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産後の骨盤矯正は必要か?

仲良くしてくださっているフォロワーさん宅でも、出産間近、あるいは、出産直後という方が何名かいらっしゃいます。

今回は、そのフォロワーさんたちに少しでも参考になれば、と考え書いてみました。

産後に骨盤矯正を受けるべきか否か、明言できれば良いのですが、結論としては「状況次第」です。

妊娠から出産を経て、母体では何が起こっているのか、将来的にどういうリスクが起こり得るのかまとめてみました。

そのうえで、皆さんが判断してください。産後の骨盤矯正をメインにしている同業者様に叱られそうですけど・・・。


1)筋肉・骨格の変化

日常生活において、立っているときや、座っているとき等、通常はお腹側の筋肉と背中側の筋肉が、5:5で均等に支えあってあって姿勢を維持しています。

※ 妊娠・出産前から、姿勢が崩れている方もいます

妊娠、出産時になると、このバランスが大きく変化します。例外はありません。

お腹が大きくなり始めると、その姿勢を維持するために腰の骨は前傾(いわゆる反り腰)していき、まもなくお腹の筋肉は使えなくなります。

反り腰

お腹の筋肉が使えない分、背中の筋肉を酷使して、立っている時や、座っている時の身体を支えているのです。

結果として、腰から背中に掛けて筋肉は確実に疲労していきます。

一方、お腹の筋肉は、数ヶ月に渡って使う事ができません。

病気や事故で、数ヶ月寝たきりを余儀なくされると、日常の生活に戻る前に必ずリハビリを行いますよね?

もちろん、出産は病気や怪我ではありませんが、出産だって人生で何度も経験するものではありません。

つまり、妊婦さんは病気や怪我に匹敵する「正常ではない状態」で過ごしている事になるのです。

それなら、出産後になんらかのケアが必要になると考えた方が自然でしょう。

2)骨盤の底で支えているもの

その他に把握しておいて欲しいことは、骨盤底筋群と呼ばれる部位についてです。

骨盤底筋群は骨盤の底にあり、子宮や膀胱をはじめ、内臓を支えています。ハンモックのようなイメージですね。

骨盤底筋群の画像

厚生労働省によりますと、赤ちゃんの重さは平均で、2500~3000gあり、女性の妊娠における体重増加は11~14kg(赤ちゃんの重さを含む)とあります。

出産時に、増えたぶんの重量も骨盤底筋群が支えているわけですから、どうしても疲労しがちです。

出産後に骨盤底筋群が元の状態に戻らないと、尿漏れや湯漏れ、エア漏れ等の原因になります。

また、男性女性に関らず、加齢に伴って骨盤底筋群が緩くなりやい傾向がありますので、早い段階で骨盤底筋群を本来の状態に戻しておきたいところです。

3)ホルモンバランスの変化

さて、次に体内では何が起こっているのかお話します。

まず知っておいて欲しいことは、妊娠して3~4ヶ月の頃から、出産後の数日の間は、靭帯を緩める働きをするリラキシンというホルモンが積極的に分泌されます。

リラキシンの作用によって、お腹の中で赤ちゃんが大きくなっても、無理なく骨盤の上部(仙腸関節)が開き女性の身体を安定させているわけです。

そして、出産時にリラキシンの分泌がピークになります。今度は骨盤の下部(恥骨結合)が開くことによって、産道が広がり赤ちゃんが通れるようになります。

「骨盤」とひと括りにされていますが、実は3つの骨によって形成されるユニットです。

それで、骨の繋ぎ目には必ず関節が存在します。そもそも関節が存在しないなら矯正できません。

なお、妊娠中は、下肢の筋力低下、ホルモンバランスの変化に伴い、ふくらはぎがつりやすくなる傾向があります。ご注意ください。

4)矯正に向いている時期?

靭帯を緩めるリラキシンは、出産をピークとして分泌が徐々に低下していきます。そうしますと、出産後すぐに矯正した方が良さそうな気がしますよね。

実際問題として、骨格のバランスを整えることを目的とするなら矯正するには、出産してから早ければ早いほどやり易いです。

さらに言及すると、骨盤だけでなくカラダ全体の靭帯が緩んでいる時期ですから、歪みが気になっていた他の部位を矯正するチャンスとも言えます。

とはいえ、出産後の身体には、かなりのダメージが残されていることも事実です。

個人的な見解ですが、産後1ヶ月程度は無理せずにゆっくり過ごし、身体を回復させることが大切だと考えます。

何より、出産時における骨盤の歪みは、妊娠から出産する過程において生じた歪みよりも、出産後に発生するケースが多いのです。

5)出産を経て歪みが生じる理由

産後は筋力が低下している事、靭帯が緩んでいる事に異論はないと思います。

理想を言えば、少なくとも日常生活に支障がない程度まで静養し、身体が回復するのを待ちたいところですが、そうもいきません。

何故なら、すぐ傍に赤ちゃんがいるためです。

筋肉が低下した状態のままで、抱っこをはじめとして、立ち上がったり、座ったりといった動作を行うことになります。

その際、無意識下で筋力が低下している部分に負担が掛からないよう、不自然な体勢をとってしまうことが多くなり、骨盤だけでなく身体のバランスが崩れるのです。

産後すぐに矯正しても、筋力が戻りきっていないため、新たに骨盤や身体が歪んでしまう傾向があります。

繰り返しますが、この時期は関節が緩んでいるため、幸か不幸か今までできなかった不自然な動作も難なくできてしまうのです。

それこそ、アヒル座りなど簡単でしょう。

6)理想的な骨盤矯正の時期

従いまして、様々な要素を考慮すると産後の骨盤矯正は、1ヶ月後位からが理想だと考えます。

周囲の協力を得て、無理なく身体を回復できた場合、おそらく痛みはもちろん、歪みも発生しないでしょう。その場合、骨盤矯正は不要かもしれません。

2人目以降のご出産の方は、理想的な産後1ヶ月くらいでご来院される傾向にありますが、初産の時は出産後半年前後でご相談を受ける事が多いです。

初めての出産の際には、骨盤矯正をせずにそのまま過ごしてみたものの、いつまでも元の体型に戻らない、あるいは、尿漏れや腰痛が気になりはじめて、不安になっていろいろ調べてみるのが、丁度この時期なのかもしれませんね。

なお、腰が痛い、股関節が痛い、などの症状がある時は1ヶ月にこだわる理由はありません。異常があるなら、問題が大きくなりかねませんので、早い段階で手を打った方が良いですよ。


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