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経済誌欠席裁判(2021/5/10)の感想その2(単元株100株について)

売買単位統一の裏にJCOMあり


続いてジェイコム事件についてお話しします。100株単位についての話をする際にはどうしてもJCOM事件を欠かすわけにはいかないのです。

ジェイコム事件は2005年、今から15年前、2005年に発生しました。当時は東証のシステムも前世代で今のアローヘッドから見ますと、旧式のシステムだったですが、みずほ証券の注文者が615000円で一株株式をジェイコム株式を売却するつもりで発注を間違えて615000株を1円で売却注文を出してしまいました。

プロは手持ち以上の株を売ることができる


個人投資家の場合であれば、実際に証券会社の口座にある口座の範囲内でしか株式を売却すること出来ません。システムで制御がかかっていて、保有している分しか注文を出せないようにロジックが組まれているからです。

けれども機関投資家の場合は手元にない株も売却することができます。信託銀行など他社に預けている株式を売却する場合もあるからです。売る注文を出しておいて、その後株式を預けている信託銀行に依頼して売却する株式を移動させる場合もあるのです。個人投資家のような機械的なチェックはむしろうっとうしい場面もあるのです。


みずほ証券の事件では、取引を実行する際にアラートはでてくるものの、いつも出てくる取引画面とあまり買わないということもあってみずほ証券の担当者はこの誤発注を場に出してしまいました。

誤発注という獲物を狩るハンターたち

この程度の株式は1株単位で売買されますが、多くても数百株程度です。615,000株という、あきらかにわかりやすい間違いだというのが価格からもわかるような注文が出たことから、機関投資家、および目鼻の聞くプロ・セミプロ投資家の間ではこれが誤発注であることが即座に知れ渡ることとなりました。

機関投資家や証券会社はもちろんのこと、個人投資家もこのお祭り騒ぎに参加します。勝利を確信した投資家は、なるべく多くのお金を信用取引も使ってJCOM株にぶち込みました。明らかに間違いなのですから、それが訂正される過程で必ず利益が出ます。

JCOM男の誕生


この騒動で巨万の富を得たのがかの有名なJCOMさんでした。ここまでおおきくはないものの、これで巨万の富をえた投資家は複数います。

機関投資家も個人投資家も大きく稼ぐことができましたが、みずほ証券はあまりにも可哀相だということで機関投資家については返還。

またはみずほがミスをしたのは間違いないからということで同額を寄付するという形で間接的に資金を返還した会社もいくつかあります。

100株統一運動の開始

こういった事件がひとたび起これば、東証としては再発防止をしなければいけませんから、全国の証券取引所と共同で単元株式をそれまでの8種類から、2種類、そして1種類と統一するプロジェクトを開始しました。

2007年当時は1株、10株、50株、100株、200株、500株、1000株、2000株と売買単位が8つもありましたけれども、これをまずは1000株と100株単位に、そして最終的には100株に統合しようという動きが出てきました。

2018年10月には無事そのプロジェクトが終了し、現在では株式投資をするとなると100株単位で買うのが統一のルールになりました。

誤った発注が発生しないという意味ではこれで終了なのかもしれませんけれども、今後東証が世界と互角に戦える証券取引所になることを最終的な目的にしているのであれば、今の改革というのは不十分です。

アメリカでは1株単位で株式を購入することができますし、完全な権利も与えられます。余った少しのお金を拾い上げていくという意味で、やはり1株単位のほうが有利ですので、今後はそのうち改善されるでしょう。

香港が習近平の金融政策によって、金融センターとしての地位を失いつつある今、アジア圏で金融センターを果たすことができる場所として、シンガポール、韓国そして日本の三つが挙げられます。

100株単位では改革は足りないのでは?

もし日本に金融ハブ拠点としての機能を持つのであれば少しでも取引しやすい株式市場を整備することが不可欠です。100株に限定している理由の一つとして、システムの売買注文の余力がどれだけあるかということでしょう。

売買単位を小さくすればするほど、売買件数は増加します。売買件数が増えれば、売買を処理するITシステムに負担がかかるのです。取引所が取引が止まってしまっては大変です。

かつて東証も何度か売買高が理由でシステムダウンしたことがあり、そのたびに取引の機会損失が発生したと散々たたかれました。また、監督官庁である金融庁へ報告しなければなりません。

直近では2020年10月1日に、終日現物売買が停止するという事件がありましたね。

その点を懸念して安全運転しているのではないかと思われますが、アメリカが1株単位で取引できている以上、透明性の高い証券市場を作るということであれば、将来的には目指す取引所の姿としては1株単位の売買ができる取引所であるはずです。

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