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グラバー園に年に一度だけ現れる「神社」

 八百万の神の国、日本。そこでは、様々な対象が神となる。人を神とした日光東照宮(ご祭神:徳川家康)や乃木神社(ご祭神:乃木希典)があったり、中には香辛料を神とした波自加彌神社(ご祭神:薑(はじかみ・生姜の古名))なんかもあるそうだ。意識的に、時に無意識的に、日々我々はいろんなものを拝んでいる。

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 長崎では、毎年9月に「グラバー顕彰式」という行事を執り行う。グラバーとは、明治維新と日本の近代化の大きな後押しをした英国人商人で、長崎では「グラバー園」でお馴染みである。

 顕彰式は、グラバー園内で行われ、市長や長崎の各種要人が出席する。式では、一人づつ、グラバーさんの写真と銅像の前に進み、花束を供え一礼する。各種挨拶があり、彼への感謝の意が表され、その功績が称えられる。

 この式を見た時、「様々な対象を神にして拝む」日本人の心性と近しいものを感じた。グラバーさんが神になったとまでは言わないが、顕彰式のあの構造は、八百万の神の国・日本の人々が持つ神概念の一端が表出されていたように思う。「グラバーさん、ありがとう。グラバーさん、長崎をこれからも宜しくお願いします」と「拝む」姿は、神社のそれと近しいと思った。

(ちなみに、私はこの顕彰式が結構好きである。グラバーさんの過去の功績や長崎への想いが好きだし、それに感謝する長崎の人の粋な心も好きなのである。なお、外国における顕彰式等の事例は存じないので、この顕彰式を以て日本人の心性を語るのは、根拠に欠けるとは思う。)

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