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【性感染症】梅毒の検査と注意点

’這いよる混沌、梅毒さん’ が急増中です。
目の前に梅毒さんが登場するかもしれません。
一番大事なのは『防御する』こと。
もし「梅毒かも?」と思ったら検査をしましょう。
梅毒を起こす菌は、Treponema pallidumです。
梅毒は病気の名前。トレポネーマは菌の名前。

梅毒の検査は?

梅毒の検査は3つあります。
①トレポネーマ自体を検出する
②トレポネーマへの抗体を検出する
③トレポネーマ感染時にみられる物質への抗体を測定する
です。1つずつ解説します。

梅毒の検査:トレポネーマ自体を検出する

潰瘍のあるリンパ節や粘膜疹の汁を採取します。
暗視野顕微鏡や直接蛍光抗体法で観察して菌を直接確認します。
ただ、暗視野顕微鏡を常時備える施設が少ないこと、直接蛍光抗体法は外注検査(検査専門の会社に依頼)の場合もあるので結果が出るのに時間がかかります。設備が整っていれば、この方法で検査をするかもしれません。多くの場合は、②と③を組み合わせて検査をします。

梅毒の検査:トレポネーマへの抗体を検出する

ヒトの身体は、細菌やウイルスなどの病原体が侵入することで抗体という物質を作ります。その抗体を測ることで感染の評価を行います。今では検査方法はいろいろ開発されています。
  ・梅毒トレポネーマ血球凝集試験
    動物の赤血球を用いたHA法:TPHA
    ゼラチン粒子を用いたPA法:TPPA
    ラテックスを用いたLA法:TPLA
  ・P粒子凝集法TPPA法
  ・蛍光トレポネーマ抗体吸収試験FTA-ABS法
医療機関によってどれを採用しているかは異なるかもしれませんが、検査自体の意味は同じです。

梅毒の検査:トレポネーマ感染時にみられる物質への抗体を測定する

トレポネーマに感染すると、破壊された組織に存在するカルジオリピン様物質が漏れ出る。そのカルジオリピン様物質に対する抗体を確認することで評価することができます。これもいろいろな方法があります。
  ・ガラス板法
  ・RPR法
  ・凝集法
  ・VDRL法
などがあります。これも、検査自体の意味は同じです。

検査結果の解釈と注意点

(検査はよく使われるTPHAとRPRについて書きます)
ざっくりいうと、『RPR法は活動性を評価、TPHA法は感染の有無を評価』します。

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注意点
  (ⅰ)RPR法とTPHA法ともに感染早期は陰性となる。
  (ⅱ)RPR法は生物学的偽陽性になる。
2つです。

(ⅰ) RPR法とTPHA法ともに感染早期は陰性となる
HIVの検査もそうですがウィンドウピリオドWindow periodがあります。
RPR法は少なくとも3週以上経過して陽性になります。
TP法は少なくとも8週以上経過して陽性になります。
1回目の検査で陰性としても、梅毒を疑う場合は繰り返し検査します。

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(ⅱ) RPR法は生物学的偽陽性になる
偽陽性とは、病気じゃないけど検査で陽性になった、という意味です。
RPR法は他の病気でも陽性になることが知られています。
全身性エリテマトーデスSLE、抗リン脂質抗体症候群APSなどが有名です。
一般的に生物学的偽陽性の場合、RPR法の値は陽性だけど低めであることが知られています。

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検査の方法、解釈については医療従事者の判断が必要になります。
「もしや梅毒?」と思ったら、RPR法、TPHA法をチェックしましょう。
簡単に採血で検査できます。

参考文献
1) レジデントのための感染症診療マニュアル第4版
2) J Clin Microbiol.2019 23; 57 (11):e00898-19
3) 性感染症診断・治療ガイドライン2016
4) N Engl j Med 2020;382:845-54



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