高齢者はベッドで寝るべき?
定期的にご利用くださっている方のお父様は、お一人で京都市内にお住まいです。
感染症が広まって以降は一度も戻っていなかったこと、加えて一時期に比べると、感染症に対する悲壮感が低下したこともあり、この夏のお盆に思い切って帰省したのだとか。
そして、ご実家で思いも寄らぬ光景を目にする事になりました。
いや、見るも無残に衰えたお父様が・・・という救いのないお話ではありませんよ。
問題は、お父様ではなく、2020年の年末に贈った高級ベッド。
付属している高級マットが、足腰に優しいと評判で良く売れているのだとか。
その大枚をはたいて購入した品が、部屋の片隅で物置にされていたそうです。
まあ、贈った側からすれば、あまり良い気分にはなりませんよね。
気心の知れたご利用者様とは、ご家族のお話をすることもあります。
「感染症拡大以降も、お元気で過ごしていらっしゃると聞いておりましたが?」と尋ねたところ、
「体調には問題も不安もありませんが、なかなか帰省もできないので、お詫びを兼ねて奮発しました」とのこと。
せっかくの贈り物が役に立っていないのは、残念すぎます。
そこは理解できるのですが、今回に限っては父上様のファインプレーでしょう。
元来不要なモノであっても、贈り物となれば邪険に扱えません。
おそらく、半分以上の方が不本意ながらも利用し始めるのではないでしょうか。断固拒否できる猛者は少数派だと予想します。
さて、それではベッドを使用しなかったことが、なぜ英断だったのかと言えば簡単な理屈です。
就寝時には横になり、起床時には立ち上がる、という動作が必要になりますよね。
その動作は、床で行う場合とベッドで行う場合では、運動量が異なるのです。
地べたの高さまで屈んでから横になり、そこから座って立ち上がるという一連の動作には、足腰の強さが要求されます。
これはつまり、日常生活で必要となる能力を、無意識のうちに養っているのと同義なのです。
床で寝起きする際、膝や腰に痛みが出始めたというのなら、ベッドの購入は理に適っているでしょう。
ですが、今のところ何の問題もなく過ごせているのですから、既に習慣になっているトレーニングの機会をわざわざ削る必要はありませんよね。
バリアフリー化にも似たような事が言えます。
フラットな空間での生活に慣れてしまうと、足首の可動範囲が低下するため段差につまづきやすくなってしまうのです。
「いつまでも元気に過ごして欲しい」という思いが、時には裏目に出てしまうこともありますよ。ご注意ください。
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