見出し画像

ベンチャーディールズ(26) ベンチャーキャピタリストのキャラタイプ別交渉術 Venture Deals - Negotiating Style

以下、米国VC・Foundry GroupのBrad FeldやJason Medelsonが毎年2回提供しているオンラインコース(無料)、Venture Dealsの講義内容が素晴らしかったのでまとめてみました。

前回に続き、交渉に関する講義として「Negotiating Style」のセッションを和訳してみました(和訳することについてはBrad Feld氏と直接コンタクトし、許可を得ております)。今回の講義は「ああ、本当にこんな投資家っているなあ」とふと過去出会った方々を思いながら訳しました。他の講義も順次アップしていく予定です。是非ご一読下さい。

なお、Venture Dealsについては、本でも出版されており、またこちらもベンチャーキャピタルを理解する上でとても勉強になるシリコンバレーVCのバイブルなので、是非ご一読ください。

(以下、講義和訳)

起業家がベンチャーキャピタリスト等の投資家と交渉を行うとき、起業家は色々なタイプの投資家と交渉していく必要があります。この講義では、良い投資家、嫌な投資家等、投資家のタイプ別に実際にどんな奴なのか実演した後、対処方法について説明していきます。

1. 上から目線の高圧キャピタリスト

(クリント)いかにも嫌そうな奴ですね。どんな感じで接してくるんでしょう?実演してもらえますか?

(ブラッド)「これが私にできる最善のことですかね。これ以上のことはできないですよ。それでもあなたがこれ以上(の条件)を望むなら、ふざけんじゃない、取引は無しにしましょう。もう条件面についてはとやかく言うべきじゃないですよ」と言ってくる輩です。実際にこういう人いますよね。いかにも上から来るキャピタリスト。

2. ナイスガイキャピタリスト

(クリント)では次は、全く真逆で、ナイスガイなキャピタリストについて実演してもらえますか?

(ブラッド)「私と一緒に仕事をすることが、あなたにとっていかに素晴らしいものになるかお話しします。あなたがこれから先ずっと関わっていきたいと思っているビジネスに、私も共に寄り添っていきたいと考えます。私とと共にビジネスをすれば、全てうまくいくことを約束します。」こんな人ですね。

3. オタクなキャピタリスト

(クリント)オタクなキャピタリスト。これはどうでしょう?

(ブラッド)「今後5年分の事業計画をもう一度見せていただけますか。 その中でも、4年目の粗利益水準の妥当性を理解するのに今、非常に困っているんです。私にとってはとても重要な要素なんですよ、そこは。というのも、粗利益が4年目の時点で、もう少し成長していてもいいはずなのに事業計画上、成長していないからなんです。まだビジネスは開始していない段階とはいえ、4年目の粗利の水準はきちんと押さえておきたいんですよ。もう一度スプレッドシートを見直し、作成していただけないでしょうか?」まだ事業も始まっていないのに机上の数字に何をこだわっているのか、って感じでしょうね、起業家にとっては。

4. やたらとへり下るキャピタリスト

(クリント)やたらと低姿勢でへりくだってくるキャピタリストは?やってみてください。

(ブラッド)「私は本当にこの取引をしたいのです。是非、小生をこの取引に入れさせてもらえませんでしょうか。皆が小生と同じく、このディールに興味を持っていることは十分承知です。どうか、何卒宜しくお願い申し上げます」

5. 老害になりかけキャピタリスト


(クリント)色々経験してくれば、思考も凝り固まりますからね。これはどんなキャピタリストなんでしょう??

(ブラッド)「私は直近、72回あなたと同じような会社に投資し、そのいずれも失敗しました。そのどのケースにおいても、創業者がどうしようもなくダメで、私が彼らを解雇し、他の経営者を見つけてこなければなりませんでした。たぶんあなたはそうならないのかも知れない。けど、恐らくは同じようなことが起きる気がしております」

6. 起業家はどうVCと付き合っていくべきか

(クリント)色々なキャピタリストがいるんですね。起業家が色々なVCと付き合っていかなければならない中、気をつけることは何でしょうか?

(ブラッド)
まず、上で示してきたようなキャピタリストは実際に存在することを覚えておいてください。ベンチャーキャピリストといえどそのキャラクターは一括りにはできません。実際にはその性格や個性は千差万別です。

私は彼らをロールプレイングゲームに登場するキャラクターのようにとらえるのが好きです。ある人は魔術師、ある人はドワーフ、ある人はオークなんです。彼らは異なる経験値、異なるステータス(力、素早さ、魔力など)を持っているんです。さまざまな個性を持つれらの個々のキャピタリストから構成されるのがVCです。

我々Foundry Groupのパートナー4人を見ても、確かに皆キャラクターは異なります。Jasonと私(Brad)ではかなり性格が異なりますし、気にするポイントも異なります。ただ、我々は根底の部分で共通の価値観を共有しています。我々の行動パターンは異なるかもしれませんが、根底の価値観は一緒です。それは残り2人のパートナーであるSethとRyanにおいても当てはまります。

交渉相手のキャピタリストおよび所属しているVCの根底の価値観・考え方を理解しておくことは非常に重要です。幸いなことに、現在では個人や企業の情報は20年、30年前に比べてはるかに簡単に集めることができます。彼らがどう思っているのか、彼ら自身が綴っている記事を見つけることができるでしょう。

ただ、こうした自分自身の考えを外部に向けて発信する記事の内容というのは、彼ら自身がどう見えたいか、何を目指したいか、他人にどう考えて欲しいのか、という印象付けの場合もあります。

多くの場合、ある考えや価値観が、表面上は別のものに偽装されて表現されて記載されていることが記事を見ればわかってきます。オオカミの皮を着た羊なのか、または羊の皮を着たオオカミなのか。その両方が起こり得るので、それを理解した上でキャピタリストと接するのは、起業家である皆さんの重大な責務です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?