見出し画像

株式投資虎の穴(1/24)を5分で振り返り

皆様こんにちは。久しぶりに Note で株式投資虎の穴の記事を書きます。


今回は1月24日の放送分です。株式が大きく下落しているところでの放送となりました。番組の詳しい内容についてご興味がある方は以下のを YouTube チャンネルから全編ご覧いただけます。

今回の放送ですけれども1.株式投資でグロースからバリューへの転換、2.黒字でも続く城上場企業のリストラ、3.どうなる楽天投信のポイント付与率、4.食料価格高騰に食品メーカー苦悩、5.マイクロソフトゲーム会社買収、6.銘柄研究 DeNA という内容でお届けしました。

それでは1番から順番にみていきましょう。

1.株式投資でグロースからバリューへの転換

まずはグロースからバリューへの転換です。今回は割高成長株から割安成長株に資金がうごいています。端的に言いますとこれまで成長性が評価される環境だったのですけども、それが企業の業績を重視する相場がやってきた、というフェーズです。

成長性が確認できればそれでいい、というのは資金あまりの相場での特徴だったのですが、今や口だけではなく、業績が確認できて、それもあまりにも買われすぎてはいない、ということが求められている、そんな状況です。

それにしても、ここまで暴落するのか?という疑問もありますが、これまで多額の資金供給によって相場の上昇を演出してきたFRBに敬意を払っているという見方もできます。2021年10月までアメリカの FRB パウエル議長はインフレの懸念というのはあくまで一時的なものであって、今後も恒久的に上昇するものではないというメッセージを出し続けていました。

つまり金融緩和を今すぐにやめることは考えていないというメッセージを伝えていましたから、相場に参加する投資家は、まだまだパーティタイムが続く、金融緩和状況が続くということを伝えていたのです。

最近11月になってインフレ傾向が強まったことで、さすがにインフレ退治のために金利を上昇させることが大事だ、と言い出したわけですね。

これまで金利上昇は頭になかった、タダ同然でファイナンスができる状況は今後も続くと思い込んでいた投資家に取って、これは寝耳に水のニュースでした。

市場参加者はこのニュースで割高成長株の収益性が著しく悪化するとの思惑をもち、株式投資で大きく売りが先行することになってしまいました。これまでPERはあまり意識しなくても良かった相場はいつの話やらで、今ではみな血眼になって業績、業績と騒ぐようになっています。

特に、ここまで一本調子で上げてきた銘柄というのはその反動で売られることが多く、アメリカ株、日本株を問わず割高と言われるものは大きく下がっていました。

私のポートフォリオも割高なものはずいぶん下がってしまいました。どんな悪材料が出るかは分からない。成長がくずれた銘柄にナンピンを入れることほど恐ろしいことはない、ということをまざまざを見せつけられました。

最近Netflixが暴落した局面では、これまでであればここまでの悪材料ではなかったはずですが、株を売るための材料として捉えられて下落しました。

その他にはですねと新型コロナ関連銘柄というところでズームやモデルナなどの新興株は立て直しの機会なく売られ続けている状況です。

そもそもグロースとバリューとはなんぞや、という人もいらっしゃるかもしれませんのでここで解説しておきましょう。バリューは、いわゆる割安株といわれて企業業績から見て、市場平均程度、またはそれ未満の水準にしか買われていない銘柄です。

伝統的な大企業がバリュー株に属します。すでに長年株式相場で多数の投資家の評価にさらされているので、株価の居所がはっきりと分かっているような銘柄です。トヨタ自動車、東京海上、三菱商事などの銘柄が典型例でしょう。

株式益回り、株価に対してどれだけの利益を稼いでいるのか、という指標でみると6%以上稼いでいる会社が該当するでしょう。そのうちの2割から3割ぐらいを配当金に回すような企業がバリュー株です。内部留保もたくわえ続けているので、少々のことでは配当金をへらすことはありません。

一法、成長性は高いけれども株式の益回りからみると1%、2%しかない銘柄のことを割高なグロース株といいます。国内であれば、エムスリー、MONOTARO、神戸物産、ワークマン、弁護士ドットコムなどの銘柄が該当します。

企業として成長はつづいているとしても、その成長性が過度に期待されて大きく上昇した場合には、飛び乗ることは危険であるうえ、いつかは下落に転じる。大きく上昇した銘柄ほど、下落もまた激しいものになる、という事実はも頭に入れなければいけないと思いました。

