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おみくじに抗う / 最後の東京帰省日記 (11)

 前回の続き

 山手地区から元町商店街を抜け中華街に入る。よく、長崎と横浜の中華街を比べる際に、規模の大小について言及されることが多い。ただ個人的には、大きさよりも、車道の有無が気になった。横浜の中華街には車道があり、車がスイスイ通っていく。その点に、どこか落ち着かない心持ちを感じた。

 しばらく歩くと、横濱媽祖廟に通りかかった。長崎の唐寺や媽祖廟と比べると、だいぶ巨大でしっかり観光地化されている。せっかくなので中に入ることにした。中に入ると、巨大な線香をお供えすることができ、ついでにおみくじもできた。このおみくじが儀式めいていて面白い。くじを引いた後に、木片を二つ手渡される。イメージとしては、アボカドを縦に二つに割った感じの形と大きさである。それを地面に落とし、木片の平面と曲面が天井方向を向くと「引いたくじは正しい」ものと判断される。同じ面の場合は、くじを引きなおす。自分は一発で平面と曲面が出た。もらったくじの内容を見る。

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第十籤

一年の努力の結果が、例年の半分ぐらいの収穫しか出来ません。今年は時間を有効に使えないでしょう。太陽は少しずつ西へ沈んで行く、夕日は綺麗ですが終わりに近く、物事には諦めが肝心です。奔走するのはやめたほうがいでしょう。

このくじは当事者の多くの努力が報われていないことを示しています。過去に輝かしい日々もあったが、よい成果は思ったように残っていません。半分以上の時間は無駄に使ったでしょう。ですから、くじの言う通り、実現できない華やかさに奔走するよりも、地道に働くことを勧めます。

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 現在の自分の状況を、ズバリ言い当てているようで、ハッとした。図星を刺された。頑張ろうと思っている矢先に出鼻を挫かれて、思わず苦笑してしまった。くじには他にも、諦めろ、動くな、じっとしておけ的なことがつらつらと書かれていた。ここまで言われると、逆に反抗したい気持ちが湧いてくる。確かに今は、ままならない。なんなら、大学卒業してからずっと、ままなっていない。しかし、私は諦めない。あなたの言うことは聞かない。無難な人生を歩むより、実現できないとしても、自分にしっくりくる生き方を模索して実現してみたい。横浜の媽祖様に反旗を翻して、中華街を後にした。答え合わせは、そのうち。

 次回に続く

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