さいたま国際芸術祭市民プロジェクト批評誌、および追って行われる予定のシンポジウムについて(追記あり)

さいたま国際芸術祭市民プロジェクト批評誌に寄稿しました。併せて編集としても参加しています。
現状、この批評誌についての公的なアナウンスがネット上にありませんので、私が基本情報を掲載します。

※さいたま国際芸術祭2020の開催の無期延期にともない、修正情報をこちらに載せています。

https://note.com/nagasek/n/n291fe06816dc

画像1

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さいたま国際芸術祭市民プロジェクト批評誌
『対話の再設定 わたしたちのために行われることが、わたしたちに牙をむくこともあるのを知った、その後で、』

藤井匡「民主主義のレッスンを」
gnck「(前衛)芸術が公共的であるとは、どのようなことか。─芸術の公共圏をめぐって─」
永瀬恭一「嘲弄されるキリスト、分断の同居と沈黙の聴取」
大野左紀子「対話が隠蔽する「加害」としての芸術」
武居利史「日本における国際展の「国際化」を問う」

編集:藤井匡 永瀬恭一
デザイン:竹下和貴子
発行所:東京造形大学 藤井匡研究室
2020年3月1日 発行
さいたま国際芸術祭の会場で無償配布

◆入手場所について
さいたま国際芸術祭2020は、コロナウイルスの影響により、開催が延期されました(3月28日から5月17日までとされています)。しかし、市民プロジェクトは部分的に開催されています。アーツさいたま・きたまちフェスタ Vol.6」会場で、既に配布が始まっているようです。

「アーツさいたま・きたまちフェスタ Vol.6」さいたま市ステラタウン周辺

また、旧大宮区役所にも置かれる予定ですが、こちらは芸術祭が始まらないと入ることができません。他にも配布場所が増え次第、こちらで告知いたします。
※なにしろウイルス禍が進行中ですので、どうなるか全くわかりませんが。

◆シンポジウムについて
※予定されていたシンポジウム「公共の再設定」(パネリスト:木村絵理子、林道郎、眞島竜男、司会:藤井匡、以上敬称略)」は会場となる旧大宮図書館が閉鎖となりますので、中止となりました。

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以下、永瀬の当批評誌に対する個人的な考え方を書いておきます。

この批評誌は、まず編集長の藤井匡さんによる「国際芸術祭の会場で、批評媒体を無料で頒布してしまおう」というアイディアから始まっています。一般に地域の芸術祭では共感的コミュニケーションや包摂がイメージされ、事実さいたま国際芸術祭もそのようなイメージで組織されていますが、だとするとそこで最も居場所がないのが、批評といわれるものでしょう。「批評」はコミュニケーションを分析し、分解/解体するモメントを持ちます。けして「共感的」とは限らない。

このような環境の中、さいたま国際芸術祭の一部である市民プロジェクトの枠組みの内側から、まるでアジびらを撒くように批評誌を頒布する仕掛けは、卓抜したインスピレーションだと思いました。僕としてはこういった発想に極力沿う形で企画を補っていければいいと考えました。

あいちトリエンナーレの出来事が未だ収束したとは言えない状況下、さいたま国際芸術祭はまるであいちトリエンナーレでの「風」を恐れるように=まるで一切の「風」を忌避するかのように=「無風」であることを目指しているかのように感じられます(私見ですがwebサイトの奇妙な不活性さは、「ネットの炎上」への対処として見えてきます)。しかし、少なくとも今、あいちトリエンナーレの出来事や、今まで踏まえられてきた国内芸術祭への議論を踏まえずに地域芸術祭は行いうるでしょうか。

さいたま国際芸術祭市民プロジェクト批評誌『対話の再設定 わたしたちのために行われることが、わたしたちに牙をむくこともあるのを知った、その後で、』は、この、息をひそめるように「無風」に見えるさいたま国際芸術祭の中で「批評」を拡散することになるでしょう。簡易な形式はその意味で戦略的な意図を体現しているといえます。

公的プログラムの片隅で「対話の再設定」という基本的な課題を問うた本誌は、全体を読んでいただけば、単なる芸術祭批判ではない、むしろそれを如何に可能性の徴として読み替えうるか、という積極的なテキストの連なりであることが了解されると確信しています。その意味ではさいたま国際芸術祭の文脈を離れても成立するものになったと思っています。

なお、この媒体に「新聞」というテーマ設定を導入しレイアウトデザインを担当した竹下和貴子さんのお力も大きかったことは強調しておきたいと思います。また、本誌は前提としてさいたま国際芸術祭会場でお手にとっていただくことが最も趣旨に沿うものであることは当然ですが、もし諸事情でご来場いただけない場合は、永瀬までご連絡いただければ、できる範囲で対応いたします。メールアドレスは以下です。

nagase※zc5.so-net.ne.jp
(※を@に変換)

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