問題は、この傾向がどこまで続くのか?ということですが、歴史的に見てもずっとバリューが評価され続ける相場はありません。あくまでも利回りを求める投機マネーを吸収できるのは、株式市場しかなく、割高成長株と、割安成長株の間をいったり来たりを繰りかえしています。

機敏に入れ替えをし続けるというのは難しいことですが、自分がどのような取引を狙っているのか?を考えながら投資方針を決めるしかありません。大化け狙いであれば、当然株価が半額になることも覚悟の上で投資しますし、配当金がもらえればいいというのであれば割高成長株に投資しないほうがいいでしょう。

この三年間皆さまに情報発信してきて思うことは、やはり成長株は手間がかかるものですし、様々なことを考えなければならないので、万人に向いている投資法ではないな、ということです。

精神的にも試される場面があります。とはいえ、私は成長性のある銘柄に投資するのが好きですので、どんと構えて、少しずつ配当金を継ぎ足しながら成長株を買い続けていきます。

2.黒字でも大企業のリストラ

続いて、2.黒字でも大企業のリストラのお話です。米国企業と比較した日本企業の特徴は一時的なリストラです。米国企業は業績の良しあしに関わらず、常に収益力の高い分野への投資をもとめられており、リストラは恒常的なのですが、日本企業は企業の業績が大変悪化したところで、リストラをするのが一般的です。

普段はなかなかできないので、リーマンショックや新型コロナウィルス蔓延など、大義名分が立つ機会があって合理化を進めるのです。

私も長期雇用を前提とする企業で働いておりますので、よほどのことがないとリストラはしていません。退職による自然減で調整しています。

昨今のコロナショックでは事業環境が激変しているので、これまでのようなゆっくりとした対応では追い付かないと判断した企業は、希望退職という形でリストラを進めています。

そのリストラをしている企業数。東京商工リサーチによりますと、二年連続で80社を超過しています。この規模のリストラは2008年、続く2009年のリーマンショック直後でした。この時はどういう理由でリストラをしたのか。

それは業績が大変苦しい状況になっており、リストラしなければ会社そのものが潰れてしまうという状況でやむにやまれず選択肢としてリストラをしていました。

しかし、今の状況はちょっと異なります。企業が黒字でもリストラをしているのです。特に業界の動きが大きく動いていて、配置転換では追い付かない。

また、スキルを持った人材に活躍してもらう場面がすくなくなっている。企業として飼い殺しにするよりも、合理的にその人に活躍の場面を与えるという意味でも、他社でその実力を発揮してもらうほうがその従業員にとっても望ましいのかもしれません。

リストラというとネガティブな響きもありますが、希望退職では気持よく辞めていただくために退職金をうわましするケースが一般的です。そもそも希望退職を募る企業は、大企業で経営体力に余裕がある企業であって、それなりに恵まれた待遇で退職することができます。

自動車業界ではホンダが希望退職を募っていましたが、応募して辞めた人は次の職場でも技術をいかんなく発揮できる上に通常退職まで務めた場合よりも多めの退職金を受け取ることができて、実は満足しているという人も多そうです。

少し話はそれますが、短期的な利潤を確保しようとする傾向の強いアメリカ企業と比して、日本企業、特に非上場の老舗企業は企業の永続性を重要視している傾向があります。創業100年を超える老舗会社は5万社以上あるといわれており、人と資金に余裕を持たせることで企業文化を存続させようという意識があります。

上場企業では、利益を求める投資家が多数株主になっていますから、非上場企業のようなふるまいは通じないのですが、これまではその傾向がありました。

リストラをしないというのは、ノウハウや人を社内に溜めていくことです。常に増収増益を続けることは、どの会社もできることではありませんが、いざというときの備えをしておくことはできます。給料を上げ続けるのは難しいですが、入ってきた給料から一定額を貯蓄に回すのはだれでもできます。

いいときもあれば、悪い時もある。そのなかで会社が資産をためておくことで歴史の荒波にも耐えて企業を残すことができる、先代から引き継いだ会社を次世代に引き継ぐということが目的の会社もあることでしょう。

上場企業は、収益性を確保すべき。株主からお金をあずかっているのが経営であり、企業というのは常に収益性を高めなければならない、という命題はシンプルで説得力があります。村上ファンドといったアクティビストが資本市場で受け入れられることになっているののはその表れでしょう。

