いま芽生えている「絵画の論理」と「私的占領」地帯のために──連続対談シリーズ「私的占領、絵画の論理」の現状と考え方について──
僕の「一人組立」とART TRACEの共同企画として始まっていた、7名の画家の方々をお迎えしての連続対談シリーズ「私的占領、絵画の論理」ですが、昨年末に五月女哲平さんをお迎えしての第一回を終えてから、すでに4ヶ月、企画が止まっています。
ART TRACEのwebページ 連続対談シリーズ「私的占領、絵画の論理」
連続対談「私的占領、絵画の論理」第一回「絵画の「質」とは何か」 ─ 五月女哲平 ─ レポート
現在のコロナウイルス感染状況を注視した結果です。そして先日、会場として予定していたART TRACE galleryが一時的に閉じられました。
ここに至り、「私的占領、絵画の論理」の進行は名実ともに一時停止となりました。
2月以後、ART TRACEと永瀬の間では企画開催の可否に向けて議論していました。永瀬からは時期やゲスト登壇順序の調整のほか、無観客で対談をし動画配信する方法、また少数の観客を招待方式で呼んで客席間隔を十分にあけ、アルコール消毒など必要な対策をしたうえでの開催などを提案していました。逆にART TRACEサイドからは慎重な意見がでていました。
永瀬としては次々と美術芸術関連の展覧会やイベントが「自粛要請」という奇妙な「ことば」で中止されることへの違和感・抵抗感があり、小規模なものなら開催可能性が模索されるべきだという思いがありました。
ART TRACEからは「私的占領、絵画の論理」の意味は情況的なもの(文脈的なもの)以上にゲストとの対話自体の良し悪しにあり、そのための環境が十分でないならば開催するべきではない、という意見が示されました。
会場管理を担当をしているART TRACEの意見は十分に説得力があると考え、永瀬は以後、開催の無理な実現にこだわらず企画停止に同意しています。
公開でのトークイベントという性格上、コロナウイルス防護に対しもっとも脆弱な内容でもあります。この企画に関心を抱いてくださっている皆様にも、ぜひ、いましばらくお待ち頂きたいと思います。
現在、大規模なものからインディペンデントなものまで含め、美術の展覧会やイベントがどこでも困難に陥っています。しかし僕は逆に、個々の制作の現場では静かにひとつひとつ「絵画の論理」が積み重ねられ、それが極小の「私的占領」地帯として生成していると知っています。
不安定な経済状態にあることの多い作家たちとそのアトリエは、すでに起きている景気の後退に対し弱い立場にありますが、まさにそのような、環境への敏感な反応をせざるを得ない地点こそが、次の地平を開示していくチャンスを産むはずです(これはコロナ禍が顕在化する前に第一回リード文に書いたとおりです)。「私的占領、絵画の論理」は、潜在的なところで胎動・帯同しながら、それらを連結し、展開する芽吹きへと向かっていこうと思います。
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