見出し画像

昔の話 / 最後の東京帰省日記 ③

 前回の続き 

 飛行機は定刻通り出発した。機内で読むために持ってきた、ゼミの文集を開く。文集には、それぞれの卒論の要約と、自由記述のエッセイが収録されている。各々の文章を読んでいると、当時の日々が思い出される。

 自分の文章を読み返してみると、昔と今とで、さほど考え方が変わっていないことに気がついた。若い時期に形成された人格や価値観が、現在の土台となっているのか。それとも、自分自身が成長していないから、考え方が変わっていないのか。どちらだろうか。

 文集を読み終えた後、もう一冊の本を開いた。「ハンセン病を生きて」という本で、先日図書館から借りてきた。ハンセン病については、学校の教科書で習った記憶がある。ハンセン病を患った人たちは、長らく、激しい差別と偏見に苦しんだ。それを学んだ時、ハンセン病の話を、遠い過去の歴史のように感じたことを覚えている。

 この本の中で、特に印象に残ったのは「ハンセン病元患者宿泊拒否事件」。詳細は割愛する。ぜひ調べてみてほしい。この事件に際して、元患者さんの元に届いた、匿名での誹謗中傷の手紙の内容が、あまりにも衝撃的なのだ。そして、昨今のSNS上におけるそれと事象が似ていた。人間は、昔も今も本質は変わらないように思えた。

***

 飛行機は定刻通り到着した。空港は人でごった返している。見渡す限りの人。東京は、本当に人が多い。昔は何とも思っていなかったが、今はこの人の多さに圧倒されてしまう。人の流れを縫うように進み、電車に乗って大学へ向かう。

 次回に続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?