成長し続ける会社を目指すというのは、一面でこうした部分も含んでいるということになります。資本主義の本場アメリカの企業文化では、会社がある限り設けることが重要視されます。より早く投下資本を回収して儲けを考える。業績に厳しくいかに短期で投下資本を回収するか、が求められる世界です。

株式投資をしている側からすると1円でも多く配当してほしいという偽らざる本音はあります。特に事業自体に思い入れがなく、どれだけ自分の投じたお金が増えるか?という観点から投資する投資家からすると、お金を余らせておく、人を余らせておくというのはもったいないという発想になります。

こうした論調で昨今の傾向を論じることは簡単ですが、一方で存続していくこと自体に重きを置く企業もある。ただ、一つ言えるのは、長く続いた企業にしか残せない文化というものがあるということでしょう。皆さんはどのようにお考えでしょうか?

3.楽天投信ポイント付与率悪化

次に楽天投信の話。ポイントについてお話ししました。これまで楽天証券は、証券口座開設数でSBI証券に遅れをとっていました。そこで、楽天経済圏に属していることのメリットを活かす形で、積立投資に楽天ポイントを付与することで新規積みたて顧客を増やしてきました。

金融商品はどこで商品を買おうが全く同じ商品です。どうせ買うならばオトクな楽天ポイントがたまる楽天証券で積立をしようというお客さんが、20代、30代を中心に増加したのです。楽天証券としてはお客様が増えていきましたから、
ただ、ポイントに惹かれて投資をする顧客層は、オトクであることが口座開設の要因ですから、あまり頻繁に売買しません。

証券会社にとって手数料を支払ってくれる優良顧客ではありません。証券会社は信用取引でバンバン売買してくれるお客さんがいなければ成り立たないというのが現状なのです。私も長期投資家ですから、証券会社にとってはいいお客様ではありませんね。

そこにもってきて、投資信託業界、とくにインデックスファンド業界は熾烈な手数料引き下げ合戦が行われてきました。これまで1%取ることができた商品が0.9、0.8と下がっていきます。有名なemaxis slimシリーズのオールカントリーでは、投資信託の購入手数料は無料、年間で支払う信託報酬も0.11%まで下がってきたのです。

楽天証券としては、積立の金額に応じたポイント還元、クレジットカードでのポイント還元で赤字になっていた商品も多いでしょう。積みあがっていく投信残高からは一定の割合で信託報酬が取れるといっても、これらのプロモーション費用がかさんでいたのは事実です。

人は、最初はオトクではじめたものでも、しばらく続けていると別の理由を考えだして、行動を継続します。楽天ポイント付与率を下げるということは今までのようにお得じゃなくなるのですが、これまで積み立ててきた投資信託を他の証券会社に移管する手続きはめんどうなものです。そもそも、できることを知らない投資家もいます。

しばらく楽天証券で積立を続けてきているし、顧客獲得という意味ではマイナスなんですけれども、恐らくそこまで顧客は流出しないだろうという読みから、このタイミングで収益性を向上させる方向にかじを切ったということです。

いま思いついた話ではなくて、ずっと前から考えていて、ここで踏み切った。十分に個人投資家の投信積みたて先としてのブランド力が強化されましたから、別に大盤振る舞いしなくても、他の証券会社と同等のキャンペーン水準でも十分に顧客を獲得し続けられるという判断ですね。

こうしたポイント改悪は、拡大するマーケットを取りに行く段階が過ぎるとよく発生します。投信業界でも個人投資家を囲い込むべく競争を繰り広げてきたのですが、知名度がある程度上がれは次第にオトク度を下げていく。名前がない分、オトクでお客を惹きつけるが、いつまでもやる施策ではない。これは他の業界でもよく見られる傾向ですので覚えておいていいでしょう。

楽天の場合には、楽天経済圏の一環として取引をしている人も多いでしょうから、一度投信の積立を楽天証券で始めれば、例え改悪があったとしてもなんとなくその部分だけ移行するのは気が引けるものです。例え他社のほうがオトクだとしても、動かしにくい。

その心理を突いてきているのはさすがだな、と感じました。ということで、今後楽天証券が気前よくキャンペーンをすることは、他社が目玉キャンペーンを打たない限りはないでしょう。

