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帰る / 最後の東京帰省日記 (12)

 前回の続き

 中華街を抜け山下公園に出て、周辺を目的もなく歩く。もう、今回の帰省でやることは無くなった。時刻はお昼前。帰りの飛行機の時間まで、だいぶ時間が余ってしまった。せっかく東京にいるのだから、どこかに行こうかと思うも、あまり思いつかない。行きたいところがあまりない。象の鼻パークを抜け、赤レンガ倉庫を過ぎる。巨大なピカチュウのバルーンが、ぷくぷくと揺れていた。徐々にみなとみらいへ近づいている。

 万国橋の上から、かつて自分が働いていたビルを眺める。新卒で入った会社は、目と鼻の先、みなとみらいにある。たった2年弱で辞めてしまったけれど、懐かしい思い出がぽつぽつと蘇る。かつての同期や先輩たちは、今もこのビルの中で働いているのだろうか。翻って今の自分は、彼らとは、かなり遠い世界に来てしまったなと思う。曇り空のような憂鬱を感じて、その場を後にする。馬車道から電車に乗った。

***

 結局、新丸子に戻ってきてしまった。頭を捻ろうにも、行きたいところがなかった。駅近のカレー屋でお昼を済まして、駅中のタリーズに入る。このタリーズは席数と電源が多く、以前もよく使っていた。昔と同様、ソイラテを頼んで、テーブルの端の席に座る。一息ついて、スマホをいじる。本格的に調べてみても、行きたいと思うところが全く出てこない。前回の帰省の時も、東京で行きたいところがないと感じていた。ただその時は「東京には自分の欲するものがない」という認識だった。今回の場合、何かが違った。何かが気持ち悪い。この時はまだ、その理由が分からなかった。今回の帰省を早く終わらせたくなった。空港に行くことにした。出発時刻まで、まだ何時間もある。

 次回に続く

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