新聞は読まない
出社前は 必ず 駅のキオスクで 缶コーヒーと新聞を購入する
始業時間前に 気になる記事を切り取り ノートにメモ等とり 日々の営業訪問ネタに利用している、そして 用済みの新聞は いつも上司が 読むというローテーション
そんないつものルーティン作業の中に、職場に 一人の女性が 入室してきた男性社員は 皆 金縛りにあったように彼女に魅入っていた
どうも 事務員として雇われた派遣社員のようだ
上司から彼女について一通り紹介がなされた後、仕事や部署など細かい説明や簡単な指導は ボクに任された
業務内容の合間に雑談を交わすなかで、彼女は年上独身 以前は大手で勤めていたことがわかった
現在のプロジェクトが佳境だったことから部署のメンバーは彼女も含めて残業が多くなり、彼女とは退社時 会社の最寄り駅まで共にする機会も増えた
そんなプロジェクトも無事終了し、間もなく打ち上げが行われたが、ボクは一次会で先に失礼することにした
その帰り道 不意に背中を押された、彼女が走り込んできていた
息をきらしアルコールで蒸気した顔が少し艶やかにみえた、飲みなおそうと誘われたが 流石に疲労もピークだったので 休みの日にお茶でも濁した
その様子に少し寂しそうな表情が気になり、近くの飲み屋で一杯だけと付き合うことにした、疲労もあって酔いも少し間話始めたのか話も盛り上がり、末には彼女から家で飲みなおそうと 誘われた
言われるままに タクシーに乗って移動、ついた場所は普通のマンション、流石に 夜半に女性の部屋へ入るとなると緊張してきた、玄関から部屋に通じるドアが開かれと 小さなテーブルがあり、促されるように座ってワインを飲み始める
1杯飲むごとに互いの距離は縮まる、二人だけの空間が雰囲気を醸し出したのだろうか、彼女と口づけを交わし 身体を重ねた、とても刺激だった時間は2時間ほど
ベッドの上で倒れ込む瞬間、部屋の隅にあるゴミ箱が視界に入る、そこには記事が切り取られた新聞が無造作に入っていた、ボクは ゆっくりと身支度して 彼女に 布団をかけ 部屋を後にした
翌朝、駅のキオスクで 缶コーヒーだけをカウンターに出した、売店の従業員に「新聞は?」と訊かれて 答えた
「新聞は読まない、ことにした」
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