なのですが、これらの商品は業務スーパー専用の工場で作られています。神戸物産はこの工場を激安価格でこれまで買収してきました。

2000年代の後半から、各地で操業に行き詰った工場を激安価格で買収してきたのです。普通に買収すれば3億、5億とかかる工場を8000万程度で買収するといった具合です。投資金額が少ないので、工場の投資金額を商品価格にのせて回収するまでの期間が短く、一度回収し終わったらあとは激安価格で商品を生産し続けられるということです。

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これも業務スーパーが全国に店舗を有しており、そのラインに商品を載せることができれば一定の売上が確保できるというつよみがあるからできることです。この点は、イオンのプライベートブランドと似ていますね。ただ違うところは、イオンは協力工場に生産を依頼しているのに対して、業務スーパーは自社で工場を所有しているということなのです。

一定の生産量を確保することができれば、工場を保有したほうが利益が出やすくなりますが、反面工場の稼働率が下がると利益率が低下してしまいます。売れる商品を作り続けるというリスクを負っている代わりに、業務スーパーは安い値段で商品を作ることが手来ているのです。

2015年以降は大きな買収がないのですが、これは再生ファンドがライバルとして登場したために、著しく安い価格で買収できる案件がなくなったためと考えられます。

ローコストオペレーションを徹底する

業務スーパーはまず駅から離れた不便な場所にあります。これは、テナント料を下げることで、固定費を削っているためです。通常であれば立地のいい場所に出すことは顧客数を増やしつつ、薄利多売で儲ける戦略をとります。ロピアやドクキホーテも駅前、そうでなくても主要幹線道路沿いに出店しますが、業務スーパーの出店場所はそうした要素を考えません。圧倒的な価格の安さで顧客を遠くから呼び込めることがわかっているからです。

ダンボールの陳列に工夫あり

段ボールの陳列もよく見てみると無造作に置かれているわけではないことに気が付きます。品出しをする回数を極限まで少なくするために、同じ商品のダンボールを積み上げているです。一つのカートンが売切れたら、その下のカートンのダンボールをあけて、素早く商品を品出しします。商品がなくなり次第、バックヤードにいって棚に並べるというのは従業人にとって時間がかかりますから、それを極限まで減らしているのです。

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私もこの点を注目していたら、確かに品出しに特徴があることに気が付きました。ダンボールのまま販売するというのはスーパーの常識からは考えられないことですけれども、従業員の数を減らして運営するには最適の方法です。なにしろ段ボールの中で商品がすでに並べられているのですからね。

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冷凍食品のショーケースは特注品

業務スーパーの冷凍食品は常に店舗の中央にあります。冷凍食品は日持ちがしますし、お得な商品を作りやすいので、顧客へ訴求しやすい。ショーケースを中央に配置することで顧客が店舗の真ん中まで足を運ぶということです。冷凍食品は壁際に配置することが多い中でこれも業務スーパーのとくちょうといえます。そして、業務スーパーでは、このショーケースも通常よりも大きなものを使っており、一度に大量の商品を品出しできるようになっています。

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加えて、売れる商品は目立たないような場所に配置しており、逆に売れなさそうな商品をプライムゾーンに持ってくるという小売業の常識を逸脱した陳列方法も特徴的です。業務スーパーの冷凍食品を買う顧客は指名買いなので、どこにあるのか探してくれる。だからいい場所を割り当てる必要はなく、いい場所は売れにくいけど、スーパーとしては売りたい商品を並べるスペースとして活用しているのです。

壁際の商品ラックにも工夫あり

棚のラックも特注品です。通常であれは45cmの奥行きがあるものを使うのですが、業務スーパーでは75cmの奥行きがあるラックを利用してます。品出しがこれもまた一度で済むというメリットがあるからですね。顧客としては手元に商品がなくなったら奥に手を伸ばして取らなければなりませんから、購入する確率が下がってしまいますが、それよりも従業人の作業効率アップを図ったほうが生産性が高いという判断なのです。

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輸入食材も豊富

国内商品だけではなく、常時1,400品の輸入品を用意しているのも業務スーパーの強みです。業務スーパーには、輸入商品を買い付ける専属のバイヤーが20人ほどいて、それぞれのバイヤーが世界各地から魅力的な商品を仕入れています。この判断については広範な決定権限が与えられているようです。日本人の感覚では売れないだろうと考えてしまう商品もありますが、国際色豊かなバイヤーが海外ではやっている商品を見つけているのでまずは売ってみようという姿勢のようです。

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放送でもありましたように、私も実際に輸入商品を購入してきました。輸入商品というと価格が割高な印象がありますが、業務スーパーの店頭に並んでいる商品については、国内製造の商品とあまり変わらない値段で販売されています。タイ、ブラジル、アラブ、メキシコ、ドイツなど様々な国のお菓子が並べられていて、目新しいので思わず手に取ってしまいます。冷凍ショーケースの上に置かれているという、ほかのスーパーではまずありえない配置ですね。

最近では総菜に注力する店舗も

これまでは総菜には注力してこなかった業務スーパーですが、製販一体化を進める中で、総菜コーナーを併設する店舗も現れるようになってきました。馳走なというブランドでいま40店舗を展開しており、順次拡大中ですので、そのうちお近くの業スーでも総菜コーナーが登場するかもしれませんね。

ここでも、なるべく店舗でのオペレーションが楽になるように、工夫がされています。サイゼリヤのように各店舗での調理を少なくすることで、現場の負担が少なくなるようなビジネスモデルを検討しているのです。

製販一体をさらに推し進める

業務スーパーでは、これまでのように、激安価格で販売する、工場をもつという取り組みのほかに、生産拠点を自分で作るという取り組みを進めています。食の六次産業化、すなわち生産(一次産業)、加工(二次産業)、販売(三次産業)のすべてにかかわることで、より消費者がもとめるものを手ごろな値段で提供することを追求しているのです。

一例として、北海道で大農場を経営、鶏肉加工工場の近くに養鶏場を建設などが挙げられます。この流れが強くなっていくと、さらに業務スーパーは価格面での訴求力をもち、他社との参入障壁を持つことになるのです。

毎年業績拡大が続く

業績については文句なしの増収増益を続けており、株価も順調に上昇しています。

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身近にある銘柄は上場していないかチェックしよう

今回は神戸物産(業務スーパー)について取り上げました。業務スーパー自体は知っているという方も多かったでしょうが、この会社が上場していることをどれだけの人が意識していたでしょうか。株価が急騰する会社は伸び盛りですから、マスコミで取り上げられることも多いですし、業務スーパーであれば家族、友人、職場の同僚との会話で出てきたこともあったでしょう。日常生活に上昇する銘柄のヒントは隠されています。儲かる投資家は常に投資に結び付ける習慣を持っています。

株式投資虎の穴について


株式投資虎の穴は初心者向けに、株式投資を面白くお伝えするインターネット放送です。オンザボード代表和田憲治氏と、サラリーマン投資家長田淳司が対談形式でお送りしています。

隔週月曜日放送で、次回は11/8(月)20:30~22:00の時間に放送します。次回は、テスラ(TSLA)を取り上げます。放送内容の事前告知などはツイッター(@nagata_junji)をフォローしてご確認ください。

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