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「週刊金曜日」2023年1月20日号に重田園江『真理の語り手 アーレントとウクライナ戦争』(白水社)の書評を書きました。

現代ほど真実を掴むことが難しい時代はないんじゃないか。なんてことをよく思います。まあ、現代しか生きたことがないのでもしかしたら別の時代には別の時代なりの、真実を見出すことの困難があったかもしれませんが。

いずれにせよ、フェイクニュースが跋扈し、古き良きメディアの権威の失墜が目を当てられない現状にあって、真理とは何かをめぐる煩悶を僕たちはせざるを得ない状況にあると思います。特に本書が警戒するのは、事実を簡単に捻じ曲げる全体主義的な暴力 ーー プーチンのウクライナ侵攻なわけです。そうした事態を直視しながら、危機の時代に生きたハンナ・アーレントを読み直すことで真理を語る者、その主体はどこにあるのかを探る一冊です。

真理を語る者は共同社会や仲間との交流の外部にいる。それは「哲学者の孤独、科学者や芸術家の孤立、歴史家や裁判官の公平、現地調査をした者や目撃者、報告者の独立」として現れる。真理を語る者の存在様態は「独り」なのである。
本書65ページ

書評では引用できなかったので、ちょっと引いてみましたが、核心的な文章ですよね。ではそんな「孤独」を引き受けるのは、いま、誰なのか。よかったら書評も本書も読んでみてください。怒りに満ちた本なので火傷注意。

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