4.食品メーカーも値上げに苦慮

続きまして食品メーカーも値上げに苦慮している、というトピックに参りましょう。最近ですね小麦・とうもろこし・大豆などのコモディティ価格の上昇が止まりません。

株式市場の価格上昇は、株式を保有していない人には影響はありませんが、商品に値上がりがおよぶと幅広い人々に影響が出てきます。各国中央政府によってもたらされた大量の投資マネーは株式市場だけではなく、仮想通貨、不動産、そしてコモディティにもなだれ込み続けたのです。

国際的な小麦価格は、アメリカシカゴの先物取引所でやり取りされる価格が指標となります。インフレ傾向が強まり、ここ5年で小麦価格が急騰しているのがお分かりいただけるかと思います。これに加えて、円安、原油高、輸入のためのコンテナ代金の高騰などがつづいており、食品メーカーとしては金額を引き上げざるを得ない状況になりました。

2022年1月以降の値上げを公表している食品メーカーの代表的な会社を上げましたが、そのほかにも値上げを公表する会社はこれからも続々と増えるでしょう。私も近所のスーパーマーケットでお買い物をしていると、小麦や油の価格が上昇しているのを実感します。以前はセールで安くなることも多かったのですが、次第にセールの回数が減っています。

放送では、山崎製パンの話をしました。食パンはもはや国民食ですから、消費者は安い値段で買うことが当たり前になっており、大手の食パンはとてつもない安い値段で販売されています。

値上げするととたんに売れなくなってしまいますから、スーパーマーケットの仕入れ担当者は厳しい納入価格をメーカーに要求してきます。値上げさせてください、といってもでは買いません、というのがこれまでのスーパーとメーカーのやりとりだった。

そこで、商品の質はおとさず何とかリザヤを確保するためにメーカーが苦肉の策として使っていたのが容量をへらす、というものでした。または上げ底にするなどして、値上げを感じさせない手法がここ数年間続いていました。

しかし、それもいよいよ限界に来たようです。今回山崎製パンが発表した価格は年間で10%くらいですから、大きな値上げです。150円のパンであれば、平均で15円の値上げになります。

短期的な価格高騰であれば、メーカーは小売市場におけるシェアを落とすことを懸念して価格を据え置きますが、各社が一斉に値上げに踏み切っているというのは、もはやこれが短期的なトレンドではない、と判断しているということです。

また、この値上げは今年一回限りで終わるわけではないということに注意が必要です。これからも商品価格が上昇をつづければ、当然小売り希望価格を引き上げ続けることはかんがえられます。30年間、物価がまるで上昇してこなかったトレンドがついに変わり始めたのかもしれません。

私たちの生活でどれだけ物価が上昇したかということを示す消費者物価指数。これにはいまだ大きな上昇は見て取れないのですけれども、これは昨年前菅首相が強烈なリーダーシップによって携帯電話料金の引き下げを大手メガキャリアに指示し、実際に携帯電話の通話料金が引き下げられたことが幾分影響しています。

普段の身の回りの食品の価格、特に輸入品はじわじわ上がっていたのですけれども携帯電話の料金が下がったので、相殺されてあまり上がらなかったという見方もできます。ただ来年は携帯電話の料金が下がった影響が剥げ落ちます。一層商品価格の高騰によりインフレが目に見えて出てくる可能性があります。

5.Microsoftがゲーム大手を買収

続いて、 Microsoft がゲーム大手の会社を買収したというトピックをご紹介しました。Microsoft くらいの大きい会社になりますと、自分達が成長するためにはオーガニックに新規事業を立ち上げて、ということをやっていたのではスピードが上がりません。

世界中で成功しているベンチャー企業を次々に買収していき、グループとしての規模を大きく拡大していくのがGAFAMの手法です。

ベンチャー企業の社長も、自分達で最後まで会社を大きくすることよりも、GAFAMの傘下に入ったほうが明らかに経営が安定します。顧客獲得のコストが著しく下がります。また、優良ベンチャーに対しては、GAFAMは飴とムチで対抗することが有名です。

最近では有名どころとしてはZOOMがあげられます。中国初の起業ということで安全保障上の問題もあったとは言われていますが、これだけの規模の会社ですから、新型コロナウィルスを契機に一斉に広がったオンライン会議用のアプリとしてのZOOMはGAFAMの買収対象になっていたことは間違いありません。ただ、ZOOMの経営者は傘下に下ることなく、ここまで拡大してきました。

