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事業再構築補助金の審査項目をすべて押さえているのに 採択の可能性ゼロの事業計画書を作ってみた

行政書士・社労士・診断士の長岡です。YouTubeの補助金解説用に記事を一本書いてみました。タイトルのとおり、事業再構築補助金の事業計画書ですね。いってしまうと、「こんな申請書じゃ通らないよ」と批判するための材料なのですが、せっかくなので形式的には「それらしいもの」を用意してみました。

読んでいると「この人ちょっとアレなんじゃ……」と思われるかもしれませんが、おかしな点はYouTubeで突っ込んでいるつもりです。

それでは、当社の事業再構築計画をご紹介します。

1:補助事業の具体的取組内容

(1)当社について

①事業の概要

2011年4月に行政書士事務所として開業し、2015年10に社会保険労務士の登録を追加。2018年4月の中小企業診断士登録に先駆けて、2018年3月に合同会社を設立した。行政書士・社労士の法定業務を法人として行えるのは、それぞれ行政書士法人・社労士法人に限られる。そのため、合同会社では主に経営コンサルティングと研修講師を請け負っている。

②新型コロナウイルスによる影響

2020年2月に行政書士・社労士の井出誠氏と共著で『「特定技能」外国人雇用準備講座』を出版した。2019年4月から受入れが始まった在留資格「特定技能」の入門書としては先駆け的な存在だったこともあって一定の売上を見込んでいた。しかし、出版と同時にコロナ禍の影響で特定技能外国人の新規入国が制限されてしまったこともあり、増刷には至っていない。

また、研修講師としての売上は、2020年4月の緊急事態宣言によって大打撃を受けた。2020年6月から一部の研修は再開したものの、現在においてもコロナ前の水準までは回復していない。

③コロナ禍の中で模索した事業

対面研修の売上回復が見通せない中、中小企業の経営者向けに「労働法」の解説をブログ形式で発信し、2021年4月に動画化して有料noteにて販売を開始した。しかし、一定の販促活動を行っても売れる気配がなかったため、9月からはYouTubeで無料公開している。

また、有料note販売と同時(2021年4月)に開設したYouTubeチャンネルには、現在は補助金申請のポイントを解説した動画などを投稿している。ものづくり補助金の採択率を上げるポイントを有料動画にまとめ、2021年12月にnoteで販売開始。2022年4月に撮影環境を改善して、改良版に差し替えた。

さらに、有料動画の一部を切り出してテキスト版を作成し、noteにて有料記事10本をまとめたマガジンを発行した。

しかし、いずれも販売には至っていない。
(ちょっと悲しくなってきた

上記のとおり、ウィズコロナ・ポストコロナ時代に対応すべく新規事業にも取り組んできたが、成果は出せなかった。既存事業の延長では今後も先が見通せないため、思い切って大胆な事業再構築に挑戦する必要性を感じている。

④内部環境と外部環境の分析

当社の内部環境と外部環境について、SWOT分析を行って現状を把握した。

強みに「大型自動二輪免許」書き忘れました……


(2)事業再構築を行う必要性

①外部環境から見えてくる方向性

訪問型のコンサルティングや対面型の研修については、今後も縮小傾向が予測される。その反面、動画配信による情報提供については、需要増が見込まれる。

②新規事業の選択

自社の強みと機会を掛け合わせることによって、新規事業を検討した。

a.3つの国家資格の合格実績を生かした受験者向けの情報発信
b.3つの国家資格の実務経験を生かした同業者向けの情報発信
c.大型自動二輪免許を生かしたモトブログの運営

上記3つの事業を検討した結果、aとbはいずれも一定の視聴者獲得が見込まれるものの、視聴者が顧客となる流れは期待できない。それに対してcがターゲットとする層には中小企業の経営者も含まれるため、視聴者の中から既存事業の顧客が生まれることも期待できる。

以上の状況から、既存事業とのシナジー効果も見込んでcを選択し、モトブログの運営に当社の経営リソースを集中投下することに決定した。
(ちょっと恥ずかしくなってきた

(3)補助事業で実施する新分野展開

①概要

コロナ禍で思うように外出できない人に向けて、「ツーリングしている気分」を味わえる動画を提供する。具体的には、大型バイクの運転風景をライダーからの視点で撮影し、同時に走行中の感想などを録音した動画をYouTubeで公開する。

また、中距離ツーリングだけでなく、地元八王子の飲食店にランチを食べにいく道中を撮影した動画などもシリーズ化して、地域の中小飲食店や観光施設を全国に紹介していく企画も検討している。この取組によって観光客を呼び込むことができれば、街のにぎわいが加速して地域のイノベーションにつながることも期待される。

②取得する設備

乗車マシンの選択は、モトブログの再生回数を左右する。YAMAHAのXSR700も候補に挙がったが、性能や価格よりも「当社代表のバイク歴との関連」というストーリー性を重視して、KAWASAKIのZ650RSを選択した。

再逆転しました。

当該設備は2022年4月28日に国内販売が開始されたものの、オミクロン株の蔓延によって川崎重工業タイ工場の生産ラインが停滞してしまったこともあり、入荷時期が遅れている。カワサキ プラザ八王子からは、5月から6月にかけての入荷ではないかと連絡を受けている。

③実施体制

代表の長岡を統括責任者として、以下の体制で本事業を遂行していく。

設備導入を担当する長岡は、2005年に大型自動二輪免許を取得し、カワサキの大型バイクの運転経験は6年間ある。また、動画運営を担当する長岡は、2021年にYouTubeチャンネルを開設し、着実に登録者数および再生回数を伸ばしてきた実績がある。

