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気持ちの伝え方

空から何かが降ってきた。目の前をピンクの何かが通り過ぎた。頭に当たった。おでこに当たったのは痛かった。

「え?こんぺいとう……」
と地面を見てフリーズする。
いつのまにか金平糖の雨はやんでいた。気配がしたので後ろを振り向くと、そこには私の好きな人がいた。

「この前短冊に書いてたでしょ?叶えてあげた。」

 私の好きな人は笑いながら言った。
 たんざく?ああ、七夕のか。
 将来の夢なんてないし世界平和なんて書くのもガラじゃない。書いてもどうせ叶わない。そこで私が書いたのが「金平糖の雨が降りますように」だった。

 「なんか最近元気ないじゃん?だからせめて願いを叶えてあげようと思ったんだけど……」
 どうやら私のことを心配してくれていたようだ。それにしてもぶっとんでいる。本気で願っていたことじゃないのに本当に金平糖を降らせるなんて。

 「ありがとう。でもこの金平糖どうしよう。もったいない。」
 「もったいなくないよ。思い出作りの犠牲としては妥当なところだよ。」
 それでも罪悪感は消えないけれど、からっと笑いながら言われるといろいろ大丈夫な気がした。

 落ちた金平糖を拾って私達は一緒に帰った。他愛のない話をしながら。

 私のことを見ていてくれて、元気づけるために行動を起こしてくれたのが嬉しかったのに、それは言葉にできなかった。言葉にしたら泣いてしまいそうだった。

 私も今度あの子を驚かせたい。何をしようか。
 持って帰ってきた金平糖を洗って食べながら私は考える。今年の夏休みはなんだか素敵になるかもしれない。

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