独立の姿勢を見せ続ける会社に対しては、惜しみなくリソースを投下して、新規企業の息の根を止めるのがこれまでのやり方です。マイクロソフトは古くはブラウザ競争ではネットエスケープをつぶしました。表計算のロータス、ワープロソフトの一太郎もそれぞれエクセル、ワードになりました。その後、Googleが無料で利用できるGoogle document、Google spreadsheetを発表していますが、エンタープライズ部門のシェアは揺らぐことはありません。

今回もZOOMがシェアを伸ばし続けているところに、マイクロソフトはチームスというサービスで抵抗します。企業に対しては、サブスクリプション型でマイクロソフトの商品をまとめて提供していますので、企業としてはTeamsの導入コストは、ZOOMの導入コストよりも安いのです。

私の勤務先でも、ZOOMは使うことはなく、Teamsでオンライン会議をしています。通信スピードや音声はやはりZOOMのほうがなめらかですが、特段会議に支障があるほどではありませんので、商売のうまさには勝てないのです。

さて、今回のゲーム買収ですが、ゲーム事業は今後も大きな成長分野でありつづけることは疑いようがなく、メタバースへの備えとしても強化しておきたい分野です。

現在はメタ(旧フェイズブック)がメタバースを公表して、これまでとは違うコミュニティ空間を提供しようとしていますが、マイクロソフトも黙ってそのポジションをメタに奪われることを良しとはしていません。

そこでゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードを買収して、ゲーム分野そのものを強化するとともにいつでもメタバースの勢いが本格化したところでマーケットを取ることができるように備えをしているのではないか?というのが私の読みです。

買収観測報道があった、アクティビジョン・ブリザード社の株価は、それまでグロース株が売られる流れから株価か下落していましたが、この報道を受けて一気に上昇、90ドル近辺まで株価は戻しています。

6.銘柄研究:DeNA(2432)

最後のトピック、 DeNAの銘柄紹介に参りましょう。DeNAという会社は南場智子さんが作った会社です。難波さんは津田塾大学英文科を優秀な成績で卒業後、コンサルタント会社であるマッキンゼージャパンに入社します。

その後、ハーバードビジネススクールに入学してここでも優秀な成績をおさめ、その後マッキンゼーの日本支社でパートナーに昇格します。大手コンサルティング業界のパートナーはいわば役員のようなもので、コンサルティング会社の顔となる存在。実力派ぞろいのマッキンゼーで並みいる諸先輩をおしのけてパートナーに昇格したのですから、その実力はずば抜けていたのでしょう。

そのまま今に至るまでコンサルティング業界にいれぱ、年収1億円以上をずっと稼げたことは間違いないですが、インターネット革命前夜の1990年代後半、あるプロジェクトでインターネットを利用したオークションサイトの事業提案をしたのです。しかし、この事業は取り上げる会社はなく、アイディアとして日の目を見ない可能性がありました。

だれもやらないなら私がやる、ということで、安定した高給と、社会的な身分を投げうってマンションの一室で起業し、ビッダーズというサービスを開始したのです。

こうして始まったDeNA。起業時期は2000年前後に出てきていますので、楽天や GMO といった老舗インターネット会社よりも少し遅れて登場しています。

それでも、この時期に起業した会社が大手として残っているということにはやはり着目すべきでしょう。当時のインターネットは海のものとも山のものともわからない状況。その時期に乗り込んできたから先行者利益を取って、市場拡大の波に乗りながら新しいサービスを開発して今まで生き残ってきたのです。

最初はビッダーズで始めた事業ですが、ヤフオクの登場により窮地に立たされます。当時のヤフーはまさにインターネットの巨人でしたから、新興のDeNAとは経営体力が違います。ビッダーズはすこしずつ撤退しながら、当時はやっていたガラケーにチャンスを見出します。

モバゲータウンを作り、様々なガラケー用のゲームを開発することで一躍時代の寵児となったのです。同時期に絶頂期を迎えたのはグリーでしたね。
スマホシフトがすすむなかで、ガラケーに強みを持っていたDeNAもスマホ版のモバゲータウンを開発して巻き返しを図ります。

その後は2012年に横浜 DeNA ベイスターズに参入して以降は、主だったビジネスがありませんでしたが、近年では個人の情報配信プラットフォームpocochaが成長し、収益の柱になっています。これほどまでに安定した業績を残していること自体、この規模の企業になるとむずかしいことなのですが、同社は挑戦をやめないことで現在まで生き残っているのです。

