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d news agui物語.18 「床工事」

d news aguiの第二期工事が進行しています。店内の床を約30センチ高くする工事です。目的は「現在の靴を脱いでもらうスタイルをやめて、靴のまま店内を見てもらうため」です。

改装前の店内の様子。手前は昔からの機織り機の機械油で染み込んだコンクリートの床。この風情を「残したほうがいい」という方も多かったです。奥は靴を脱いで生活用品をゆっくりゆったり見て頂きたく考えた木の床。結果として皆さんがなかなか靴を脱ぐことをためらわれ、知多のものづくりを手にとっていただけないということが起こりました。特にお年寄りの方々は、靴を脱ぐことが大変だということに、気づかなかったのでした。反省・・・・・。

その床の工事がとても大変で、今日はそのお話です。

普通の室内の床は水平に角材などでピッチをとったベースに、平らな板を設置して水平は作られています。その上にかーペットや畳、フローリングなどをしていくので、かなり水平です。d news aguiの床は水平ではない土間。そして最終的な仕上げに「コンクリートタイル」という重い材料を選んだことにより、水平を出すための下地ができません。
できないと言っても例えば道路を思い出して欲しいのですが、砂利を敷き詰め、転圧してできるだけ平らにした後、アスファルトを敷き、転圧をし、再度アスファルトを敷き、転圧を繰り返して水平な道路を作ります。

通常の「床」は、水平な材料を水平に組んだ上に貼っていきます。今回はその仕上げ材である「コンクリートタイル」がとても重いので、違うアプローチになります。
栃木県益子町「スターネット」のカフェの床。これは室内。屋外のような感覚が特別な気持ちに。
写真はd東京本店のエントランス。シーンズを使ったPタイルを敷き詰めたもの。独特な感覚。
写真は静岡の自宅のエントランス。ホームセンターで購入した3,000枚のどこにでもあるコンクリートブロック(壁面用)を敷いてもらいました。意外と安価で表情と経年変化が楽しめています。
愛知県立芸術大学のトイレの床。石のタイルを使用。表情が豊かで上質感がある。憧れます。


今回の床工事はこれと似ていて、コンクリートの混じった砂利を敷き詰めながら転圧し、水平をなんとなく作りながら密度の高い砂を敷き、そこに仕上げ材としてのコンクリートタイルを一枚一枚、水平機などを使って置いていきます。
一枚ごとに水平でも土地の傾斜があるため、全体の水平を考えながらの作業。コンクリートタイルの個体差もあり、一言で言えば職人の腕にかかってきます。


コンクリートタイルを今回選んだ理由は、価格的に安いということと、ただのコンクリートの流し込みではなく、床に「表情」が欲しかったのです。
また、木材のフローリングなども考えましたが、この建物で知多のものを紹介していく「感覚」として、「懐かしさ」ではなく「現代的」な方向に印象を持っていきたかったのです。しっかりとした明るい印象の普遍的な床材として、屋外で使用されるタイルを選びました。

昔、どこかで見かけて写真をとった風景。この写真の床は屋外。いつかこんな緊張感のある室内床を作ってみたいとずっと思っていました。
ただのコンクリートコテ仕上げだと、表情がない。やはり、質感を感じるモノを展示したいので、床にも表情が欲しい。
d富山店のカフェの床。小学校で昔使われていた木の組み床。表情があり丈夫。かなり高価ですが・・・。


さて、実はこの床、とても難航しました。

まず、職人さんにとって僕が選んだ床材が「屋外」に使われるものだったことで、そうした職人さんがきていつもの「屋外の感覚」で作業は進みました。しかし、僕が求めていたのは「室内の均一で完全な水平の取れた床」であることが、なかなか理解していただけなかったようで、しかも、そもそもこの重たい屋外用タイルを水平に2,000枚も敷き詰めること自体が、とても難しい作業でした。

トラックで運ばれてくる砂利をひたすら室内に均等に敷き詰める。入り口の段差の上のラインまで店全体に敷き詰める。
均一に室内にコンクリート系砂利が運び込まれ、ひたすら転圧しながら水平を作っていく作業。
転圧後に密度の高い砂を敷き、一枚一枚を水平をチェックしながら置いていく。
入り口の段差がなくなり、外とフラットになりました。


よくよく皆さんも思い出してみてください。室内にこのタイルを敷き詰めた場所。実はそんなにありません。コンクリートタイル風のPタイルなどはありますが、室内にこれだけの重厚感のあるものを敷き詰めること自体、あまり例がありません。ということで、現場を監修くださる大勝建設さん(阿久比)のもと、何度も修正をして頂き、ようやく思っていたクオリティに近づいていきました。

明るくて、現代的で、そして靴のまま散策できる室内。床にタイルを選んだことによる表情も、実際に店内に入っていただけるとわかってもらえると思っています。大勝さん、職人さん、ありがとうございます。

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