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汗をかかない体質になるのは何故なのか?

暑い時期にお越しくださるクライアントさんの体調が優れない原因を突き詰めていくと、汗をかけていない方が多いです。

「できるだけ汗をかきたくない」と、考える気持ちは良くわかります。女性なら尚更でしょうか。

暑い中を移動し、汗で下着からシャツまですっかり濡れてしまうと、不快感が強くて仕事をする気にもなりませんよね。

とはいえ、汗をかかないと健康に悪いのは疑いようのない事実です。今回は汗をかかない、あるいは汗をかけない原因について書いてみました。

1)体温を保つ仕組み

私たちの体温は、生まれたときから死ぬまで37度前後に保たれ、そこから数度以上変動する機会は殆どありません。

ヒトを含めた哺乳類や鳥類など、気温の変化に左右されることなく、一定の体温を保つことができる生物は、恒温動物と呼ばれますよね。

その体温を保つ仕組みですが、大きく分けてふたつあります。

ひとつは、行動性調節と呼ばれるもので、暑いと薄着になったり、寒くなると、何かを羽織ったりといった行動がそうです。ちなみに、冷房を利用するのも、行動性調節にあたります。

もうひとつが、自律性体温調節と呼ばれるものです。こちらは、汗をかいたり、血流の量を調整したり、代謝を増減させたりしながら、体温を調節するのですが、自律神経が深く関っています。

2)変温動物の憂鬱

日光浴するワニ

実は変温動物も体温調節をするのですが、行動性調節に限られます。

言い換えると、自律性体温調節ができるかどうかで、恒温動物と平温動物に分けられているということになりますね。

両者の違いとして、恒温動物は代謝が高く、熱源を身体の中に持っていますが、変温動物は代謝が低く、熱源を外に求める必要がある点です。

例えば、ワニ(は虫類)は、朝になると日光浴をして、夜の間に冷えた身体を暖めます。

それで、体温が上昇すると、今度は日陰に入り込んで放熱し、身体が冷えてくると、再び日の当たるところに移動する、という行動を繰り返します。

私たちは、ふだん何気なく行動していますが変温動物と比べると、ものすごく有利な条件で活動しているのです。

3)ヒトは暑さに強い

とはいえ、恒温動物も万能ではありません。本来の体温(ヒトなら37度)を保つことができる気温にも限度があります。つまり、暑すぎたり、寒すぎたりすると、体温を保てなくなり、生命を維持できません。

多くの恒温動物は、40度が近づくと体温も上昇していきますので、陰に入り込むなり、水につかるなり、行動性調節をとる必要があります。

ところが、ヒトだけは別で、気温が50度に達しても、体温(37度)を維持することが可能です。あまり注目されませんが、私たちは暑さにめっぽう強い種族だったりします。

それで、他の恒温動物よりも、なぜ高温に耐えることができるのかと言えば、ヒトには効率的に汗をかく機能が備わっているからです。

人間社会に溶け込んでいる犬や猫が、発汗するのは足裏のみ、鳥類に至っては汗をかくために必要な汗腺が存在しません。「汗をかく」ことの重要性が、なんとなくでもイメージできましたでしょうか?

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4)能動汗腺が重要

さて、汗をかくために必要不可欠なのが汗腺ですが、全ての汗腺が、発汗能力を備えているわけではありません。汗をかくために働いているのは、汗腺の中でも能動汗腺と呼ばれるものだけです。

その能動汗腺の数は人種によって異なり、日本人は、おおよそ230万あります。ちなみに、ロシア人だと180万、フィリピン人は280万くらいです。

寒い国だと数が少なく、逆に暑い国だと多くなっていることがわかります。ただし、能動汗腺の数は、予め遺伝によって決定されているわけではありません。

つまり、日本人でもロシアで生まれ育てば180万前後に、フィリピンなら280万くらいに落ち着くということです。

※ 2~3歳までに能動汗腺の数が決まります

生まれてからずっと日本で過ごしていても、幼い頃から絶えず冷房を使用し、暑さにさらされる機会がないと、能動汗腺が発達しない可能性があるわけです。

毎年、夏になると「子供が汗をかけないので何とかして欲しい」という相談が増えます。

発汗は自律神経と関係が深いため、当院が得意とするところですが、そもそも能動汗腺の数が少ないと、後から増やすことができる類のものではありませんので厳しいです。

5)能動汗腺が働かないケース

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能動汗腺の総数は十分だとしても、実際に機能しているかどうかは、また別の問題です。と言いますのも、能動汗腺は出番が少ないと効率良く働いてくれません。

例えば、冬の寒い時期に、常夏の国に海外旅行へ出かけたとしましょう。

その場合、間違いなく効率の良い発汗はできません。どれだけ暑さに強い人でも、日本の夏と同じノリで行動すると必ずバテます。ヒトが周囲の気温に適応するまでには、相応の時間が必要なのです。

真冬から真夏は極端な例ですが、誰もが似たような状況を毎年経験しています。

春から夏にかけて、気温があがり始める頃はしんどい思いをしますが、これは、効率的に汗をかけていないから起こる現象です。

6)とりあえず汗をかこう

ところで、定期的にお越しくださっているクライアントさんが、6月の末に京都へ行き、暑い中を一日中歩いてきたそうです。

「確かに暑かったけど、それ以降、暑さに慣れて楽になったような気がします」と仰っていましたが、決して気のせいではなく本当にその通りでしょう。

暑い中で、いきなり一日中過ごす必要はありませんが、意図的に発汗する機会をつくり、発汗しやすい身体への移行を促すことは大切です。

暑くなりはじめて間もない頃から、エアコンに頼って過ごしていると、下手をすれば夏の間ずっと「汗をかきにくい身体のまま」ということだってあり得ます。発汗は、ヒトに与えられた優れた機能です。有効に使いましょう。


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