さて、同社のことを知るうえでの一冊といえば、創業者である南場智子氏が起業前後のディーエヌエーを飾らず記録した『不格好経営』(日本経済新聞)でしょう。ただでさえ思い出は美化されますし、創業者というのは成功すべくして成功したという風に本を書きたがりますが、同著では失敗続きでピンチの連続だったことがよくわかります。

小説をこのように書こうと思っても難しいでしょう。それに加えて、経営者とはどうあるべきかというヒントもちりばめられている本です。いくつか私が気になった点についてピックアップしてみました。

・経営者の仕事は決めること
節目節目で経営者というのは答えのない決断を迫られます。事業を伸ばすべきか、それとも撤退すべきか。新規事業はどの分野に乗り出すか。どれだけの人員を雇うか、だれを雇うか。社内で裏切りがあり、誰かが嘘を言っていることは明らかだが、誰を信じて、誰を疑うべきか。大口の取引先が決まりそうだが、安定的な発注が見込めないのに経営リソースを集中させるべきか。リモートワークは導入すべきか。
だれでも判断が付く簡単な問題は、現場が判断しますが、経営者の仕事は答えがないものばかり。予想外の仕事として現場から上がってくるのは限られた情報、制限時間のなかで、下さなければならないのです。

・変化を恐れない
祖業であるビッダーズと現在のDeNA事業。当初からは全く想像のできない事業に成長しています。これも同社が事業環境の変化に柔軟に対応し続けてきた結果です。
特に参入障壁が低い IT 業界の場合は、三年もあれば事業環境が激変して企業の事業が変わっていることは珍しくありません。

・成功しているものを模倣しろ

みな生き残りのためには現状維持では足らず、リスクを取って新規事業を育てていかなければならないと考えています。現在のように事業環境が激変しているなかでは、とにかく真似ていく。先ほどのMicrosoftの歴史は買収の歴史という話をしましたが、買収も一種模倣といっていいでしょう。

お金を出して、そっくりそのままノウハウを真似る、ということです。現在同社が成長の柱に据えているライブストリーミング事業も他社がはじめているのを見つけて、事業化していたものが時代の流れに乗って成長したのです。たまたま、ではありますが、狙ってたまたまを起こすちからかもしれません。

・一芸に秀でた職人を採用する

企業経営はみな同じような金太郎あめのような人間を雇っても駄目だと同氏は説きます。確かに腕利きのプログラマーは変人が多いのです。自分の得意分野だけに特化できるから強くなれる。同社が所有している横浜DeNAベイスターズもそうでしょう。何でもできる選手がたくさんいる球団が強いのではなく、それぞれの分野で一流の人間がそろっているチームが優勝するのです。強い組織は異質な個性の集団で、それをどう束ねていくか、が経営者の腕の見せ所です。

・人は仕事で育ち、成功体験で飛躍的に成長する

わたしは経営者ではありませんが、会社員として働いている間に、自分が置かれた環境で仕事の意識が変わるという経験は何度もしてきました。入社してしばらくのころは、言われた毎をやるだけであり、全く自分の意思はなかったのですが、今となっては自分だけではなく、周囲とどうやって仕事をうまくやっていくか、若い人たちをどうやって教育していくか、ということにも目を向けるようになってきました。

さらに上のステージで働いている人は、管理職として見ている世界が違うでしょうし、経営者も、任せられるとその役割を果たすよう努力し始めるということなのでしょう。ただ、経営は従業員とは全く違うスキルが求められますので(いわれたことをやるのではなく、考えてもわからない事に対して決定し、その責任を追う、リスクを取るということです)、向いている人、向いていない人がいるのですが。。

YouTube 少しチャンネル設定の関係で尻切れトンボになってしまいましたことお詫びいたします次回も2週間後に放送の予定です。

それではまた皆さんお会いしましょう。

株式投資虎の穴について

株式投資虎の穴は初心者向けに、株式投資を面白くお伝えするインターネット放送です。オンザボード代表和田憲治氏と、サラリーマン投資家長田淳司が対談形式でお送りしています。

隔週月曜日放送で、次回は2/7(月)20:30~22:00の時間に放送します。銘柄研究で取り上げる銘柄を募集中。放送内容の事前告知などはツイッター(@nagata_junji)をフォローしてご確認ください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?