アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は国内で200万人の患者がいるとされる.
(新潟大学脳研究所: http://www.bri.niigata-u.ac.jp/~idenshi/research/ad_1.html)

実際に物忘れ外来などをしていると圧倒的に診る人数が多い.
アルツハイマー型認知症に対してはアセチルコリンエステラーゼを用いて治療することが多い.
主な薬剤にドネペジル(商品名: アリセプト),ガランタミン(商品名: レミニール),リバスチグミン(商品名: リバスタッチパッチ,イクセロンパッチ)がある.
主な効果は認知症の進行抑制とされている.

しかし,実臨床を行なっていると,ほとんどの場合,症状は変わらないが,明らかに良くなる人がいる.

いまアルツハイマー型認知症と診断されている人の中には別の疾患が隠れていることがあるとされる.

多分,一番有名で専門医だとエピソードや画像所見,経過から何となく予想がつくことがあるのは嗜銀顆粒性認知症.
しかし,専門医でも区別がつかないものも多い.
確定診断は死後の病理しかない.

あと,最近だとPART(Primary Age-Related Tauopathy: 原発性年齢関連タウオパチー)やLATE(Limbic-predominant Age-related TDP-43 Encephalopathy: 大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症)も隠れていることがあるとされる.

わかりやすい文献やサイトとしては,
PART: 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/35/3/35_157/_pdf/-char/ja

LATE: https://gigazine.net/news/20190509-new-type-dementia-identified/

をお勧めする.

ここに書いた内容からも想像がつくかもしれないが,アルツハイマー型認知症は未だ研究途上の疾患で,もしかすると,アセチルコリンエステラーゼで症状が明らかに良くなるのはここに書いてある疾患のどれかなのかもしれないし,未だ知られていない疾患なのかもしれない.

これは大学で認知症を研究している先生から聞いた話で私自身で確かめた話ではないが,認知症の研究があまり進んでいないのにはモデルマウスの問題があるという.
モデルマウス自体が上手くできておらず,今は3代目に当たるらしい.
しかし,このようにアルツハイマー型認知症と診断されている中には色んな疾患が隠れていることを考えると,真に目的とするモデルマウスが完成するのは未だ先のことなのかもしれない.

最近話題になっているアデュカヌマブ(商品名: アデュヘルム)についても記載しておく.
アデュカヌマブは現時点では症状の改善を示す十分なデータがあると言い難く(米でも条件付き承認),副作用として脳浮腫が出やすいと言われている.
上記を考慮すると,承認されてもすぐには使いにくいと感じているが,認知症に対して効果の高い薬は認知症に関わる人達の悲願でもあり,市販後臨床試験の結果を注視していきたい.

開発企業の一社であるエーザイは世界初のアルツハイマー型認知症治療薬であるドネペジルを開発した企業であり,個人的に応援している企業だったりする.
市販後臨床試験で良い結果が出ることを期待したいし,良い結果が出なくともエーザイには今後も次世代の認知症治療薬の開発を主導していくことを期待したい.


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