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ラムネは本当に脳に良いか?

「ラムネが脳に良い」という説をご存知でしょうか?

ネットで検索してみると、ラムネに対する肯定的な論調が目立ち否定的な見解は少数ですね。これは予想外でした。

各サイトの主張を拾っていくと、ラムネが脳に良いとする論法は以下の通りです。

① 脳のエネルギー源となるのはブドウ糖のみである
② ラムネの主成分はブドウ糖である
③ ブドウ糖は吸収されるのが早い
④ ブドウ糖(エネルギー源)がたくさんあると脳に良い

誤解を恐れずに言わせて戴くなら、「疑わしい」というのが率直な印象です。

実際のところはどうなのか、改めて考えてみました。

1)ブドウ糖ってなに?

小難しい記事になってしまいますが、基本的なお話から始めましょう。

炭水化物、たんぱく質と共に、三大栄養素のひとつを担うのが糖質で、その最小単位は単糖類と呼ばれます。

これが、ブドウ糖や果糖ですね。

単糖類が2個結合したものは、二糖類と呼ばれます。代表的例は、皆さんも良くご存知の砂糖(≒ショ糖)で、ブドウ糖と果糖が結合したものです。

さらに、多糖類と呼ばれるのが、デンプンやグリコーゲン(後述します)で、複数の単糖類が結合することによって形成されています。

普段の食事、お米やパンにも含まれているのがデンプンですが、単糖類のレベルにまで分解しなくては吸収できません。

二糖類や多糖類は分解するための時間を要しますので、吸収速度としては以下の通りになります。

単糖類 > 二糖類 >>>>> 多糖類

2)血糖値の上昇は良いことか?

さて、ラムネはブドウ糖ですからそれ分解する必要がなく、速やかに吸収することが可能です。

つまり、食べた後、短時間で血糖値(血液中にあるブドウ糖の量)が急激に上昇します。

「ラムネが脳に良い」と言われる根拠になっている部分ですね。

ところが、実際には、脳がブドウ糖を消費する速度は殆ど変わりません。

勉強や仕事でどれだけ頭を酷使しても、ぼんやり過ごしていても同じなのです。

そうしますと、血液中のブドウ糖は過剰になってしまいますよね。なぜなら短時間で大量に消費するようなものではありませんから。

余ってしまったブドウ糖は、ホルモンや自律神経によって調整され、肝臓や骨格筋にグリコーゲンとして蓄えられます。

先述した多糖類のグリコーゲンとは、糖分を貯蔵するための形態なのです。

3)低血糖時に起こること

それでは、血液中のブドウ糖がなくなればどうなるか? 食事の間隔が空いてしまった等、血糖値が低下した状態ですね。

その場合、肝臓のグリコーゲンが分解され、再度ブドウ糖となり血液中に放出されます。

※ 骨格筋のグリコーゲンは筋収縮のエネルギーとして消費

要するに、血糖値は常に過不足なく一定になるよう調整されるのですから、気を利かせて、大量のブドウ糖を摂取する必要はありません。

ちなみに、貯蔵されているグリコーゲンを使い切るとブドウ糖は枯渇します。

個人差がありますが、12~24時間くらいの猶予がありますので、普通に1日3回食事をしている分には気に掛ける必要はないでしょう。

なお、グリコーゲンが尽きたとしても、慌てなくて大丈夫です。

その時は、脂肪が分解されケトンなる物質が生成され、脳のエネルギーを代替します。

つまり、先にあげた①を、より正確に表現するならこうでしょう。

誤 『脳のエネルギー源となるのはブドウ糖のみである』
正 『平時に脳のエネルギー源となるのはブドウ糖のみである』

4)結論と致しまして

血糖値に限りませんが、急激な変化は身体への負担が必ず大きくなります。

それを踏まえて考えると、栄養補給をする際には血糖値を急激に上昇させるのではなく、緩やかに上昇させた方が身体に優しいです。

普通に食事をしていると、食べた物が少しずつ消化、吸収されていきます。

多糖類が単糖類にまで分解されるには時間が掛かりますが、そのぶん、ブドウ糖の供給も緩やかになり、血糖値を下げたり上げたりする機会が減少します。

つまり、無駄が少なく身体への負担も最小限で済むのです。

効果的にラムネを摂るなら、食事から数時間が経過し空腹を感じるタイミングでしょうか。

決して「ラムネは食べない方が良い」と言っているわけではなく、脳への栄養補給が目的なら必要ないですよ、そういうお話です。

「純粋にラムネが好きだから」という事であれば、他の菓子類と同様に「食べたい時に適量を食べる」というスタンスで良いと思います。


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