(4)事業再構築による差別化

YouTubeのチャンネルを開設している行政書士・社会保険労務士・中小企業診断士は無数に存在する。また、モトブログの開設者も数え切れない。
(諦めた

しかし、行政書士としてモトブログを運営しているのは、全国でも数名程度である。

ほとんどの士業チャンネルにはバイクが出てこない。また、バイクに乗りながら士業としての情報発信をしているチャンネルも見当たらない。「行政書士+モトブログ」という希少性によって差別化を実現し、競争力強化によってニッチ分野でのトップを狙う。弁護士や税理士とは異なり、行政書士は日本独自の資格であるため、グローバル市場でも(以下略)。

すごい人いました……

2:将来の展望

(1)市場について

①想定する視聴者(ユーザー)

バイクが趣味であり、なおかつ士業が発信する経営関連の情報に興味を持つ、40代から50代の男性をメインユーザーとして想定する。

②市場ニーズ

令和3年版 情報通信白書によると、世界の動画配信市場規模は今後も一定の伸びが期待される。

出所:令和3年版 情報通信白書(総務省)

また、「趣味・娯楽に関する情報を得るメディア」として、「動画投稿・共有サイト」がトップになっている。

出所:令和3年版 情報通信白書(総務省)

さらに、全国軽自動車協会連合会の資料によると、二輪車の販売台数は増加傾向が続いている。とくに251cc以上の小型二輪車に関しては、2021年新車販売台数が前年比で24%増となった。

軽二輪車・小型二輪車の新車販売台数の月別推移(全国軽自動車協会連合会)を基に作成

以上の情報から、大型バイクを用いたモトブログに対する、一定の市場ニーズが見込まれる。

③市場規模

モトブログ界隈で著名なチャンネルについて、登録者数と再生回数を調査した。(2022年5月12日現在)

上記のとおり競合の分析を行った結果、1,000万単位での視聴回数が見込める市場であることが判明した。

(2)競合との比較

前掲のモトブロガーと当社を比較した。

登録者数と再生回数は比較にならないものの、行政書士として情報発信できるのは当社だけであり、優位性が明確に認められる。
(涙が……

(3)課題とリスク

①課題と解決方法

YouTubeチャンネルを伸ばしていくにあたって、当社の弱みである「発信力のなさ」がボトルネックになることが予測される。そのため、「発信力の強化」を当面の課題として、本事業において解決を目指す。

しかし、自社の既存リソースだけでは、短期間で発信力の強化を実現するのは困難である。そこで、設備投資によって課題の解決を図る。

本事業において取得予定のカワサキZ650RSは、2022年4月末に発売された。いわゆる「兄弟機」と呼ばれるZ900RSは2018年の販売開始から3年連続で新車販売台数トップとなった人気車である。Z650RSも国内販売開始が決定された直後に注文が殺到し、現在も入手困難な状況が続いている。

Z650RSの注目度が最大限に高まっている状況を活用し、本機を導入することによって、当社の課題である発信力の強化を実現する。

②リスクの想定

・体制面のリスク
当社は行政書士・社会保険労務士・中小企業診断士の計1名で運営している。本事業も一人で実施することになるが、いかんせん本業の依頼が減っているため、時間的には余裕がある。そのうえで、泊まりがけの長距離ツーリングはしばらく控え、数時間から半日程度の中距離ツーリングから始めて着実な運営を心がける。

また、ものづくり補助金の申請支援経験もあるため、事務処理能力に関しては問題ないと判断した。

・財務面のリスク
コロナ禍によって営業損失が続き、債務超過の状況になっている。しかし、借入の大半は役員からのものであり、危険性は低い。メインバンクであるS信用金庫には本事業について相談していないものの、今のところ信用は失っていないと考えている。

・炎上リスク
モトブログの炎上は、交通法規違反をきっかけとして起こることが多い。しかし、カメラを意識することによって、かえって安全運転になると考えている。

・公式チャンネルのイメージ悪化
既存事業(公式チャンネル)においては、補助金申請のポイントなどを解説している。モトブログはターゲット層が異なるため、別のチャンネルに投稿していく。モトブログの存在によって、まじめな解説を続けてきた公式チャンネルのイメージが損なわれてしまう懸念もあるが、もともと信頼があるわけでもないので、リスクも低い。

(4)事業化見込み

Z650RSの納車は6月中旬を見込んでいる。納車前は「準備編」として、カメラを設定する様子などを投稿していく。

納車直後から月に1回程度のツーリングを実施する。1回の撮影から4本程度の動画を編集することによって、週に1本ペースでの投稿を実現する。

YouTubeは1再生あたり平均0.1円の収益が相場といわれている。これだけだと、投資回収には1,000万回の再生が必要となる。

しかし、モトブログをきっかけに公式チャンネルの訪問者が増え、有料動画の購入などにつながる可能性も完全には否定できない。既存事業とのシナジー効果を考慮すると、費用対効果は相当に高い。

3:本事業で取得する主な資産

KAWASAKI Z650RS(税込1,012千円)


4:収益計画

略(さすがに書きようがない)


以上です。最後までご覧くださった方、まことにありがとうございます。この計画書を自分で審査していくYouTube動画を作りましたので、そちらもご覧いただけると幸いです。

*動画の中では、YouTube公開前の説明になっています。